
立地、敷地形状、扱う荷で異なる最適な倉庫・配送センターのあり方。
お客様からの声を常に受け止め使い勝手のよい物流施設を提供していく。
プロロジス
バイスプレジデント 開発本部 開発部
部長 吉成 潤一 氏
東京、大阪に次ぐ経済圏だが土地の流動が少ない土地柄
物流施設専門のデベロッパーである当社は、顧客の求める場所で先進的かつ高品質な物流施設を提供することを目的に、1991年にアメリカで設立されました。1999年、東京に日本法人を設立し、これまで首都圏をはじめ、関西、中部、東北、九州、北海道に88棟の物流施設を開発、所有、運営しています。
中部圏への初進出は、2004年の「プロロジスパーク東海」です。名古屋は、東京、大阪に次ぐ第三の経済圏であり、日本有数の製造業企業が集積する物流ニーズの高い地域。当社としても、首都圏、関西圏に続いて中部圏を視野に入れており、顧客のご要望に応じて中部圏に進出したのは、当然の成り行きだったと考えています。ただ、当社の全国での事業展開を見てみると、首都圏が約5割、関西圏が3割弱、残りを中部、東北、九州などで占めるといった状況で、名古屋は第三の経済圏でありながら、所有不動産のボリュームが少ないのが実状です
これにはいくつかの理由が考えられますが、一つは、テナントの物流ニーズとして、名古屋は東京・大阪という二大拠点に次ぐ拠点と位置づけられることが多く、施設を集約したい企業が名古屋を選定するケースが少なかったということ。もう一つは、名古屋周辺に要望があったとしても、まとまった土地の取得が非常に難しく、施設の供給が思うようにできなかったという点が挙げられます
これは当社に限った話ではなく、競合他社をはじめ、物流事業者の方も同じなのではないでしょうか。その背景には、名古屋周辺では昔から、製造会社や物流会社が自社の土地に自前の倉庫を建設するケースが多く、また土地があったとしても、先祖代々受け継がれてきた土地を安易に売却しない土地柄であることが影響しています。加えて、県の企業庁や市町村が開発した工業団地でも、製造会社や物流会社への誘致活動が優先的に行われるため、当社のような不動産会社が参入することがなかなか難しかった。そのようなことにも起因していると思います。
空港に隣接する埋立地に進出した不動産会社第一号
名古屋周辺の物流市場は、都心部を起点に東、西、南、北の各方面にそれぞれ集積していますが、特に、北部となる小牧や春日井を物流拠点にしたいという要望が多く、私どもも当然、これらの地域を中心に土地の取得を進めていきました。そのような中で最初に完成したのが、先にお話したアスクル様専用のBTS施設である「プロロジスパーク東海」です。次いで、2007年6月には中部国際空港に隣接した総合物流地区の土地を取得し、「プロロジスパーク セントレア」を竣工させました。
当社は、世界各国の空港や港へ物流施設を供給する「ポート&エアポートストラテジー」を全社的な目標に掲げており、その一環として、中部国際空港の開業ももちろんターゲットとして活動していました。しかし、我が国では空港に隣接する地域には「公有水面埋立法」が適用され、生産地区には製造業、物流地区には物流業の企業しか土地の購入が認められていません。つまり、私どものような不動産会社は、物流地区に進出することができなかったわけです。これまで、私どものような会社が物流施設を提供するといったことは皆無でしたから、ケースとして想定されていなかったのでしょう。そこで、物流施設の開発から所有、リースまで一貫して行う当社の進出が、企業誘致を推進したい行政のニーズにも合致することを2年がかりで説明し、ようやく許可を得ることができたのです。公有水面埋立法が適用される物流地区の土地を購入した不動産会社は、全国で当社が第一号だったはずです。
狭い敷地にランプウェイ建設 顧客の声を施設設計に生かす
名古屋周辺の物流ニーズを他の地域と比較しても、さほど大きな違いはありません。ただ、特徴として1社が使用する面積が若干小さめだということが挙げられます。私どものビジネスの優位性は、フロア面積が広く、使い勝手のよい施設を提供できる点にあるため、東京、大阪、神奈川などでは、ワンフロアあたり6000~7000坪を希望されるお客様が多いのですが、名古屋では2000~3000坪が主流になっています。また、当社をご利用いただく理由としては、30~40年前に建てた古い自社倉庫を使っていた企業が、近年の物流ニーズに対応するため、当社の最新型の物流施設に拠点を集約しようというケースが多いようです。
使いやすい物流施設を提供するため、当社が開発した設計手法の一つにランプウェイ方式が挙げられます。各階にトラックが直接乗り入れられるため、エレベータで荷を上層階に運ぶのに比べ、使い勝手が格段に向上します。限られた敷地でより多くの方々にご入居いただけることで、顧客の希望する床面積やリーズナブルな賃料に対応できるという利点もあります。
ところが、ランプウェイ方式の施設を建てるには、少なくとも1万坪の敷地面積が必要で、名古屋周辺ではこの面積の確保がかなり困難です。狭い敷地にランプウェイを設置しようとすると、それだけ倉庫部分の面積が狭くなり、賃料が割高になってしまいます。取得できる敷地の範囲内で、いかに使い勝手のよい物流施設をリーズナブルな賃料で提供できるか。そのために私どもは、施設の設計に様々な工夫を凝らしています。
例えば、「プロロジスパークセントレア」の敷地面積は約7600坪。通常は建物の両側にバースを設置するのですが、そうすると外周を回る車路とバースの設置に敷地がとられ、建物の面積が少なくなってしまいます。かといって、片側だけにバースを設置すると、倉庫の奥行きが深くなりすぎ、荷物の出し入れのスピードが遅くなってしまいます。ここで扱うのはスピードが命の航空貨物が主ですから、これは致命的でしょう。そこで考えたのが、車路とバースを倉庫中央を突っ切るように集約させる方法です。建物の外周部に通路やバースを設けず、敷地を目いっぱいに活用し、加えて、車路ごと屋内に取り込むことで、悪天候でもスピーディに荷下ろしができます。海岸部での風対策、高級な自動車部品などセキュリティが必要な荷物への安全対策も万全というわけです。
では、これと同じような施設を、東京や横浜にも建てればいいのかというと、そうではありません。船に積むような何十トンもあるコンテナを扱う倉庫では、車路を片側に設置して奥行きを広くとったほうが余裕を持って荷物の積み下ろしができます。土地の形状や取り扱う荷物によって車路の設置場所は違ってきます。また立地や環境などの要素にどれだけ対応した施設を作れるかが重要なのです。
また、2008年3月に竣工予定の「プロロジスパーク小牧」の場合は、敷地面積が8000坪強の正方形の用地。建物の外側にバースを設置すると奥行きが深い使い勝手の悪い施設になってしまうため、1階中央に車路を設け、それを境に倉庫をA棟とB棟に分割しました。各棟には垂直搬送機を設置して1階から4階までをつなぎ、別々の顧客が専用倉庫として利用していただける施設にしたのです。
こういった開発のノウハウは、すべてお客様からの声をもとにしています。現在、私どものお客様は国内で65社ほどですが、当社の施設をご利用いただく中で、これは使い勝手がよい、これは使いづらい、といった声を素直に昇華させ、次の施設の開発に役立てています。
先ほど、名古屋周辺は経済規模の割に、私どもが開発した物流施設が少ないという話をしました。それには、当社のような不動産開発会社による物流施設の認知度がまだまだ低いといったことも、理由の一つだと考えています。1社で平屋の倉庫を建てるのは割高でも、当社が顧客の代わりに施設を開発し、リーズナブルな賃料で提供できるということが認知されれば、このような施設を利用して事業展開しようという会社も増えてくるのではないでしょうか。また、私どもが顧客からくみ取ったニーズを行政にも伝達し、行政が推進する開発案件にも反映させてもらえればと考えています。
「プロロジスパークセントレア」に関して言えば、今後の中部国際空港の発展に伴い、利用価値が向上してくると思います。空港近辺では、モノを輸入する際に、一時保管する場所として倉庫が必要になってきます。中部国際空港は今現在は輸出がメインですが、製造業を含め企業や工場が全国展開を視野に入れて拠点の選択を進める中、中部国際空港が日本全国の配送の拠点になっていけば、近隣の物流施設の需要も高まってくるはず。そういったニーズに対し、私どもが先頭を切って施設を提供していければと考えています。
プロロジスパーク セントレア | ||
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所在地 | 愛知県常滑市セントレア4丁目11-3 |
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構造規模 | 24,865m2(約7,522坪) | |
延床面積 | 83,301m2(約25,200坪) | |
構造 |
鉄筋コンクリート造 (免震プレキャスト鉄筋コンクリート構造) |
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規模 | 地上5階建 | |
着工 | 2006年4月18日 | |
竣工 | 2007年6月5日 |
プロロジスパーク 小牧 | ||
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所在地 | 愛知県小牧市新小木 |
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構造規模 | 27,640m2(8,361坪) | |
延床面積 | 55,734m2(16,860坪) | |
構造 |
柱:鉄筋鉄骨コンクリート造 梁:鉄骨造 |
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規模 | 地上5階建 | |
着工 | 2007年4月2日 | |
竣工 | 2008年3月 |
プロロジスパーク 北名古屋 | ||
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所在地 | 愛知県北名古屋市沖村権限 |
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規模・構造 | 未定 | |
着工 | 2008年予定 | |
竣工 | 2009年予定 |