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R&D【研究・開発】拠点設立ケーススタディ 日東電工株式会社

お役立ち

2016年7月1日

創立100周年を迎え、次の100年を見据えたR&D拠点は、
人・技・知が出会う研究開発と人材育成の融合施設。

日東電工株式会社 西岡 務  氏

日東電工株式会社
取締役 上席執行役員CTO
全社技術部門長
西岡 務

日東電工株式会社 桂 常敦 氏

日東電工株式会社
経営インフラ統括部門人財統括部
人財育成センター長
桂 常敦

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実質的な創業の地で技術を事業に活かすための人財育成

内観

Nittoは、電気絶縁材料の国産化を目指し1918年に創業、工業用テープや光学フィルムの製造販売で成長してきた総合材料メーカーである。2018年に迎える100周年を前に、今年3月、同社最大の研究開発施設「inovas(イノヴァス)」を茨木事業所内(大阪府茨木市)に設立した。この施設の最大の特徴は、研究開発と人財育成を一体化して行えることである。新施設では、粘着技術や塗工技術などの基幹技術をベースに、環境やエネルギー、ライフサイエンスの各分野での研究開発を行うとともに、社内外との連携を強化して価値創造を図るほか、社内の研修施設としても活用する。

R&D拠点が研修施設と同じ建物に設置されることは珍しく、Nittoグループにとっても初の試みである。なぜ同社はinovasを構築したのか。まずはinovas設立までの経緯をみてみよう。

Nittoは、粘着技術や塗工技術の基幹技術をもとに、自動車関連分野、住宅建材分野、エレクトロニクス分野など多岐にわたる領域へ事業を広げてきた。「成長の原動力となったのは、お客さまとの対話です。工業用テープの使い方は、貼る、何かを剥がす、補強するなど、お客さまによって様々です。お客さまの要望やお困り事に寄り添い、新しい製品や用途を提案してお客さまに喜んでいただく。そのためにはお客さまとの対話が非常に大切であり、課題解決を提案できる人財の育成が不可欠だと考えました」と同社取締役 上席執行役員 CTO 全社技術部門長 西岡  務氏は話す。2000年からは次世代リーダー育成のための「日東ユニバーシティ」をスタート、2004年には研修施設「樹人館」を設立するなど人財育成に力を入れてきた。

また、グループのグローバル展開に伴い、アメリカ、シンガポール、スイスなど世界各地にR&D拠点を設立してきた。同社は各エリアの特徴を生かした現地主導のR&D活動を推進している。その一方で、「文化や言葉、価値観の異なる海外スタッフに、Nittoパーソンとしての考え方やお客さまへの貢献について教える場が必要になってきた」(西岡氏)という。グループを象徴するような研修施設の設立にあたり、実質的な創業の地である茨木が選ばれたのである。

内観

当初は研修施設を単独でつくる話もあったが、最終的にR&D施設と融合したのは、次のような想いがあったからだ。「我々が社会のニーズから価値を提供するうえで、Nittoが持つ強みや技術を生かしてこそ差別化につながります。技術革新を創造する場所と、それを生かしたビジネスを考える場を一体化することで、価値ある提案ができると考えました」(西岡氏)

溜まり場と開放感の演出で対話が生まれる空間設計

inovas Garden

inovasは4階建で、延床面積は約2万平方メートル。常時約350人が勤務する。世界で活躍する人財を育成する「人財育成ゾーン」、基幹研究を行う「研究開発ゾーン」、これらに携わる社内外の人が融合し、相乗効果によりイノベーションを生み出す「イノベーションゾーン」の3つで構成されている。

ニッチスペース
「Nova」
ラウンジ

空間設計において意識したのは、コミュニケーションが生まれやすい環境である。例えば館内には、人の流れを意識し、ちょっとしたときにすぐに集まれる溜まり場のようなスペースを約20ヶ所設けた。打ち合わせもできるよう、「直接書くことができる壁」が設置されている。「例えば病院の廊下のように、決められた方向に人が流れる状態では誰とも会話しませんが、曲がっていたり溜まりがあったりすると、人はそこに寄るものです。また、以前から実験室でよく見かけたのは、腰の高さくらいの冷蔵庫の上にパソコンや実験道具を置いてスタッフが話し込んでいる姿です。停まれる場所があると、会話が発生します。そういう空間を再現できないかと考えました」(西岡氏)

また、研修用のミーティングルームや研究開発の実験室も、これまでは閉塞的な小部屋が並べられた状態だったが、inovasでは壁をシースルーにして開放感を高め、またオープンスペースに異なる実験テーマを一堂に集めることで、コミュニケーションが誘発されるようにした。同社 経営インフラ統括部門人財統括部人財育成センター長 桂 常敦氏はこのように話す。

「以前の研修施設には狭く窓のない部屋が多く、議論が煮詰まってしまったものでした。この施設では、開放感のある状態で議論でき、また外からも中の様子が見えるので、講師が気軽に中に入ってアドバイスすることができます」。

国や部門を越えて距離を縮める150畳のタタミルーム

コミュニケーションを促す仕掛けは他にも随所に見られる。150畳ほどの広さの「タタミルーム」には、高さの低い椅子とテーブルが設置されている。膝を突き合わせながら語り合うことで、部門や立場、国籍を超えて親密になれる場になっている。タタミルームの発想の裏には、海外からの研修参加者との距離をどうにかして埋めたいという想いがあったという。「当社では年2回ほど国際会議を開いていますが、海外の幹部や幹部候補生との間にどうしても縮まらない空間がありました。ある時、ホテルで100畳ほどの和室を借りて会議を開いたところ、始まって30分もしないうちに宴会のような状態になったのです。それまでスマートに飲み食いしていた人たちが、立ち上がったり、輪になったり。畳の上では空気が変わるのか、普段は無口な研究者もよく発言します。これは面白い、と思ったのがきっかけです」(西岡氏)。

ミーティングルームには、立方体のブロックがたくさん置かれた部屋もある。ブロックを自由に組み立てて机や椅子をつくることができるが、このブロックも議論の活性化を目的に設置されたものだ。「真剣な議論が始まると、立ち上がる人が多い。そうデザイナーに伝えたら、彼が持ってきたアイデアがブロックだったのです」(桂氏)。今ではブロックを上手に使って自分に居心地のよい空間をつくり、そこで電話会議をしているスタッフの姿をよく見かけるという。

空間を設計するにあたっては、若手も含めた社内メンバーと、設計会社のデザイン担当チームが一緒にワークショップを行い、Nittoらしい働き方を議論しながらつくっていったという。「R&Dの研究者全員が何らかの形で関わっているので、彼らにとっても自分たちが参画してつくった施設だという意識があると思います」と桂氏は話す。

inovasが本格的に稼働して1ヶ月余り。研究者の働き方が変わるかどうかは、今後施設がどのように使われていくかにかかっている。「研究者たちは、どう伝えれば自分たちの技術を相手に理解してもらえるか、コミュニケーションやプレゼンテーションの質を高めることに以前よりも力を注ぐようになりました。また、会話も圧倒的に増えています。グローバルメンバーにとっても、実質的な創業の地、いわゆる“聖地”にR&Dと人財育成を融合した施設をつくったことは説得力があったようです」と西岡氏は話す。

次の100年のNittoをつくるために、必要な機能を徹底的に追求した理想の施設ともいえるinovas。「社内外から人が集まり、エネルギーが満ち溢れる場所にしたい」と西岡氏は力強く語った。

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上記内容は BZ空間誌 2016年夏季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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