大阪・道頓堀に「GiGO(ギーゴ)」の大型アミューズメント施設が誕生。関西の旗艦店として地域密着の店舗づくりを展開し、新たなエンターテイメント の形を提供する。
GiGO大阪道頓堀本店
株式会社GENDA GiGO Entertainment
2024年8月、大阪の道頓堀に、大型アミューズメント施設「GiGO大阪道頓堀本店」がオープンした。この店舗は、東京・池袋の「GiGO総本店」に続く、関西初の旗艦店となる。「GiGO」はセガ エンタテインメント時代から数えると、約60年の歴史を持つゲームセンターだ。伝統と革新が融合し、新たなエンターテイメントの形を発信するGiGOの出店戦略とゲームセンターを取り巻く時代の変遷、そして、大阪道頓堀本店オープンまでの道のりを聞いた。
GiGO総本店が誕生し、池袋の聖地が生まれ変わる
東京・池袋の繁華街に、「GiGO」の看板を掲げる大型施設がある。それが、日本有数のエンターテイメント施設「GiGO総本店」だ。その存在感はゲームセンターの枠を超え、新しいエンターテイメントの形を示している。GiGOの前身は、セガグループのゲームセンター。約60年前に第1号店を開店して以来、日本のアミューズメント業界で存在感を放ってきた。そして2022年1月18日、株式会社GENDAがセガ エンタテインメントの株式を100%取得しGENDA GiGO Entertainmentが誕生。この出来事は、長い歴史を持つブランドの新たな出発点となった。新生GiGOは、その後1年間で、約200店舗すべての看板をGiGOに変更するリブランディングを実施。同社ブランド戦略室広報課課長の古平雅英氏は「現在のGiGOは若いブランドですが、その中身は半世紀以上の歴史を持つブランドになります」と語る。
GiGOを語る上で、欠かすことのできないのが「イケギー」の愛称で親しまれた「池袋GiGO」だ。 30年近い歴史を持つこの店舗は、2021年9月20日に契約満了により閉店。国内外のゲームファンから“聖地”として親しまれていた「イケギー」の閉店時には、コロナ禍ながら国内外から数百名のファンが集まり、複数の報道機関が取材に訪れるほどの注目を集めた。この閉店が新たな物語のきっかけとなる。閉店から半年後、新ブランドの初店舗「GiGO池袋1号館」を開設すると、「イケギー」閉店から2年後の同日2023年9月20日、新生GiGOの旗艦店「GiGO総本店」が華々しくオープンを迎える。「池袋GiGO閉店時に『ゲームセンターは終焉を迎えた』と言われるのが本当に悔しかった。閉店にあたり『必ず帰ってきます』と宣言し、それを2年後に実行したのです」と古平氏は語る。池袋のサンシャイン60通りという恵まれた立地条件と、多くのファンを持つ店舗を失わせてはいけない。その想いを胸に、全国の看板をGiGOに変更する中で池袋の地に戻り、フラッグシップとしての「総本店」をオープンさせたのだった。
2024年8月、大阪・道頓堀に関西初の旗艦店をオープン
「GiGO総本店」は、単なるゲームセンターではなく、全世界のGiGOの旗艦店として位置づけられている。地上3階、地下1階の4フロアにわたる広大な空間には、クレーンゲーム、音楽ゲーム、ビデオゲーム、体感ゲーム、プリントシール機など、あらゆるジャンルのアミューズメントが集結。約半分のスペースがクレーンゲームに割り当てられ、地下1階(約300坪)が音楽ゲームとビデオゲーム、上階には体感ゲームやプリントシール機が配置された。この多様性こそが、多くの人々を惹きつけてやまない魅力の一つだろう。
GiGOの挑戦は東京だけにとどまらない。 2024年8月30日、大阪・道頓堀に新たな旗艦店、「GiGO大阪道頓堀本店」をオープンさせた。このプロジェクトをけん引してきた店舗開発本部店舗開発部副主査の金田江史氏は「池袋の総本店が非常に好評でしたので、『GiGOの旗艦店』というアミューズメントの場をもっとたくさんの人に触れていただきたい。第一にそのような想いで開発を進めていきました」と話す。
GiGOは出店の際、繁華街の人通りの多いエリアを狙っている。建物については間口が広く、フロア規模の大きいものが求められる。これは、 GiGOが目指す「総合エンターテイメント空間」の実現に不可欠な条件だ。大阪道頓堀本店の物件は、GiGOの店舗開発部がかねてから注目していたもの。常にアプローチできるよう準備を続け、2023 年4月頃から本格的に動き始めた。「CBREさんに仲介いただいて、 オーナーさんと話をさせてもらいました。好立地な物件ですから、業種を問わず、当然、目をつけている他社さんがいると思いますので、 私たちを選んでもらうために『単なるゲームセンターの域を超え、東京・池袋の総本店に次ぐ西日本の旗艦店をつくりたいんだ』という熱意を込めてプレゼンしました」と金田氏。契約を締結したのは2024年1月。このような大規模物件の獲得には1~2年かかることもあるが、GiGOは各部署が連携した迅速な対応で、スピーディな出店に漕ぎ着けた。金田氏は「大型店舗の出店は候補選定も含めて秘匿性が高いので、情報共有は限られたメンバーになるのですが、物件確保のために最大限のことを行いました」と振り返る。
大型ビジョンで人流を上層階に誘導、地域密着の店舗づくりを実施
2024年8月30日にオープンした「GiGO大阪道頓堀本店」の店舗設計において注力したのが、上層階への顧客誘導だ。その目玉となったのが、高さ10メートルにも及ぶ大型ビジョン。エスカレーター横に設置されたこのビジョンには、たこ焼きのタコなど、大阪にちなんだキャラクターが、来店者と一緒に、上の階へ向かうような演出が施されている。金田氏は「実際にご覧いただくと、圧巻だと思います」と自信をのぞかせる。
3階には、IPキャラクターのたい焼き、フィギュア販売店、ポップコーン売り場にレモネード専門店など、目的性の高い店舗を配置した。これにより、特定の目的を持った来店者を上層階まで導く仕掛けをつくり上げた。
地域との連携も忘れてはいない。商店街の協力を得て、たこ焼き「くくる」のタコやカールおじさんといった地元のキャラクターを先の大型ビジョンに登場させたり、阪神タイガースのグッズをクレーンゲームの景品に採用したりと、地域に根ざした施設づくりを目指した。金田氏は「私たちの目標は、進出した地のまちづくりに貢献することです。大阪道頓堀のキャラクターが自然に存在する場所として認知されるようになれば、GiGOの知名度も向上しますし、周辺の方々にも喜んでいただけると思います」と狙いを明かす。実際に、「GiGO大阪道頓堀本店」のオープン時には、商店街の副会長が挨拶を務めるなど、地域と良好な関係を構築している。
世界的に人気のクレーンゲーム、景品目当てに行列ができることも
現在、ゲームセンター業界は新たな段階に入っている。それをけん引するのが、クレーンゲーム(プライズゲーム)の大人気ぶりだ。古平氏によると、この人気の背景には三つの要因があるという。
一つ目はアニメ視聴者の増加に伴う、キャラクターグッズ需要の高まり。コロナ禍以降、活発になった動画配信により、世界中でアニメファンが増加し、それに伴い、キャラクターグッズへの需要が爆発的に高まった。二つ目は、オンラインでの中古販売ビジネスの一般化により、景品の流通がしやすくなったこと。インターネット上での取引が容易になったことで、ゲームセンターで獲得した景品の価値が高まり、より多くの人々がクレーンゲームに挑戦するようになった。三つ目は、アニメやゲームキャラクターのコンテンツ販売方法が変化し、ゲームセンターの限定景品が一つのコンテンツとして確立したことだ。ゲームセンターの景品は通常ワンロット生産で終了するため、常に新しい限定品が出ることになり、コレクターの間で人気を博している。これらの要因により、ゲームセンターは「おもちゃ屋さんの代わりのよう」(古平氏)になり、キャラクターコンテンツを実際に手に取れる場に。そしてクレーンゲームは、アニメやキャラクター関連の貴重なグッズをゲットできる場として、人気が急上昇しているのだ。現在のクレーンゲームの人気は驚異的で、特定の景品を求めて人々が開店前から並ぶ光景が見られるという。ちなみに池袋総本店の前身となった「イケギー」では、グッズ販売日に最大2,500人が並んだこともあった。さらには、クレーンゲーム関連のグッズ付きたい焼きを販売した際には、数百人規模の抽選券待ちができたという。
そんな中、GiGOはゲーム機を並べるだけでなく、様々なイベントや企画を通じて顧客とのつながりを深めている。人気アニメやゲームとのコラボレーション、限定グッズの販売など、常に新しい体験を提供し続けている。年間150~200件のプレスリリースのうち、100件以上が人気キャラクターや有名アーティストとのコラボキャンペーンや限定グッズの告知という事実は、GiGOの取り組みの活発さを示しているだろう。
世界の主要な場所への出店も視野、国内外の店舗展開を進める
GiGOは業界の変化に対応しつつ、さらなる成長を目指す。現在、国内外での店舗展開を積極的に進めている。台湾に8店舗、ベトナムにもGiGO店舗があり、アメリカには11店舗を構えるとともに、「Kiddleton」のブランドで無人のゲームコーナー・ミニロケを数千ヶ所展開。将来的には「ニューヨークのタイムズスクエアのような世界の主要な場所への出店も視野に入れている」という。とはいえ、池袋のゲームセンターから始まった、GiGOのカルチャーを忘れたわけではない。 GENDA代表取締役社長の申真衣氏が、日頃「日常的に、気軽に立ち寄れる場所としての価値を重視している」と語るとおり、子供からお年寄りまで、気軽に訪れることができて、楽しむことのできる店舗づくりを目指している。
かつて「池袋GiGO」にプリントシールを撮りに通っていた女の子が母親になり、その娘が「GiGO総本店」に遊びに来る。また、世界中にいる日本のキャラクター、コンテンツのファンがGiGOに集まり、言葉の壁を越えて会話をしながら親交を深める。古平氏は「海外の方たちから『日本に来たときは、絶対にここに来るんです』『この場所で写真を撮りたいと思っていました』といったことをよく言われます」とうれしそうに話す。
60年にわたるゲームセンターのカルチャーを踏襲しつつ、時代に合わせて様々な展開を行うGiGO。GENDAは、「2040年に世界一のエンタメ企業になる」という目標を掲げている。そして「そのために店舗数の増加やGiGOの認知度を高める取り組みは、目的を達成するための手段の一つとして力を入れている部分です」と話す。東京・池袋と大阪・道頓堀に旗艦店を構築し、新たなアミューズメント体験を提供する彼らの挑戦は、ゲームセンター業界の変革にとどまらず、日本のポップカルチャーの新たな発信地としての可能性を秘めている。子供からお年寄りまで、あらゆる年代の人々を惹きつけてやまないGiGOを、どこまで進化させることができるのか。今後の戦略と成長に、注目が集まる。
道頓座/DOTONEZA ビルオーナーサイドの声
道頓堀エリアのランドマーク的な立地に開業した「道頓座/DOTONEZA」という施設名に込めた“エンタメ空間として人々が集う魅力的な場(座)になってほしい”という想いからテナント選定を行ってまいりました。希少なロケーションをご評価いただき、人気のクレーンゲームやガチャガチャだけではなく、アーケードゲームやプリントシール機、音ゲー、カフェ、推し活物販ゾーン等の魅力的なコンテンツがつまった関西初のGiGO旗艦店舗のご提案をいただきました。地域の皆様にはもちろん国内外からの観光客の方々にも施設内を回遊しながら体験型で楽しんでいただけるエリア最大級のゲームセンターの出店が、道頓堀エリアのさらなる賑わいと魅力の創出につながると思い、株式会社GENDA GiGO Entertainment様にご入居いただくことに決定いたしました。
UBSジャパン・アドバイザーズ株式会社
投資部 兼 ポートフォリオ・マネジメント部
ディレクター 風間 亜矢子 氏
企業名 | 株式会社GENDA GiGO Entertainment |
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施設名 | GiGO大阪道頓堀本店 |
所在地 | 大阪府大阪市中央区道頓堀1-8-22 道頓座ビル1~3階 |
アクセス | Osaka Metro「なんば」駅徒歩6分 / 近鉄・阪神線「大阪難波」駅徒歩6分 |
営業時間 | 10:00~25:00 |
オープン | 2024年8月30日 |
CBRE業務 | 施設賃貸借仲介業務 |