昨年竣工した大型ビルの影響で、
空室率は4%台まで上昇。
新規募集賃料はほぼ横ばいで推移
CBREの調査によると、2023年12月期の空室率は4.4%と、対前期(同年9月期)比1.5ポイント上昇した。空室率上昇の主な要因は、2023年に竣工したビルの中でも大型の「アーバンネット仙台中央ビル」が、ある程度の空室を抱えたまま竣工したことである。ただし、空室率は大きく上昇したものの、悲観的な状況ではない。仙台を含めた支店経済の地方都市では、企業の意思決定から契約までのスピードが早く、竣工前の内見ができない物件を契約するよりは、実際に内見できる状態になってから決めようという動きの方が多い。ここ数年で竣工したビルは、竣工時に満室だったビルはあまりなく、1年以上を経て満室となっている。そのため、2023年に竣工したビルも、それに倣った形で推移していくと想定され、空室率は徐 々に落ち着いていくと思われる。
新規募集賃料は、ほぼ横ばいが続いているが、新築と既存ビルの睨み合いによるものと推察される。新築ビルは、それぞれの競合関係から高値追求ができない。また、既存で、これまでマーケットを牽引してきたビルは、新規募集賃料を上げると、新築ビルと競合するため、賃料を上げにくい状況だ。マーケット全体の床面積で、大きなウェイトを占めている、坪当たり1万円台前半のビルは、入居率を重視する傾向から、全体の賃料底上げには至っていない。しかしながら、新規募集賃料とは違い、ハイグレードの既存ビルでは、現入居者に対する値上げ交渉が、引き続き行われているようだ。今後は、新規供給も落ち着いてくるため、空室率は低下し、一時的に落ち込むと予想される賃料も、回復傾向となるだろう。
再認識される耐震性能の重要性
仙台市中心部では、新築ビルが供給される反面、旧耐震ビルが多いことも気になる点である。東日本大震災から10年以上の歳月が経ち、耐震性能の重要性が風化しつつあったが、今年1月の能登半島地震によって、ビルや住宅の倒壊という痛ましい事象が数多く起こり、再びその重要性が浮き彫りとなった。しかし、建築費の上昇が続く中、建て替えに舵を切るのは容易ではなく、個々のビルオーナーというよりは、行政などの協力のもと、様々な方法でビルの価値を高める方法を、模索する必要があるだろう。
仙台支店 山本 和良
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