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東京大学 名誉教授 村上周三氏が語る「知的生産向上の観点から見たオフィス空間」

知的生産性向上の観点から見たオフィス空間。


東京大学 名誉教授
(一財)建築環境・省エネルギー機構 理事長
村上 周三

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知的生産性の研究が推進される背景

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人間の社会は、農業社会から工業社会、そして知識社会へと進歩してきており、オフィスという知識生産の場こそが現在の経済活動の基盤を担っています。しかしながら日本のホワイトカラーの生産性は高いとはいえず、その改善が社会的な課題となっています。この問題に対する解答として挙げられるのが、執務空間の質の変革に伴う「知的生産性」の向上であります。これを推進するためには、まず知的生産性のデータによる定量化、見える化が必要だと思いました。当初、空気調和・衛生工学会、建築学会等でこれら研究をスタートさせ、学術的な基盤づくりに注力しました。その後、国交省においても知的生産性向上の重要性についての認識が深まり、2008年に知的生産性研究委員会が設立されました。開始当初の6年間は、知的生産性という概念を社会に周知する目的で、最先端の優良オフィスの事例を中心に調査しました。現在は、「スマートウェルネスオフィス(SWO)委員会」という名称で知的生産性の概念を拡張し、中小既存ビルの改修に焦点を当てて研究を進めています。

我が国のオフィスの大半を占める中小既存ビルですが、これらは主にバブル期に個人地主の相続税対策として、銀行の融資供与のもと低コストで画一的に供給された事例が多く、空間の質という視点が欠如しておりました。またテナント側にも、とにかく駅に近い立地を求め、オフィスの内部にはこだわらないという価値観が根強かったため、ウェルネス(トータルの知的生産性)が軽視されてきました。SWO委員会はこうした状況に鑑みて設立されたと言えます。

労働市場の変化がもたらす知的生産性向上の必然性

これまでないがしろにされてきたオフィス空間の質ですが、昨今ではIT系企業やスタートアップのベンチャー企業を中心に、居心地が良く愛着の持てる空間を評価する価値観が顕在化してきました。一般的な企業においても、オフィスビルの評価要素として従来の立地一辺倒から、徐々に空間の質が重視されてきているのではないでしょうか。オフィスにおける知的生産性の向上とは、オフィスの中で考えたり、ワーカー同士のコミュニケーションによって生み出されるビジネスの価値が上がるということです。従来の立地が持つ価値に対して、オフィスの中で作り出すモノの価値の比重が高まってきているのは、ナレッジエコノミーの進展を考えれば、至極当然のことだと言えます。

さらに、今後の知的生産性向上へのニーズ増大を推進するドライバーの1つとして、労働市場の変化が挙げられます。グーグルやマイクロソフトのようなグローバルなIT企業は、まさに知的生産性でビジネスを競っており、「二流の社員が100人いても、超一流の社員1名にかなわない」という極端なタレントワーカー時代の様相を呈しています。(オフィスコスト)<(人材コスト)<(タレントワーカーが生み出す価値)、という関係が成立し、しかもタレントワーカーが生み出す価値は拡大傾向にあります。また、ビルのLCC(ライフサイクルコスト)とビジネスが生み出す価値を比較した場合、ビジネス価値はビルのLCCの20倍に及ぶという研究もあり、オフィス環境向上への投資は経済的に合理的なものとして説明されるでしょう。高流動性の労働市場において、実力のあるワーカーは良い意味で贅沢になっており、オフィス空間の水準にも敏感です。従来の「オフィスには机があれば良い」という感覚は、もはや受け入れられるものではありません。就業労働人口が年々減少していくなか、ブランド力に乏しい日本の中小企業がどうやって優秀な人材を集め生き残っていくのか。このような問いに対する解答こそSWOのコンセプトであり、中小企業においても、知的生産性の高い空間の整備が必要不可欠な理由なのです。

有能な経営者は、「トータルの知的生産性」すなわちウェルネスの向上が、自社の業績やブランド力の向上につながることをよく認識しています。また同時に、クライアントやステークホルダー、競合他社によるこの面からの評価が、これを推進するドライバーになっています。端的に言えば、「あそこのオフィスは格好良い」と誰からも認知されることは、ビジネスに想像以上のメリットをもたらすということ。CBREの丸の内オフィスを見学した際に、知的生産性重視のコンセプトが強く感じられ、意を強くしました。

オフィスビルの新たな価値の評価指標を、誰が社会に周知させるか

先に述べたように日本のオフィスビル業界では、オフィスビルの駅距離の評価が強過ぎるが故に、知的生産性等の空間の価値がこれまであまり顧みられてきませんでした。しかしながら、昨今、付加価値性、知的生産性の高い中小ビルのシリーズが複数のデベロッパーから供給されるようになりました。これらビルのテナントから、「社員の定着率が非常に向上した」という声が聞かれるなど、マーケットは大きく変革を遂げようとしています。昨年度の知的生産性研究委員会の活動においては、知的生産性のスコアとオフィスビルの推定成約賃料の間に正の相関があることを示すデータも得られており、今後、マーケットにおける一層の活用が期待されるでしょう。

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注目すべき出来事として、今年都内で竣工した中型ビルのパンフレットに、「一般的なビルと比較して知的生産性が8%向上するビル」とアピールしたものを目にしました。つまり、「知的生産性」が新たなオフィスビルのアピールポイントとなっているわけです。このようなトレンドに対し、CBREのようにオフィスをテナント企業に紹介する企業には、立地や賃料、単なる設備スペックのみならず、この「知的生産性」や、あるいは「環境性能」「入居後の運営・管理サービス」といった新たなオフィスビルの評価指標を、正確に理解し、市場に説明していく役割が求められます。テナント企業にきちんと価値を認めてもらい、合理的にプライシングされ、結果的にデベロッパー側が、投資コストを適正に回収できる状況に導く役割が期待されているとも言えます。

人材の流動性の高まりという労働市場の変化を背景に、企業は生き残りを賭け、優秀な人材を惹き付ける知的生産性の高いスペースを求めるようになっています。また、そのスペースを提供するデベロッパーには、知的生産性の概念に着目し、オフィスの個性や豊かさといった、これまで顕在化していなかった価値を見える化するという役割が求められています。そして、オフィス仲介会社がそれを分析・評価し、マーケットに広く知らしめる「プロフェッショナルなオフィスの目利き」としての役割を担うことにより、我が国のオフィス環境が知的生産性の高い空間へと大きく変貌していくものと確信しています。

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上記内容は BZ空間誌 2015年秋季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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