2025年に迎える創業50周年
本社を分散移転し、新たなシャルレを社内外へ発信する
株式会社シャルレ
神戸本社
女性用インナーウェアなどの訪問販売・通販を手がける株式会社シャルレ。1975年の創業以来、女性が活躍できる場を広げようと全国に代理店・特約店を組織化し、その販路を拡大。そして、創業50周年を来年に控えた今春、「Discover New Charle~新たなシャルレの発見~」というコンセプトのもと、かねてより計画していた本社の移転を実行した。今回の移転は、単に拠点を変えるだけではなく、事業や組織体系、社員のマインドなど、シャルレを変えるきっかけになることも目指したという。移転プロジェクトに携わったキーパーソンたちに話をうかがった。
不退転の覚悟で挑んだシャルレ本社の分散移転
株式会社シャルレは、女性の美と健康を事業領域とし、インナーウェアを中心とする衣料品や化粧品、健康食品などの販売を手がける企業だ。創業は1975年。以来、神戸市に本社を置き、契約した全国の代理店による訪問販売と会員制度を軸にして事業を展開してきた。2025年には創業50周年を迎える。そんな節目を前に決行されたのが、2024年3月末から6月にかけて実行された本社の分散移転だ。
経営陣が移転の検討を始めたのは、2022年4月、中期経営計画(2022年4月~2027年3月末)を打ち出した頃。その背景には、旧本社の老朽化とコロナ禍における働き方の変化があったと、取締役の濱野氏は話す。
「旧本社は1989年に建てた事務棟と物流棟という2棟の建物がありました。老朽化に伴う維持費や修繕費は大きく、物流棟は業務を外部委託したことで、有効活用できていない状態でした。事務棟もコロナ禍のテレワークで4割ほどしか使わないようになり、経営を担う管理部門としては、維持コスト削減と働き方改革を目的に本社を移転することで、会社の利益創出につなげたいという想いでした」
一方、ECが台頭する現在、代理店方式による販売形態にも課題があるという。「創業以来、子育ての合間などにもできるお仕事として、代理店の皆さまにはご活躍いただいてきました。しかし、その方々も平均年齢60歳代後半へ。口コミを中心とした商品紹介、商品の受発注、納品、代金回収、代理店育成など今も対面でのコミュニケーションを重視した活動を展開しています。また、代理店や特約店の方々が高齢等を理由にビジネス活動を停止されるとなれば、その方を信頼して集まった愛用者の皆さまが、シャルレから離れてしまう可能性もあります。デジタル化が進む時代に合わせ、私たちのビジネスシステムを変えていきたい。今回の本社移転には、社内外にそのような変革に向けて取り組む強い決意を形で示す意味合いもありました」
これまでも業務改革を進めたことはあるが、上手く実を結ぶことはなかったと濱野氏。「今回も賛否両論あり、どちらかといえばネガティブな感情からのスタート。しかし、今回は社長をはじめ、確実にやり切ろうと不退転の覚悟で挑みました」
強い意志のもとで掲げられた本社の移転コンセプトは、「Discover New Charle~新たなシャルレの発見~」。
2023年5月には、法務・総務部総務課長(当時)に就任した宮川氏、総務課リーダー(当時)の川端氏が中心となり、移転の実現に向けて動き出したという。
売却を考えた自社ビルを、ABW導入の新本社へリノベーション
「BZ空間のバックナンバーも隅々まで読み漁りました」。そうコメントしてくれたのは、総務課リーダー(当時)の川端氏だ。川端氏は異動でその役職に就くまで、総務は未経験。不動産やオフィスづくり、移転に関する知識は皆無だったため、他社の事例を参照しながら、移転の準備や計画を進めたという。当初はもちろん、何もかも分からない手探り状態。しかし、事例に学びながら移転の準備を進めるなかで、「オフィス移転=企業や組織の改革」という、重要な観点に気づいたと話す。「過去にも業務改革に取り組んできましたが、それまでの役員室、各部署が壁で区切られていたオフィスの壁を取り払い、固定席を設けないABWの働き方やそれに見合ったオフィスへとつくりかえれば、否が応でも会社が変わるのではないか。そう考えたことが『Discover New Charle~新たなシャルレの発見~』という移転コンセプトの策定につながりました」
「移転に関しては、業績や株価への影響を踏まえ、採算のバランスが重要。須磨区の旧本社のほか、1983年に当時の本社としてポートアイランドに建てた自社ビル(本店)の両施設の売却にめどが立てば、便利な三宮の駅前あたりに、社員たちが働きたくなるようなワンフロアのオフィスを構えたいと考えていました。しかし、旧本社は譲渡先が見つかりそうでしたが、本店については…。ならば、本店を再び本社として活用しようと大きく方向転換し、結果的には3拠点に分散移転することになりました」と、取締役の濱野氏は説明する。
2023年5月から、宮川氏と川端氏との両輪で移転やオフィスづくりの計画を進めると同時に、夏には社内各部門からメンバーを集めた25名体制の移転プロジェクトチームを立ち上げ、宮川氏が移転プロジェクトリーダーに就任。意思決定の迅速化を図るため、取締役の濱野氏と当時の総務部長もチームに加わった。
今回の移転ついて、宮川氏は次のように話す。「プロジェクトに関わるようになった当初、本社機能の移転は、旧本社から本店への単なる引っ越しだと捉えていました。建物のキャパシティとしては、多少窮屈になっても、社員約160名が働くことはできました。しかし、それではいずれ業務に支障が出ると思いましたし、実際の問題として、本店には商品を運送するトラックが横付けできないことも判明しました。そこで、各部門の業務内容や部門間の連携状況、テレワーク率やBCPなどを勘案し、3拠点へ分散させることに。本店には管理部門と情報システム部門、お客様相談室を配置し、近くのテナントビルには運送業務が生じる商品部門や検査室、そして三宮のテナントビルには営業部門を設けることにしました。まるでパズルを組み合わせていくような感覚でしたね」
実質的なオフィスの設計や移転のマネジメントは外部へ委託。プロジェクトマネジメントはCBREが担うこととなった。社内では、宮川氏と木村氏、佐々木氏の総務課メンバーが全11部門を対象に新オフィスに対する意見や要望のヒアリングを何度も繰り返し、ひとつひとつ課題の解消に努める一方、毎週末はCBREと定例会議を実施。代表取締役社長の林勝哉氏とプロジェクトチーム一同で、ABWを実践するCBREのオフィスを見学するなど、ABWの働き方やそのオフィスについても理解を深めていったという。
「移転やABWにネガティブな意見も多かったなか、社長より『単なる引っ越しではない、改革のチャンスである』と、全管理職、プロジェクトメンバーに熱い思いを発信されたことで、社内の風向きが一気に変わりました」と、川端氏。当本店の外壁改修および大型修繕工事も本移転プロジェクトと平行して実施しつつ、2024年2月には旧本社の譲渡先も決まり、3拠点への移転は3月から順次進められたという。
「コミュニケーションエリア」では、中央のビッグテーブル、窓側の小上がりカウンター席のほか、ファミレス席やソファ席も配置し、その日の業務内容や気分に応じて座席を選択できる。壁面にはオフィスデザインのコンセプトをモチーフに。
新しいオフィス・働き方を、シャルレの発展へとつなげていく
移転後の新本社で社員たちが喜んで働いている姿を見ると、嬉しくなるという宮川氏。川端氏は、時間を要していた部門間の調整ごとなどは、フリーアドレスになったことで、よりスピード感が改善されたとも。旧本社では社員と話す機会が少なかったという濱野氏は、すれ違う社員の姿や耳に入ってくる会話が新鮮だと話す。
プロジェクト概要〔本社移転(分散移転)〕
企業名 | 株式会社シャルレ |
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■神戸本社(本店、自社ビル) | |
所在地 | 兵庫県神戸市中央区港島中町7-7-1 |
規模 | 約1,000坪 |
人員 | 約100人 |
稼働開始日 | 2024年4月1日 |
■三宮オフィス(賃貸ビル) | |
規模 | 約100坪 |
人員 | 約60人 |
稼働開始日 | 2024年4月22日 |
■ポートアイランドオフィス(賃貸ビル) | |
規模 | 約200坪 |
人員 | 約70人 |
稼働開始日 | 2024年6月3日 |
■旧本社(自社ビル) | |
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所在地 | 兵庫県神戸市須磨区弥栄台3-1-2 |
規模 | 約5,000坪(流通棟:約3,400坪、本社棟:約1,600坪) |
CBRE業務 | 旧本社(オフィスおよび物流施設)売却プロジェクトの推進(買主選定、売買仲介等)、新本社構築に向けた物件紹介・賃貸仲介・ABW導入支援・チェンジマネジメント・コンサルティング・プロジェクトマネジメント(分散移転、神戸本社屋の外壁他大規模改修工事) |
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