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石丸電気株式会社

ケーススタディ

2008年3月5日

石丸電気株式会社 社長室 室長 辻村 周一氏

石丸電気株式会社
社長室 室長
辻村 周一

ラジオ部品店から始まった秋葉原電気街の歴史

日本有数の電気街・秋葉原誕生のきっかけは、第二次大戦後、ラジオ部品の卸業者が集まったことに始まります。その後、小売店やメーカーの卸問屋に分離し、家電販売店街へと発展。当社の創業は1945年ですが、当時からのこうした老舗が電気街「アキバ」形成の礎となったわけです。

その後の高度経済成長の時代には、いわゆる「三種の神器」といわれる生活家電を中心に、近所の電気店にない商品がある店、価格が安い大型量販店として成長してきました。さらに、オーディオブームやビデオブームなど、ハードウエア単体では機能しない商品が登場したことにより、音楽や映像といったソフトウエアの売上げが大きなウエイトを占めるようになってきました。そして1995年、Windows95発売によるパソコンの爆発的普及により、秋葉原は家電プラス電脳、マルチメディアの中心地へと変革していくことになるのです。

当然、それにつれてパソコンソフトや周辺部品、PCパーツ、自作用のキットなど、パソコン関連で扱う商品も多岐に渡るようになり、コンピュータ専門館なども生まれてきました。こうした状況の中ゲームが台頭し、さらにアニメからフィギュア、メイド喫茶へという流れが出てきました。

今日、サブカルチャーの聖地としても知られる秋葉原ですが、これらはすべて脈絡なく発生したものではなく、突き詰めれば、すべて一つの幹から派生した文化だといえるでしょう。

電気街秋葉原の根底を揺るがす市場環境の変化

秋葉原の市場の特性といえるのが、外部からの参入が少ないことです。家電・マルチメディア・サブカルチャーとビジネスの領域が広がっても、以前からこの地にいた企業が業態拡大し、増殖しているケースがほとんどです。とはいえ、地元企業がすべて順風満帆だったとはいえません。その最大の要因が価格破壊。郊外での安く品揃えの多い量販店の存在から、従来の秋葉原のメリットが薄れてきているのは事実です。つまり、これまでのように、マスに魅力を訴求できなくなり、秋葉原全体が周辺住民のための広域店になっている一面があります。このため、秋葉原の家電販売の規模は10年前の3分の1にダウンし、今日では、ソフトウエアが家電を追い抜くまでになっています。こうした変化に対応できず、企業格差や競争原理の中で衰退するところは淘汰されてきています。

しかし、秋葉原がすたれたり、集客力が落ちているかというと、そうではありません。駅前の大型再開発や、つくばエクスプレスの開通も追い風に、この3年間、毎年、前年比で20%以上の割合で来訪者が増加しています。集客力は3年前の2倍くらいになっているでしょう。街のポテンシャルは、いまだ非常に高く、さらに進展を続けています。

顧客本位の経営戦略に合わせた店舗リニューアルを実施

これら市場の変化に対応して、当社もこれまでに何度かのリニューアルを実施してきました。とはいえ、あれもこれもと多角的に業態を拡大しようとしているわけではありません。本業である家電製品を中心に、来訪者のニーズに合わせながらも石丸電気らしさをどう示していくか。これが課題になっています。

秋葉原の店舗の特徴として、どこの大型店も、9号店、10号店といった多数の小型店舗で営業していたということが挙げられます。これは、非常に高い街の集客力に店舗の能力が追いつかず、各店が限られたエリアの中で、分散、拡張を繰り返していったためです。各店舗毎の差はあまりなく、いわば、そのすべてが総合家電店でした。

当社の2年半前のリニューアルでは、駅前の店舗を免税店にしたほか、ハイエンドオーディオの専門店や、周辺オフィスの需要に合わせた電気のコンビニエンスストアのようなサプライ用品店を立ち上げました。また、CDやビデオなどのソフト面も、ジャズ&クラシックの専門店をつくるなど、客層に合わせた再構築を実施しています。ハード・ソフトとも、まずは、当社に強みのあるジャンルで専門店化し、各店の特色を出していったわけです。

これに引き続き、昨年10月、「石丸が変わる!アキバを変える!」をスローガンとした大リニューアルを敢行しました。今回の最大のテーマは、店舗毎に重複する商品をできる限り減らし、ほぼ全店を、ジャンル別に特化した専門店づくりに変更したこと。このお店はどんな店なのか、一目で分かるようにしようというものです。

具体的には、新たに誕生した生活家電館、パソコン館、ゲーム・ホビー館、モバイル館などがそれにあたります。例えば生活家電館は、独身者や単身者を含めたシングルユーザー、および女性をターゲットに、充実した生活が送れるように少し小さめの家電を中心に品揃えをしています。売場は限られているわけですから品揃えは割り切って、例えばテレビなど、ターゲットが異なる50インチ以上の製品はここには置いていません。逆に、理美容器具など従来は扱わなかった商品を揃えて、シングルユーザーの生活をサポートしています。

一方、秋葉原エリアで最大級の売り場面積を持つ本店は、総合家電館として、従来はなかったパソコンも含め、あらゆる電化製品のワンストップ・ショッピングが可能な店にしています。この店舗を中心に、周辺に専門店を配し、さらに、これまで別店舗としていた修理コーナーを本店内に設置し、修理すべきか、あるいは買い換えるべきかを提案しながら対応できるように配慮しています。

回遊性向上と提案力アップを目指した売り場レイアウトの実現

もう一つの大きな変化は、各店とも、ゆったりと買い物ができるようなレイアウトを実現したことでしょう。通路の幅を広く取り、什器の高さを下げて空間の広がりを演出したほか、イスやテーブルを設けて休憩できるスペースを作照明を明るくして商品を見やすくするなど、これまでの秋葉原にはなかったような店づくりがなされています。

これは、単にお客様の回遊性を高めるだけでなく、私どもからの提案力を高めることも目的としています。これまでは、例えばどのメーカーのテレビでも展示すれば平等に売れていましたが、今は人気が極端に偏りがちで、それを重点的に揃えるべきです。また、すべてのサイズの商品を同じように並べていてもしかたがない。それならば、展示は少なくしてスペースを広く取り、その分、なぜこの商品が良いのかをきちんと提案・アピールする。あるいは実演販売を通じて商品を理解してもらう。そういった点が重要になっています。通販やネットショップがこれだけ普及した今、それができなければ、お客様に当店に来ていただく意味、秋葉原に来ていただく意味がありません。お客様が何を求めているかを的確に把握して提案することが対面販売の肝であり、そのため、社員がきちんと説明・提案できるよう教育していることも、老舗である当社の強みだと考えています。

ライバル店同士の値引き競争はすでに限界にきており、今後は、商品の見せ方・提案力の競争になると思っています。長く使う家電品だからこそ、10年後にも「買ってよかった」と思っていただけるような店づくり。この「買って安心、ずっと満足」というキーワードは、エディオングループ全5企業の統一した経営理念に基づいています。 

今回のリニューアルから約3ヵ月が経ちましたが、その効果はすでに現れています。売上げの向上はもちろん、客層も従来の中心だった中高年層に加え、ファミリーやヤング層のお客様も増えています。また、会員カードの新規加入が増えるなど新規顧客の開拓にも成功しており、第一歩としては上々の感触が得られています。

「趣味・嗜好の街」として変わらぬ魅力を発信する拠点に

秋葉原を一言で表すなら「趣味・嗜好の街」といえるでしょう。そして、先にも触れたとおり、ラジオという電気製品から始まって、マルチメディア、サブカルチャーと派生し、ジャンルは増えても決して消えてしまうものはなく、常に拡大しています。こうした流れに沿って、深化した個々の小売店が街の魅力をつくり、また新たな来訪者を増やしていくのでしょう。

今後一番懸念されるのは、この集客力を見越して、飲食店や映画館、さらには風俗店など、従来の秋葉原の流れにない業態のビジネスが流入してくることではないでしょうか。24時間眠らない街というのは、秋葉原にはそぐいません。つまり、これまで基軸となってきた小売業に向かない環境になった時、秋葉原の衰退が始まるような気がします。そうならないことを願いながら、当社は電気街の老舗として、「リアルな店に来る楽しみ」を追求する企業であり続けたいと考えています。

上記の記事の内容は オフィスジャパン誌 2008年春季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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