2-1 人気の地域
海外への進出や出店にあたり、どの地域を検討しているかを訊いた。一番人気は「アジア地域」(96.8%)で、「北アメリカ地域」(54.8%)、「ヨーロッパ・中東・アフリカ地域」(51.6%)と続いた。新興国が多く、高い経済成長が期待される「アジア地域」は、出店コストが抑えられるメリットもあって業種を問わず人気が高い。売上の拡大を目指すファッションリテーラーも、「アジア地域」を志向する傾向が強いようだ。同地域の人々が日本人の体形に近似しているため、国内規格の製品をそのまま販売できるメリットもある。
「北アメリカ地域」や「ヨーロッパ・中東・アフリカ地域」には、自身のブランド力や認知度の向上を目指すファッションリテーラーの人気が集まっていると推察する。ただし、日本人向けよりもサイズの大きい製品を作る工場を現地に設置する必要があり、コスト面でのハードルが一段上がる。一定数の出店が見込めなければ、工場設置までの決断はしにくい。
「太平洋地域」のオーストラリアは、日本とは異なるサイズを作る必要がある一方、日本からの距離の近さや国民の平均年収の高さを魅力と感じるリテーラーは多い。ただし、北半球に位置する日本に対して南半球のオーストラリアは季節が真逆となるため、販売・企画する製品の扱いには工夫が必要になりそうだ。
2013年に「和食」がユネスコの無形文化財に登録されたことなどを契機とした世界的な日本食ブームを追い風に、飲食リテーラーによる海外進出や店舗拡大が加速している。世界全体の日本食レストラン数は2013年には約5.5万店だったが、2年後の2015年には約8.9万店と約1.6倍に増えている※2。最も増加率が高いのは、オセアニアの約2.6倍、次いで中東の約2.4倍、アフリカの約2倍、欧州の約1.9倍となっており、アジアは約1.7倍だ。飲食チェーン店は、進出希望エリアに直営の1号店をオープンした後、現地企業によるフランチャイズ化で出店を拡大するケースが多い。また、基本的には各店舗で調理することができるため、工場などの新設は不要となる。他の物販などの業種と異なり、調理に必要な食材を日本からの輸送のみならず現地で調達することができる容易さも、全世界的な急拡大を支えていると言えそうだ。
※2 外務省調べ、農林水産省推計
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