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関東の物流集積地の変化

都市別特集

2007年12月5日

圏央道の延伸がもたらす、関東の物流集積地の変化
不動産デベロッパーにとっても、3PL業者にとっても、
拠点戦略の選択肢は大きく拡大することに

シービー・リチャードエリス株式会社
インダストリアル営業本部 白木 真司

周辺地域をカバーする汎用性の高い小型施設が主流

埼玉を含む東京周辺内陸部における物流ニーズの特徴の一つに、比較的小型の施設が主流であることが挙げられます。私どもでは1,000坪以上の物件を大型物件と分類していますが、埼玉エリアは他の地域に比べ大型物件はそれほど多くなく、むしろ平屋で500坪前後、汎用性の高い物件が多いといえます。

その理由はいろいろ考えられますが、一つには湾岸部のように海外から直接荷物が入ってくるエリアではないため、小ぶりな荷物が多く、小型施設の需要が高いということ。もう一つには、大型施設を建てられるようなまとまった土地が少なかったということです。

大型の用地はないけれども物流の需要はあるという状況の中で、このエリアでは農地を転用したり工場を廃業したりして500坪前後の土地が生み出され、そこに倉庫が建てられていきました。また、それらの倉庫は、オーナーが直接貸し出すのではなく、物流サブリース会社が一旦借り受け、その後テナントに提供するというパターンが主流となっているようです。この物流サブリース会社も大手資本の大企業といったものではありませんから、この辺も、中小規模の施設が多いという埼玉の特徴の理由かもしれません。

同地で取り扱われる荷物で特に目立つのは、出版の取次会社の拠点が多い戸田や川口、所沢では出版関係の荷物、また、日野自動車やホンダ自動車の工場が立地する多摩地区から埼玉県にかけての国道16号線沿線には、自動車部品を取り扱う物流倉庫が多く点在しています。こういった小型施設が集まる外環道沿いの戸田、川口、三郷などは、首都圏へのアクセスの良さはもちろん、その周辺をカバーする事業所としても重要な拠点になっているようです。

最近では、首都圏に近い外環道周辺では用地の取得が難しく、取得価格も上昇しています。そのため、土地の価格が比較的安価で取得しやすい国道16号線沿いや圏央道周辺まで選択肢の幅を広げてみよう、という動きに変わってきているようです。物流不動産の大手デベロッパーにも同様の傾向が見られます。3~4年前までは、首都圏の開発物件は湾岸部に集中していましたが、1年前あたりから圏央道のIC周辺へも進出が見られるようになってきています。

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デベロッパー先行で開発が進む可能性あり

圏央道が部分的に開通した今、これからは沿線立地に対する認識が、さらに変わってくると思います。実際に私どもの元にも、圏央道延伸による影響について問い合わせをいただくことが多くなりましたし、特に、不動産デベロッパーの方々の関心が高まっているのを感じます。

これまで圏央道周辺では、仮に倉庫が建つにしても、地場の物流業者が自分たちで土地を購入し、物流施設を開発し、自分たちで使うというケースがほとんどでした。ところが、物流拠点の統合という今の市場ニーズの中で1万坪規模の大型物件が主流になると、地場の物流業者が自分たちで建てるということは難しくなってきます。加えて、圏央道の開通によって立地評価が変化すると、不動産デベロッパーの進出も増えてくるでしょう。したがって、今後は、不動産デベロッパーによる大規模開発が進み、大型賃貸物件が増えていくことが予想されます。

現在の物流施設ニーズの中心となる3PL(サードパーティロジスティクス)業者にとっても、圏央道周辺の開発への期待は大きいのではないでしょうか。もともとこのエリアは首都圏から離れているイメージが強く、物流拠点としての選択肢には入りにくかったエリアです。しかし、不動産デベロッパーの大規模開発により適正価格の物件が供給され、しかも圏央道の開通で利便性が高まるとなれば、検討してみようというテナントが現れるのも当然でしょう。

また、実際に物件が供給されるようになれば、「首都圏から遠い」というこれまでのイメージも変わってくる可能性があります。知らないエリアほど遠く感じられるもので、実際に走ってみれば意外に近いことが実感できるかもしれません。最近では、「ある地点から何時間以内に配送できる」ことを条件として物件の問い合わせをいただくケースが増えていますが、圏央道周辺の利便性が認識されるようになれば、選択肢の一つとしてより注目されるようになるエリアだと思います。

"広く""安く""適正"な物件を開発できるエリア

デベロッパー先行で物流施設が建てられたことで、これまで全く注目されていなかった立地が突然脚光を浴びるようになった例は過去にもあります。例えば、東北自動車道のあるインターチェンジ周辺の事例もその一つです。大型の物流施設が開発された当時は、果たして需要があるのかと懸念される声もありましたが、竣工後何ヵ月も経たないうちに全てのテナントが埋まってしまいました。すると、噂を聞いた他企業から、私どものもとに同地、同施設への問い合わせがくるようになったのです。立地が注目されれば、さらに開発が進む。前例が一つできることで、そこが物流適地になっていく可能性があるわけです。

物流には、「必ずこの地でなければならない」といった種類のものがあるのは確かですが、必ずしもそこでなくても成り立つというものも多い。物流適地だとは認識されていなかった場所でも、賃料が安い、交通の利便性が良いなど、ある程度の要件を満たしていれば、これらの荷が集まり物流適地へと変貌していくわけです。圏央道周辺というのは、そういう可能性を秘めているエリアだと思います。不動産デベロッパーにとっては、いかに早く新しいエリアに注目して、インパクトある開発物件を提供できるかが重要になってくるといえるでしょう。

もう一つ、こうした開発物件が注目される理由に、不動産デベロッパーによって開発された施設は、適法性が高く、安心して使えると認識されていることが挙げられます。実は、埼玉県には物流施設開発が可能な市街化区域は3割程度しかなく、国道16号線周辺などほとんどが市街化調整区域で、新規の開発はほぼできないといっても過言ではありません。今はどの企業もコンプライアンスを重視しますから、法的にクリアな開発であれば、多少都心から離れた立地であっても需要は高いのではないでしょうか。また、これまで市街化調整区域内のグレーゾーンの倉庫を使っていたテナントが、圏央道沿線に新しく開発される物件に拠点を集約することも考えられます。圏央道周辺は、テナントが重視する"広く""安く""適正"を満たす物流拠点を開発できるエリアだということもできるでしょう。

懸念材料があるとすれば、労働力確保の問題です。最近は物流施設も流通加工業が増えてきており、倉庫で荷物を保管するだけでなく、商品の値付けや包装などの作業が必要となっています。IC周辺など住宅地から離れている立地では、24時間施設を稼働できるというメリットがある反面、労働力の確保については未知数です。労働力が確保できなければ他から調達する手段を考える必要があるでしょうし、あるいは加工作業の不要な荷物を取り扱うことで対応する必要があります。いずれにせよ、労働力確保の問題は、リスクの一つとして認識しておいたほうがよさそうです。

「遠くて物件の少ないエリア」から、「近くて物件豊富なエリア」へ変貌

圏央道周辺に新たに開発される大型物件に入居するのは、どのようなテナントなのでしょうか。これについては、大型施設のスケールメリットが生かせる企業、つまり取り扱う荷物が大型、あるいは大量である企業ということができるかと思います。時代も物流拠点を統合する方向へ進んでいるので、大型施設を必要とする企業は、今後増えていくと思われます。

とはいえ、大型の物流ニーズにしか対応できない施設は、デベロッパーサイドとしては将来的なリスクを抱えることになります。物流市場が将来どうなるかは、誰にも予想できないことです。大型テナントを確保したものの、契約が切れた後、同じような面積を使用するテナントを、すぐさま見つけられる保証はありません。そもそも、埼玉エリアは1,000坪や2,000坪、それ以下の小規模な倉庫の需要が多いという特性があります。1社1万坪といった大型テナントにしか貸せないのではなく、場合によっては2,000坪や3,000坪の需要にも対応できるような施設が望ましいのではないでしょうか。

圏央道の延伸によって、今後周辺の立地特性は「都心から遠く、物件も少ないエリア」から「都心へのアクセスが良く、物件も豊富にあるエリア」へと変わっていくことが予想されます。不動産デベロッパーにとっても、3PL業者に代表されるテナントにとっても、選択肢の幅が広がることは間違いありません。

私どもシービー・リチャードエリスは30年余りにわたる豊富な物流施設の仲介経験を通して、物件情報の蓄積やニーズの把握に努めてまいりました。今後はこれらの経験を生かし、不動産デベロッパーの方々に対しては開発コンサルタントとして物流市場が求める施設開発のお手伝いをさせていただき、またテナント企業に対しては、事業に合った物件の紹介に努めていきたいと考えています。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2007年冬季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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