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株式会社iCARE| 成長ベンチャーに訊く

ケーススタディ

2023年1月31日

「働くことで健康が損なわれている」。そのような状況の改善をめざし、現役産業医・山田洋太氏が立ち上げた株式会社iCARE。産業保健のプロフェッショナルカンパニーとして2011年に創業し、2016年にクラウド健康管理システム「Carely(ケアリィ)」をリリース。企業に健康経営が求められる昨今、その導入実績を着実に伸ばす同社の代表取締役CEO山田氏に、これまでの変遷とオフィスのあり方について訊いた。
株式会社iCARE 代表取締役 CEO 山田 洋太 氏

企業の健康経営をサポート!
働くひとの健康と
健全な組織づくりに貢献したい。

株式会社iCARE
代表取締役 CEO
山田 洋太

株式会社iCARE

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産業医の目線で考案 健康経営に向けたソリューション

iCAREは、産業医の私が「働くひとの健康を世界中に創る」というパーパスを掲げ創業したヘルスケアサービスの会社です。これまで内科や心療内科の医師として多くの患者さんを診てきましたが、その中で感じたのは、企業に勤めているひとの不調が非常に多いということです。そのような不調の改善や日頃の健康づくりは、本人の努力次第と思われがちです。しかし、それだけで十分とは考えておりません。ワーカーたちの健康が損なわれるのであれば、働いているその環境や仕組みのあり方が問われるのであり、そのような状況を変えていきたいという思いから、この会社を立ち上げました。

企業の健康経営を担うのは、人事であったり、産業医として関わる医師や看護師、保健師たちです。そこで私たちは、健康情報の一元化と見える化に加え、専門家による産業保健体制サポートが受けられるサービスを考案しました。それが2016年にリリースした企業向けクラウド健康管理システム「Carely」です。従業員たちの健康情報をテクノロジーの力で効率よく管理し、データをもとに組織から健康体にしていく。それをわれわれのビジネスにおけるソリューションとしています。

株式会社iCARE

袖振り合うオフィスで模索し続けた iCARE独自のカルチャーとサービス

創業は2011年です。当時、私は三つの仕事を掛け持ちしていたので、今振り返っても相当な忙しさでした。心療内科の医師として勤める一方、知人から別の病院の再建を依頼され、その経営企画室にも所属。さらにはビジネススクールに通い、在学中に同級生とiCAREを立ち上げました。医師の仕事を終えると、iCAREの事務所にしていた大井町のシェアオフィスへ行き、夜遅くまでマーケティングリサーチをする。そんな生活が2年くらい続いたと思います。

スタッフが3名になった頃、積極的に営業活動をしようと青山でオフィスを借りました。とはいえ、ワンルームマンションのような部屋で、広さは4畳半ぐらい。社員が5名になる頃まで、そのオフィスを拠点にしていましたが、問題だったのは、思いのほか営業活動が上手くいかず、売り上げがほとんどなかったことです。時にはエンジニアに支払いができなかったり、会社をたたもうと考えたことも何度かあります。ストレスの専門家である私自身が不調でしたね。

私たちのサービスは、データ管理の効率化につながるので、組織規模の大きな企業ほど導入メリットが見込めます。しかし、当時はスタートアップで信用がなく、営業のツテもない状態。それでビジネスモデルの調整を行い、一旦、中小規模の企業に向け実績をつくる路線へとシフト。その後、資金調達をするとともに、2016年に「Carely」をローンチしました。

青山の事務所が手狭になると、渋谷の道玄坂にあった古いビルへ移転しました。天井が低く廊下も薄暗いうえに、オフィスは三角形で、さらに部屋の真ん中には柱がありました。最終的には15名ぐらいのメンバーで働いていましたが、社内を歩けば体をぶつけたり、机が置けなくて受付カウンターで仕事をするメンバーもいたほどです。

「Carely」はリリースしていたものの、ルーティンの仕事はなく、何をするにしても社員同士で伴走し、模索しなければならない状態でした。今思えば、当時の私たちはオフィス至上主義で、同じ環境で顔を合わせるからこそ、会社のカルチャーやサービスが生まれるのだと考えていました。その状況は次に移転した円山町でも続き、60坪のオフィスに対して、社員が60名。追加で同じフロアにあった40坪の区間も借りましたが、そこは会議室にしたので、オフィスは相変わらず窮屈でした。そんな状態が数年続き、コロナ禍で出社人数が減った当初は、「ゆとりができてラッキー!」と思うほどでした。

株式会社iCARE

カルチャーに広がりをもたらす 自由でオープンな恵比寿オフィス

2021年からは恵比寿を拠点にしています。前回と同様に渋谷駅周辺での移転を検討したのですが、理想の広さの物件がなかったり、コストの上限に見合わなかったり。結果的には恵比寿に移転してよかったと感じています。

広さは250坪あり、将来の増員も想定したうえでこの広さを選びました。ワンフロアでフリーアドレス制を導入し、現在、社員は130名ほど。在宅勤務のメンバーもいるので、ゆとりもあります。人が集まる場所にはホワイトボードを置き、立って仕事ができるスタンドデスクや、運動ができるフィットネススペースも設けました。エアロバイクを漕いだり、バランスボールに座ってミーティングに参加するメンバーもいますね。間仕切りは全てガラス張りなので、どこに誰がいるのか、すぐにわかりますし、自由に使えるイベントスペースもあります。コミュニケーションの活性化やチームビルディングの場として、カードゲームをしたり料理をしたり。以前は週に1回、イベントスペースで定例会議をしていましたが、いまやそれもオンラインです。まるで「原っぱ」のように自由に使えるスペースですが、経営側から用途を限定したところでその通りに機能するかはわかりません。社員たちが思い思いに使ったほうが、会社のカルチャーにも広がりが生まれるような気がします。

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オフィス至上主義を脱却し 価値観や働き方に配慮したスタイルへ

今後2、3年で社員は200名前後になると予測しています。コロナ禍以降は、常にオフィスで仕事をするメンバーもいれば、時々出社するメンバーや在宅でテレワークをしているメンバーもいます。「働くひとの健康を世界中に創る」ことをめざすからには事業のグローバル展開も考えているので、遠く離れた海外で働くケースも出てくることでしょう。そのような三者三様の働き方を前提とする今、オフィスはオフィスで大切な場所ですが、あくまでも一つの選択肢です。社内を歩けば、自然と会話が生まれ、笑い合えたり心が通じあう感覚もありますが、これからは離れて働くメンバーも含め、意思の疎通や心の交わりなど、三者が働きやすい接点づくりが重要です。今の時代は、働きがいや生きがいなど、多種多様な価値観やライフスタイルのもとで、みんなが働いています。事業成長の方向性に合わせながらも、以前のように集まることを前提としたオフィス至上主義ではなく、それぞれの社員たちを尊重したワークプレイスや会社のあり方を探していきたいと考えています。

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上記内容は BZ空間誌 2022年冬季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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