空室率は8期連続で最低値を更新。賃料水準の上昇傾向が継続。
需要は引き続き堅調
当社の調査による、2017年3月期の福岡市中心部の空室率は、対前期(2016年12月期)比0.5ポイント低下の1.0%、想定成約賃料は、対前期比2.8%上昇し、12,270円/坪(共益費込)となった。
テナント需要は、相変わらず堅調である。増床や立ち退き移転、IT企業を中心とした福岡への新規開設、周辺エリアの自社物件からの移転等、二次空室の発生しない床純増のオフィス需要が活発で、空室は順調に消化されている。
空室率低下とともに、賃料水準の上昇も進んでいる。2009年から2013年の空室率10%を超える市況低迷期には、軒並み10,000円/坪(共益費込)といわれていた成約賃料が、現在では12,000円~14,000円/坪(共益費込)となり、15,000円/坪(共益費込)を超える成約賃料水準となる物件も増加している。フリーレントも、0~2ヶ月以内が大半で、貸主優位のマーケットであると言えるだろう。需要の集中する物件では、テナント間で競合し、貸主の求める賃料水準以上で成約する事案も増えている。また、貸主からの増額改定交渉も増加。福岡市内の既存契約のほとんどは普通借家契約のため、さほど強気な賃上げ交渉までには至っていないようだが、テナントサイドは、比較対象となる物件がないため、増額改定を受け入れざるを得ない状況になっている。まだ新規成約賃料の上昇率とは乖離があり、契約更新のたびに増額改定交渉が行われているもようである。
供給不足の深刻化を懸念
既存賃料に関しては、緩やかな上昇局面であるが、空室率と新規成約賃料に関しては、2007年のリーマンショック以前の水準に達している。大きく異なるのは、当時は、数年にわたって大型新規供給を含む多数の新規供給案件があったが、現在は、新規供給計画が限定的であることだ。2018年から2021年にかけて大型の新規供給が計画されているものの、これらすべてを鑑みても、15,000坪~20,000坪程度である。2018年春に予定されている新規供給には、すでに引き合いが集中しており、現時点においても満室竣工が予想される。二次空室も限定的と噂されており、現在のテナント需要を受け入れるには全く足りない。このままでは、今まで経験したことのないオフィス市況に突入するだろう。
福岡支店 瀧尾 智之
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相場表
種別 | 賃料(共益費込み) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
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博多駅前 | 11,500~14,500 円/坪 |
駅至近の大型ビルや築浅ビルを中心に空室が減少。賃料は引き続き上昇しているが、大型空室については特に上昇傾向が強い。
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博多駅東 | 9,500~11,500 円/坪 |
駅前より比較的割安感のある物件が多いため、移転需要は増えている。賃料も上昇傾向である。
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呉服町 | 9,500~11,500 円/坪 |
博多駅近辺の空室が減少した影響で、需要が広がり引き合いは増加傾向。ただし、空室が少ないため賃料の上昇は緩やかである。
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天神 | 12,000~14,500 円/坪 |
博多駅前同様、新規・継続賃料ともに上昇が続いている。大型空室、築浅物件の空室が少ないため、空室が出ればすぐに内定している。
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赤坂大名 | 9,500~11,000 円/坪 |
大きな動きは少ないものの、天神の空室減少を受け需要が広がり引き合いが増えている。ただし、空室は少ない。
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北九州小倉 | 7,500~10,000 円/坪 | 引き合いが増え、空室は減少してきている。ただし、比較的空室は多くあるエリアといえる。 | |
中・大型倉庫 市内 |
2,500~3,200 円/坪 |
需要は鈍化。1月に竣工した大型倉庫は募集が続いている。既存倉庫は依然品薄感あり。
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空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。