日本の小売業販売額は増加傾向が続いている(Figure 1)。2023年の小売業販売額(実質ベース)は2019年に対して6.4%増と、コロナ禍が始まった2020年以降も増加した。一方、海外では、2023年に小売業販売額が前年比で減少した国もみられている。それらの国では、日本よりも早く経済の正常化が始まった結果、2023年にはその反動がみられたことや、インフレにより消費者の節約志向が高まったことが影響していると考えられる。
日本でもインフレは進行している。日本の消費者物価指数(食料とエネルギーを除く)の変動率は2022年Q1から上昇し2023年をピークに緩やかに低下、足元では2%台で推移している(Figure 2)。とはいえ、その変動幅は海外の主要国よりも小さく、変化は緩やかである。今後の消費者物価指数の上昇率の低下および実質賃金が上昇に転じる可能性を考慮すれば、小売業販売額は引き続き増加する可能性はある。日本の小売市場における需要は底堅いと言えよう。
さらに、日本の小売市場は今後もインバウンド消費によって販売額が増加する余地がある。2023年の訪日外国人による年間消費額は5.3兆円(対2019年比+10.2%)と過去最高を記録。訪日外国人の国別に分けた消費額を見ると、上位は台湾(割合は14.8%)、中国(同14.3%)、韓国(同13.9%)が占めた。このうち、2023年の中国からの旅行者数は対2019年比で70.4%減と大きく回復が遅れていることから、今後、中国からの旅行者数の回復が消費額の大幅増加につながることが期待される。
また、今後も、都心の路面店が集積するハイストリートにおける訪日外国人の人流は増加する可能性がある。観光庁が訪日外国人に実施したアンケート調査(2023年10~12月期、Figure 3)によれば、「今回したこと」の回答率に「日本食を食べること」(98%)、「ショッピング」(84%)、「繁華街の街歩き」(78%)がトップ3に上り、2019年同時期の調査結果より回答率も増加した。銀座や心斎橋など、都心のハイストリートがこれら要素を備えていることが、訪日外国人を惹きつける要因となっている。