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拠点戦略インタビュー

大日本住友製薬株式会社 取締役 副社長執行役員 営業本部長 藤田 尚 氏

企業合併に伴う拠点再構築
全国123ヵ所→78ヵ所への統合移転を、いかにして成功させたのか

大日本住友製薬株式会社
取締役 副社長執行役員
営業本部長 藤田 尚

統合の狙いは営業力強化、MR1,500人体制を構築

2005年10月、大日本製薬と住友製薬が合併し「大日本住友製薬」が誕生しました。
その統合の基本戦略についてお聞かせください。

大日本住友製薬株式会社

合併前の両社にとって、営業力強化は大きな課題の一つでした。営業力とは、端的にいえば「MR(医薬情報担当者)の絶対人数」×「MRの質的レベル」×「本部によるサポート体制」だと考えます。業界内の競争に生き残るには、MRの絶対人数として1,500人は必要だという認識を持っていました。

当時、大日本製薬のMRが約650人、住友製薬のMRが約700人。個々の企業としてはそれほど大きな規模ではありませんが、2社合わせて1,500人クラスのMR体制を構築できれば、業界内で7~8位のポジションにつくことができる。統合によってMR体制を拡充し、営業力シナジーを発揮して一層の競争力強化を狙っていくことが、合併のまず第一の目的でした。

統合した営業力と資源をどこに投入するのかについては、"選択と集中"を重要なテーマにしています。統合により、当社の取り扱う製品の数は約200品目にまで増えましたが、MRの役割は、医療機関に対して製品の情報を提供・収集・伝達することです。それには、製品に関する深い知識が必要で、200品目すべてに注力することは難しい。そこで、主力4品目に投入資源を集中させることにしたのです。

そのような基本戦略に基づいて、組織づくりに着手されたわけですね。

組織づくりの基本構想として、次の四つを掲げました。

まず、(1)地域密着型営業を展開するために、多支店制をしくこと。次 に、(2)質の高いきめ細やかな情報提供ができる体制にすること。そして、(3)スピーディな意思決定と顧客対応を可能にするため、フラットな組織体制に すること。基本的に営業の組織は、支店長、グループマネージャー、MRの3階層のみです。

さらに、(4)上司が部下を徹底指導できるよう、 1グループの構成人員を原則7名にすること。これは、人の思考のチャネルキャパシティ(回路容量)には限界があり、グループマネージャーが部下のことを把 握できるのは7人までだという考えからです。7人体制というのは、チーム営業が可能な営業第一線の組織単位でもあります。

また、70という 数字にもこだわりました。中規模の組織において管理しやすい人数は70人だという考えのもと、一つの支店への配属人数を平均70人としました。多少、東京 と大阪は多人数ですが、考え方は70人×22支店制を基本としています。全国で22支店というのは、業界内でも多い体制であり、地域密着型営業のベースに なるものといえるでしょう。

以上のように、合併に当たり、まず注力する主力商品を4品目と決め、多グループ体制で地域に密着したきめ細やか な営業を展開していくという明確な目標設定を行いました。この基本構想がしっかりと決まっていたことで、それを実現するための拠点構築においても、判断が しやすかったといえるでしょう。

拠点選定のタイムリミットは、たったの4ヵ月

拠点統合の具体的なスケジュールは?

合併が発表されたのが、2004年11月25日。12月に統合推進委員会を発足させ、翌年1月より統合に向けた動きを具体化させました。

その年の10月1日の新会社発足は決定していますから、9月末までにはすべての営業拠点の移転を終了しなければならない。旧営業拠点の原状回復工事を行ったうえで10月末に旧物件を解約するとなると、その6ヵ月前となる4月末には解約通知を出す必要があります。ですから、2~3月にかけて新たな営業拠点となる物件の比較検討を行い、4月にはすべて決定するという非常にタイトなスケジュールでした。

なにせ合併発表から統合まで10ヵ月しかなく、4ヵ月間で全拠点を決定しなくてはならない。企業合併には、文化の違う両社が一緒になる難しさがあることは確かなこと。しかも時間はない。当時、合併の相手となる住友製薬の副社長と話し合ったのは、お互いに隠し事はしないということ。それと、無茶なエゴは一切いわない。問題解決のよりどころは、「新会社にとって何が最良で最適なのか」。それをすべての判断基準にしようと決めました。そこからスタートしたので、多くの物事について、比較的スムーズに進めることができたと思っています。

新会社にとって最良で最適な判断基準のポイントとは?

最も重視したことは、MRが仕事をしやすい環境であることです。地域に密着した営業活動を効率よく展開できることを最優先し、これまで拠点を配置し ていなかった地域でも、必要であれば拠点を新設する方向で検討しました。また、拠点ごとに環境の優劣が生じることのないよう、全国的に事務所のグレード・ 水準を統一することにも配慮しています。

全国123拠点を78拠点に統合、うち59拠点を移転・増床

統合の対象となった営業拠点数は?

両社合わせて123の拠点があり、そのすべてを対象としました。自社ビルを使用していた9拠点についてはそのまま使用を継続することとし、賃借ビルを使用していた残りの拠点を69に絞り込み、それぞれについて全面的な見直しを実施。その結果、59拠点について移転や増床による再構築を行いました。

支店に関しては、両社合わせて33あった支店を22に統合。支店統合が比較的スムーズに進んだのは、自社ビルを保有していたのが大日本製薬に多かったため、大日本製薬の自社ビルがある地域は原則そこに集約することができたことも理由の一つです。もし、両社が同じ地域で自社ビルを持っていたら、事はもう少し複雑になっていたかもしれません。

具体的にはどのように拠点統合を進めていったのですか。

まず、地域ごとに配置される人員を決定し、従来の拠点についてその必要性や立地を見直していきました。たとえば北海道では、両社がすでに拠点を置い ていた札幌、函館、旭川に加え、住友製薬が事務所を構えていた釧路についても検討しました。その結果、札幌、函館、旭川はそのまま残すことにして、もう一 つを釧路にするのか、その他の地域に新設するのがいいのか、新しい拠点候補も含めて考えていくという具合です。ただ、これはあくまで拠点を置く都市の選定 についてであり、具体的なオフィスについては、すべて再構築を行っています。

もう一つ、東京を例にとって説明しましょう。全国の中 核となる大学病院が多く集まる東京は、これら大学病院に対する営業活動が全国に波及するという意味でも重要な市場です。文京区、千代田区、港区、新宿区あ たりに大学病院が集中しているため、こういった地域へのアクセスを考慮して拠点を選定していきました。東京の場合、両社4拠点ずつ計8拠点を6拠点に統合 するに当たり、もともと利便性の高い立地にあった4拠点についてはそのまま残しています。

拠点を置く都市と具体的なオフィスを決めた後は、オフィス内の配席を決めていきます。支店長、マネージャー、MR、内勤者、本部から配属されるスタッフ、それぞれの席をどうするのか、フラットな組織を具現化するための大まかな統一フォーマットを決定します。

振り返ると、物件の立地やMRの配置人数にはそれほどブレがなかったのですが、本社組織から支店に配属される人数が最後まで決まらず、物件の決定に影響を及ぼしたケースもありました。

時期的に、地方のオフィス市場はそれほど逼迫した状況ではなく、物件選定はしやすかったのではないですか。

関東地区のごく一部を除き、物件選択の条件には恵まれた時期だったと思います。これが1年遅れの今であったら、かなり大変だったのではないでしょうか。

た だ、良い物件はあっても、実際に現地を調べてみると、同じ建物に別の製薬会社が入居していたりすることもあり、そういう物件は候補から外れます。また、営 業拠点では医薬品を取り扱うため、セキュリティの問題上、不特定多数の人が出入りする店舗が入居している建物も避ける必要があります。このように、製薬会 社の場合、物件の選定基準は通常のオフィスよりも厳しいといえるかもしれません。

MRの営業活動には車を使いますから、駐車場の確保は必須条件。その点だけ考えれば、都市郊外の方が容易といえます。ただ、内勤者の通勤の便の良さを考慮すると、駅前や中心部がいい。その兼ね合いが難しいところです。

拠点選定が、統合に向けた初めての共同作業に

拠点の見直しを一気に進めるに当たり、苦労された点は?

拠点再構築により誕生した、新生「神戸支店」の様子

特に、地方の拠点選定に当たっては、その土地を知る現地の責任者に判断してもらうのが一番です。ただ、なにせ拠点統合と組織・人事改定が同時並行で進んでいたため、当時はまだ新拠点の責任者が確定していませんでした。誰かに現地視察に行ってもらわなければならないのですが、選定にかかわった人がそのまま拠点の責任者になるわけでもない。私が直接指示したわけではありませんが、物件の視察と判断を誰にどう依頼するかは難しいところだったと聞いています。ここは、先に述べた組織づくりの四つの基本に立ち返り、「あくまで拠点の利用者の視点での物件判断」を徹底してもらいました。

ただ、このような大規模な拠点の新設・統廃合など、誰にとっても初めてのことです。関係者のすべてが「なんとか合併を成功させなくてはいけない」と思えば、当時は二つの企業とはいえ、気持ちは合ってくるものです。社員全員、非常に協力的に進められたと思っています。

拠点再構築により誕生した、新生「神戸支店」の様子

企業合併に当たり、現場レベルでまず最初に決めなくてはならなかったのが "オフィス"という形だったのは、かえってよかったかもしれません。拠点選定は、例えば人事や営業体制の構築のような利害関係が生じません。また、大日本製薬と住友製薬の社員が、合併前にお互いに接触する機会も、そう頻繁にはありません。両者が一緒に新しい拠点を見に行き、相談しながら判断していく。物件を決める作業が、両社にとっての初めての共同作業になりました。

営業効率を優先した拠点選定、結果的に大幅なコスト減

拠点統合により、賃借コストが年間1億円強削減されました。
当初からこのようなことを意図していたのでしょうか。

コスト削減も念頭にはありましたが、ここまで削減できるとは予想していませんでした。拠点統合をスタートさせた当時、まず考えたのは、現場の営業の効率です。いくらコストを削減したいといっても、それ以上に効率的な営業体制を確立して売上を伸ばしてもらう方が、利益はずっと大きい。そのためには、現場が必要とすれば積極的に拠点を新設しましたし、家賃が少々高くなっても仕方ないと考えていました。ですから、ここまで削減できたのは、あくまで営業効率を優先して拠点を選定していった結果だととらえています。

総賃借面積は、統合前に比べてわずかに19坪増床しているだけです。これは、特に意識していたわけではありません。面積はこれまでとほぼ同じですが、2フロアを1フロアに集約することでオフィスの使い勝手が良くなったり、ファックスやコピー機などの設備環境を統合することでオフィスでの使用可能な面積も広がるなど、効率の面ではかなり改善されていると思います。

合併から1年が経ちましたが、統合による手ごたえは?

この1年で、両社の融合はかなり進み、営業力シナジーが発揮されつつあると感じています。主力4品目はすべて目標を達成しており、業績も非常にいい。これもすべて、MRの努力の賜物です。今後は、さらに戦略的に、組織の見直しを進めていきたいと考えています。

統合による選択と集中、きめ細やかな地域密着型営業が効果を発揮しているわけですね。
本日はありがとうございました。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2006年冬季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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