7月の仙台空港民営化、秒読みへ
東北再興を牽引する拠点空港へ募る期待
宮城県 土木部空港臨空地域課 空港振興班
主幹(班長) 佐々木 浩氏
仙台空港における航空旅客・貨物の現状
仙台市から南東約20kmに位置し、東北唯一の国管理空港である仙台空港は、現在海外5都市、国内8都市へのネットワークを持ち、東北の拠点空港としての規模と機能を備えています。
その仙台空港における旅客および貨物取扱の動向を見ると、旅客数は平成18年度に約339万人を記録しましたが、平成20年の世界的経済不況、平成23年の東日本大震災被災により約185万人まで落ち込みました。その後、国内線はLCCの新規就航などにより順調に回復しているものの、国際線は震災後の風評被害の影響などにより伸び悩んでいます。また、航空貨物の動向を見ると、取扱量は平成12年度のピーク2.4万tから年々減少し、現在は6千t程度で推移しています。
県では、空港民営化後30年で、旅客数600万人・貨物取扱量5万tに引き上げることを目指しています。
民間による一体的運営と期待される効果
民間運営委託の概要としては、国が空港の土地等の所有権を留保した上で、管制・CIQ(税関・出入国管理・検疫)は継続して国が運営します。国が管理する滑走路等に運営権を設定し、これを民間会社に付与し、また地元自治体や経済界等が出資する第三セクター(仙台空港ビル・仙台エアカーゴターミナル)の株式を譲渡して、民間が一体的に運営することになります。
運営会社はすでにコンセッションにて「仙台国際空港株式会社」に決定。7月には運営が開始される予定となっています。民営化後は、運営会社による柔軟な着陸料等の設定や航空会社のニーズに応じた施設整備によって、新規就航や増便を図り、航空ネットワークの更なる充実を目指します。
すでに、仙台空港初の国際線LCC、タイガーエア台湾の就航が決定しており、新たな需要創出が見込まれます。
空港民営化効果を最大化する地域の支援
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、東北地方の「定住人口」の減少率が最も高く、25年後には現在の人口の4分の3まで減少すると予測されています。これを補う1つの方策としては、「交流人口」の増加による打開策が考えられます。現在、宮城県の外国人延べ宿泊客数は全国都道府県で31位、また訪れる観光客の約7割が東北地域内居住者という調査結果があります。交流人口拡大の鍵となるのが、国内中部以西と海外からの航空旅客の誘客強化です。そのためには既存路線の増便と新規就航による航空路線の大幅な拡充が必要となります。
ただ、空港運営会社が事業を行うのは基本的に空港エリア内であり、民営化の効果を最大化するには、地元の自治体や経済界が空港運営会社と連携して、観光や物産の振興に取り組む必要があります。地域には、空港利用促進に向けた協力や観光プロモーション、バス等の交通ネットワークの整備、貨物の集荷体制構築等といった側面からのサポートが求められます。現在、県では、周辺エリアのポテンシャルを把握するため、仙台空港の所在する名取市および岩沼市と連携して、土地利用状況や法規制等の調査を進めています。
今後、地元官民と空港運営会社が緊密に連携し、実効性のあるエアポートセールスや仙台空港の利用促進に取り組み、仙台空港を核として、観光・ビジネス・物流などを大きく発展させることにより、宮城のみならず広く東北全体へと経済効果が波及していくことが期待されます。
資料提供●宮城県土木部空港臨空地域課(取材●2016年4月)