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株式会社フラッグ | 成長ベンチャーに訊く

ケーススタディ

2021年7月20日

2001年、東京、吉祥寺で産声を上げた小さな合資会社が、20年の年月を経て、従来の業界の常識を覆すデジタル・コンテンツを活用した新たなビジネスモデルを構築した。時代の流れに適合した技術やツール制作にいち早く着手し、新たなコンテンツのあり方を模索し、今後はさらに海外へと羽ばたこうとしているフラッグ。その成長の軌跡を追う。
代表取締役 久保 浩章 氏

ブランディングを意識したエリア選択と
はじめに社員ありきの地方の拠点展開。
フレキシブルなオフィス戦略が映す、
時代にマッチした新たなビジネスモデル。

株式会社フラッグ
代表取締役
久保 浩章

株式会社フラッグ

動画制作からWebメディア さらに広告へと事業を拡大

フラッグの事業内容を一言で言えば、デジタル・コンテンツのプロダクション兼エージェンシーです。単に映像を制作するだけでなく、マーケティングやプロモーションを通じて、ワンストップで企画から提供までを担う、国内では数少ない企業なのです。

創業は2001年。大学3年生だった私が、映画関連の仕事をしたいと、資本金0円で設立できる合資会社を立ち上げました。当時の日本映画界は斜陽産業と言われており、制作サイドが優れた作品を撮っても、それをどうプロモーションして稼ぐかという観点が欠けていると感じていました。そこで、自分なりのアイデアでチャレンジしたいと思ったのです。

とはいえ、すぐにその世界に飛び込むのは容易ではなく、まずは企業のプロモーションビデオの制作を始めました。当時は、デジカメとPCとソフトがあれば撮影から編集までできるようになった頃で、同時にブロードバンド回線が普及し始めたことで、ネットでの動画配信がブームを迎え始めていました。そのタイミングで、 Webメディアの映画情報サイトで流す動画制作の依頼を受けたのです。目を付けたのが、映画のイベントやインタビューといったコンテンツ。TV番組内の宣伝などでは数十秒しか流されませんが、映画ファンだったらもっと見たいはず。幸いWebなら尺(時間)を気にする必要もありませんし、プロモーションですから、超有名俳優が登場してもギャラが発生しない。 2000年代前半は、このビジネスで、多いときは1日に2~3現場をはしごするような時期が続いていましたね。

2008年頃からは、映画のデジタルプロモーション全体を依頼されるようになりました。自画自賛になりますが、近年大ヒットした映画のプロモーションは、かなりの数、当社が手がけています。現在では、こうした映画を中心としたエンタテインメント系の仕事が、当社の仕事全体の約4割を占めています。

そのほか、事業会社のソーシャルメディアを利用したデジタルマーケティングのプランニングやそれらを効果的・効率的に伝える映像、ライブ配信などのクリエイティブ制作、インターネット広告の代理店など、一般企業の広告・宣伝も数多く行っています。そうすることで、世間全般でどんなクリエイティブやプロモーション・プランが評価されるかがつかめるのです。また、近年ではAmazon Prime Videoで独占配信中のプロレストークバラエティ番組『有田と週刊プロレスと』(シーズン1~4)や、その後継番組にあたる『有田プロレスインターナショナル』の製作にも進出。これは当社が制作し配信権を売却するもので、DVD販売などの著作権ビジネスで収益を上げています。この分野はここ数年力を入れています。

当社が広告業界において、従来の代理店・プロダクションという垣根を超えたビジネス展開が可能になったのは、デジタル化に負うところが大きいと言えます。企業の広告・宣伝が急速にデジタルに置き換わる中、従来型のメディア中心のビジネスにこだわっていては技術的なハードルが越えられません。さらにこれまでTVCMが担ってきた企業のブランディング広告の分野もネット広告に移行しており、技術的・戦略的なノウハウがある会社が有利なのは間違いないでしょう。そこが当社の強みでもあるのです。

業務内容に合わせた2拠点制から 満を持して実施した渋谷の本社移転

株式会社フラッグ

事業の拡大に伴い、オフィスも様々に変化してきました。2001年の創業時は、吉祥寺駅前のワンルームマンションからスタート。その後、 2003年には10坪、そして20坪と吉祥寺内で移転し、さらに別に借り増しもしました。2005年にはその借り増し分が渋谷に移転して、吉祥寺と渋谷の2拠点体制に移行。その後、60坪に拡大した吉祥寺本社は、事務系業務及び、当時流行した企業の宣伝用や取扱説明書用のDVD・CDを製造するメディアサービスという、いわば昼型の部署が使っていました。一方の渋谷オフィスは、撮影や制作を主体とした、夜型が多いクリエイティブなオフィスと、働き方の違いに合わせた分割ができていたのです。

そのうち吉祥寺のメディアサービスのビジネスが縮小してきた一方、100坪あった渋谷オフィスは、社員が増えすぎて身動きが取れないほどになってきました。そこで2018年9月に、 250坪ある現在のビルに移転するとともに、本社も渋谷に移すことにしたのです。移転先として他のエリアも考えましたが、ブランディングの観点から、その企業がどの街に根を張ってビジネスをするかは重要なこと。クリエイティブなビジネスを10年以上、渋谷で展開していた当社が、よほどの理由がなくそこを離れるのは、社内外への誤ったメッセージになりかねないと考え、具体的にオフィスを探す段階では渋谷に絞りました。吉祥寺から井の頭線で一本なのも、メリットの一つ。本当はワンフロアのビルが良かったのですが、残念ながら250坪以上のワンフロアは高層ビルにしかなく、とてつもない家賃になるので諦めました。

この渋谷ブリッジというビルは、当初からテナントすべてをクリエイティブ関連の会社にしたいというオーナーサイドの意向があったため、4~6階までの3フロアをすんなりと借りることができました。とはいえ、当初は余裕があると思っていたのに、移転したとたん、それまで抑えていた採用を一気に進めたため、新型コロナ感染が深刻化する前には、すでに一杯になってしまっていました(笑)。

新本社でこだわったのが5階に作ったカフェテリアです。知人が開く料理教室の講師が交代で作るランチを、社員に無償で提供していました。 3フロアに分かれた社員を半ば強制的に集め、社内コミュニケーションを高めることが目的でしたが、料理自体、毎日異なるメニューがどれも美味しいと評判は上々でした。当社は若い社員が多く、この業界は不摂生な生活になりがち。一日に1食でもきちんとした食事を提供することは、社員の健康づくりにも貢献できたと思っています。

残念ながら、昨年4月以降は全員がリモートワークとなり、オフィスはガラガラですが、今のところ他に移転する気はありません。こんな状況だからこそ、いずれ収束した時に戻るべき場所があることを、きちんと示しておくことが大事だと思っています。

人を信じて任せることから始まる 思いもよらない地方拠点の作り方

当社は規模の割に地方拠点が多いと言われますが、それは当社の社員が個人的理由で地元に帰るのに合わせて新規開設しているからです。せっかく育った優秀な人材を、そのまま手放すのはもったいない。大阪、名古屋、広島、松山の拠点は、いずれもこうして立ち上がりました。まずは地元の便利なエリアに小さなオフィスを借りる。人を雇う頃に見栄えのいいビルに移り、さらに内装に手を入れて自分たちのオフィスと呼べるものにしていくため、どこも2~3回は移転していますね。

東京のノウハウを持って地元に帰り、その地域に根を張って頑張り、彼らがその地の若い人材を育てることで、地方に残る優秀な人材を獲得できる環境が作り上げられるわけです。例えば2013年に開設した松山オフィスは、すでに20人規模に拡大され、東京の案件をリモートでこなすこともしょっちゅうです。こうした業務環境ができれば、例えば介護や子育てに時間がとられる優秀な人材を採用できるようになるわけで、フレキシブルな働き方として一般化できるでしょう。会社としては、いい意味での成長が果たせると思っています。

当社が現在、注力しているのは海外事業で、具体的には海外映画の買い付けや、海外企業との映画の共同制作で、近々に国内で日仏合作映画の撮影を計画しています。また、2019年3月、米国ロサンゼルスに現地法人を設立しました。国内の映画市場は、洋画大作の公開が止まっているため以前の半分にまで落ち込んでいます。ようやく米国の映画館が再開し国内にも入ってきますが、それでもコロナ前までの規模への回復は難しいかも知れません。そうした中でも収益を上げられる事業構造にするため、海外でも稼げる環境づくりが不可欠なのです。そのためにも、国内外で育ててきた人材の能力を結集して、事業を拡大していきたいと思っています。

上記の記事の内容は BZ空間誌 2021年夏季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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