リテーラーが実店舗を出店する場合の選択肢には物件を賃借するか保有(取得)するかの2つがあり、これまでは基本的に賃借がメインとなっていた。CBREの調査によれば、銀座でリテーラーが賃借している棟数の割合は2023年末時点で76%、保有割合は24%と推定される。
一方で、不動産取得を検討するリテーラーは従来から一定程度存在する。その多くは、出店する店舗が旗艦店であるケースだ。競合するリテーラーが少ないため最適な立地を確保しやすいことに加え、ブランドの魅力を消費者に伝える店舗づくりを実現しやすいこと等が、取得を志向する場合の主な動機である。保有物件の方が店舗設計の自由度が高く、賃借期間の制限を受けないため、長期的なスパンで投資することも可能だ。さらに、希少な立地であるからこそ、余剰な面積を外部に賃貸し収益を得ることもできる。
実際に、取得を検討するリテーラーも増えている。このリテーラーの代表がラグジュアリーブランドであり、既に海外の主要ハイストリートでは多くの取得事例がみられている(Figure 7)。日本でも、ラグジュアリーブランドだけでなく、宝飾・時計、アパレル、スポーツといったリテーラーが取得を検討している。
今後のハイストリートの賃料相場は、リテーラーの旺盛な出店ニーズが続くことから、上昇傾向が続くとCBREでは見込んでいる。リテーラーが賃貸借契約を締結・更新する際も、さらなる賃料上昇を懸念して、長期の定期借家契約を要望するケースが増えている。契約期間中に支払う賃料総額が、取得する場合の価格と大きく乖離しなければ、選択肢として取得も検討されるだろう。賃貸市場の需給バランスがタイトなハイストリートで希少な出店チャンスを逃さないために、賃借のみならず取得も選択肢として検討するリテーラーは今後増加すると考えられる。

