賃料相場は上昇基調が継続。 空室率は依然1%未満の低水準で推移。
退去前に後継テナント決定
シービーアールイー(株)の調査による2019年9月期の福岡主要オフィスゾーンの空室率は、前期(同年6月期)比0.2ポイント上昇の0.6%となった。上昇したとはいえ、依然として低水準で推移している。新規開設や分室設立のほか、将来的なビル建て替えによる立退移転による空室消化が確認された。競争力の高いビルでは、募集区画がまだ入居中でも、早期に契約締結に至る事例がほとんどで、空室状態で募集している物件は少ない。また、空き予定が出た際は、館内テナントの増床が優先されるケースがほとんどだが、外部のテナントに貸す方が高い賃料で貸せる可能性があるため、テナントとの関係を考えると、貸主としては悩ましい状況もある。
想定成約賃料は前期から1.4%上昇し、15,850円/坪(共益費込)となった。博多区、中央区で競争力がある物件には、相変わらず需要が旺盛である。ある程度の期間に申し込みを募ってテナント選定を行っており、当初見込んでいた価格より、高い賃料で成約となっているケースも見受けられる。このような状況が、周辺ビルにも波及し、平均成約賃料の上昇につながっている。また、既存テナントへの賃料改定交渉も、継続して行われている。
今後の新規供給と市場動向
このような貸し手市場は、少なくとも2020年までは続く見込みである。博多エリアで、2020年春に竣工する「(仮称)九勧博多駅前一丁目ビル」(貸床面積約3,600坪)は、満室竣工目前となっている。ただし、大型ビルの供給はこの1棟だけとなっており、二次空室が一時的に発生するものの、市場に大きな変化を感じることはないだろう。
2021年には、博多エリアで「(仮称)博多駅前四丁目開発」(貸床面積約2,500坪)、薬院エリアで「(仮称)KMG計画」(貸床面積約1,700坪)、天神エリアで「(仮称)天神ビジネスセンター」(貸床面積約13,300坪)が竣工予定となっている。この時期には新規供給が重なることもあり、一時的に空室率が上昇し、賃料上昇も緩和される可能性がある。また、2022~2024年は、博多・天神エリアで大型オフィスビルの再開 発や、一部非公表ながらオフィス計画を模索している事業者がある。これが実際に開発されれば、貸床供給面積は計5万㎡前後と想定される。その動向には、注視が必要だろう。
福岡支店 江頭 秀人
- 現在募集中の福岡県の賃貸オフィス
相場表
種別 | 賃料(共益費込み) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
---|---|---|---|
博多駅前 | 16,000円~19,000円/坪 | 大型の空室は出るが、空室期間が短く空室率の上昇には至らない。引き続き賃料上昇傾向。 | |
博多駅東 | 15,000円~17,000円/坪 | 駅至近の好立地物件の成約賃料が上昇。 | |
呉服町 | 13,000円~15,000円/坪 | 明治通り沿いの大型物件を中心に成約が進んでいる。他エリア同様空室が少なくなっており、賃料が緩やかに上昇している。 | |
天神 | 19,000円~22,000円/坪 | 引き続き立ち退きテナント需要により、空室は減少。賃料も、他エリアより上昇している。 | |
赤坂大名 | 13,000円~16,000円/坪 | 他エリアの空室が減少した影響もあり、需要が増えてきている。ただし、賃料上昇への影響は少ない。 | |
北九州小倉 | 8,000円~10,000円/坪 | オフィス需要は依然低調。成約賃料についても横ばいで推移。 | |
中・大型倉庫 市内 |
2,800円~3,200円/坪 | 中型倉庫供給は品薄が続いており、LMT は新規計画へも多数の引き合いがある状況。大型ニーズを受け入れ既存LMT は満床が続く。 |
空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。