医療産業都市構想の中核的研究機関として誕生した、理化学研究所神戸拠点の現在と将来のビジョン。
国立研究開発法人理化学研究所|神戸事業所長 竹内 英氏
理化学研究所(理研)は、文部科学省所管の国立研究開発法人として、基礎研究から応用研究まで、幅広い分野で研究開発を行っています。各分野に特化している研究機関が多い中、理研の特長は総合力にあります。物理学、工学、化学、ライフサイエンスから計算科学、大型施設の運用まで、多岐にわたる研究分野をカバーしているのです。
神戸での展開は、1998年に始まった神戸医療産業都市構想がきっかけでした。2000年にはバイオ研究の拠点として、発生・再生科学総合研究センター(現・生命機能科学研究センター)を設立。その後、2010年には計算科学研究機構(現・計算科学研究センター)を設立し、2012年にはスーパーコンピュータ「京」の運用を開始、現在は「富岳」へと発展を遂げています。
神戸立地の優位性は、大学等の研究機関、医療関連機関、医療関連企業など約360の組織が集積する、医療産業都市であることです。この環境は、研究成果の実用化において大きな強みとなっています。例えば、2014年にはiPS細胞を用いた、世界初の臨床研究を実現しましたが、これなど、近隣する医療機関との密接な連携があってこそ可能になったと言えるでしょう。
スーパーコンピュータ部門では、地元企業や自治体のスパコン利用により具体的な成果を生み出しています。住友ゴム工業では、タイヤの性能向上に貢献し、神戸市との協働では防災シミュレーションを展開するなど、地域に根ざした研究開発が推進されています。今後は、「AI for Science」という新たな取り組みにも注力していきます。この分野では、実験データや研究者の知見など、現場の経験がさらに重要になってきます。AIをサイエンスに活用する際には、実際の研究現場との密接な連携が大切で、神戸の医療産業クラスターという環境は、この要件に極めて合致しています。
昨今、オンラインでの業務が一般化していますが、新しい研究開発や技術革新には、やはり直接的なコミュニケーションが不可欠でしょう。特に、新規プロジェクトの立ち上げや問題点の洗い出しなど、創造的な議論が必要な場面においては、対面でのコミュニケーションの価値が際立ちます。重要なのは、物理的な近接性を活かした積極的な交流です。理研では、地域の研究機関、医療関連機関、医療関連企業との日常的な対話を通じて、新たな研究アイデアや協力関係を生み出していきます。神戸医療産業都市がさらに良いものになるため、開かれた研究環境を築き、イノベーションの創出を加速させていきたいと考えています。
写真提供:理化学研究所



