首都圏
幅広いテナント需要を背景に、新規需要は過去最大を記録
今期(Q2)の首都圏大型マルチテナント型物流施設(LMT)の空室率は8.2%で、前期(Q1)から横ばいとなった。今期の新規供給は24.4万坪と、過去2年間の四半期平均約20万坪を上回る規模だった一方、新規需要がこれまでの過去最大だった2019年Q3(21.1万坪)を上回る22.5万坪を記録した。今期竣工した11物件のうち4棟が満床となったことに加えて、神奈川方面を中心に既存物件の空室が消化されたことから、新規供給が多い中でも空室率が安定して推移した。
今期の旺盛な新規需要には、多様なテナントニーズが含まれる。物流会社の需要は引き続き堅調で、館内で増床するケースが複数あった。取扱荷物は家具、建材、機械、電子部品、家電、飲料、印刷物、アパレル、EC関連など幅広いが、新規顧客を獲得するための拠点を新設するケースもみられた。その他EC事業者、小売りや卸売り企業、食品や日用品といった消費財メーカー、サービス系のテナントの需要も確認された。
Q2の既存空室率(築1年以上の物件の空室率)は2.1%と、Q1の2.5%から低下しており、既存物件の空室消化が進んでいることを示している。しかし、首都圏全体の空室面積は約49万坪と、1年前と比較して2倍以上に増えている。空室が多い中で、テナントは引き続き選別的となっており、物件やエリアの二極化は進んでいると認識される。
首都圏のQ2の実質賃料は4,510円/坪と、対前期比0.7%下落した。今期は埼玉、茨城、東京都内陸といった賃料が手頃な立地で物件が複数竣工したことが、首都圏全体の実質賃料を押し下げた。また、テナントの引き合いが弱く、今後も供給が増える茨城方面、圏央道エリアの更に外側の賃料の低い物件と競合する埼玉方面の一部では、引き続き実質賃料に下方圧力がかかっている。一方で、物件の希少性の高い東京の湾岸エリアや、千葉内陸の空室が少ないエリアでは賃料の上昇基調が継続している。
Figure 2 : 首都圏 LMT物流施設 需給バランス
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