街全体を マネジメントしながらの 総合的なエリア開発
日本屈指の業務集積地・丸の内。オフィス街といえば昼夜の人口差が激しく、夜間や休日ともなれば、無機質なビルが建ち並ぶ閑散としたイメージが目に浮かぶだろう。だが、今日の丸の内に、そのイメージは全くない。夜には仕事帰りのビジネスパーソンが、そして休日にはお洒落なカップルやファミリーが行き交う、人気のスポットに姿を変える。
この変化の発端は1998年に遡る。かねてより「三菱村」と称される丸の内を、ビジネス主体の街から、商業的機能という付加価値を持った魅力ある街にすべく、三菱地所が立案したプロジェクト「丸の内再構築」がそれである。この計画に基づき建替が始まり、2002年にはエリアのシンボルとなる「丸ビル」が完成。商業面では5,000坪強のスペースに約140店舗が集積し、同ビル竣工前から誘致してきた丸の内仲通りの路面店と合わせて、有楽町から東京駅までの人の流れを生み出した。開発の第1ステージとして「丸の内オアゾ」や「新丸ビル」など、2007年までに商業施設を擁する6棟のビルの建替が完成。メインターゲットは「高感度の大人」。彼らを満足させるために、日本初上陸、あるいは東京初出店といった店舗、ファッションブランドの旗艦店や特色ある飲食店といったテナントを積極的に誘致したことで、その店を目的に丸の内に来訪する人たちも現れた。
さらに2008年以降、現在も続く第2ステージでも7~8棟のビルが誕生する。これにより、丸ビル開業前にはエリアに約280店だった店舗数が、現在では約900店と、3倍強まで増加している。「三菱一号館美術館」のような文化施設、また多くの人が憩う「一号館広場」も誕生し、多様な魅力を持ったエリアとなっている。
同社の強みは、何といってもエリアの約3分の1に相当するビルを所有もしくは管理していること。いつ、どこに、どんな特徴を持たせたビルを開発し、どんなテナントを誘致するかを街全体の動きを見極めながら戦略的に計画することができる。つまりはそれぞれの商業施設が補完関係を築き、同社が巨大なショッピングセンターを運営するようなものだといえる。そして、同時にエリア内の約4,000事業所で働く23万人のワーカーが、コアな消費者として存在していることも大きい。ワーカーのボリュームに合わせて、商業ボリュームをコントロールできるエリアマネジメントは、同社ならではの手法だろう。
今後の展望としては、丸の内仲通りと交差する道路への縦の展開でエリアの回遊性を高めること。また、昼間から夜まで滞在しても飽きさせないアミューズメント機能をさらに持たせること。そして、この賑わいを「大丸有」と呼ばれる大手町・丸の内・有楽町までの広大なエリアとして拡大することにあるという。将来、「日本最大のショッピングモールが日本最大のビジネス街に登場する」と言っても、あながち言い過ぎではないだろう。