製造業を取り巻く環境の変化が、
日本の先進的物流施設需要を牽引するもう一つの潮流として注目される
※ 本レポートは2023年3月に発表されたものです。
1.はじめに
ここ数年、地政学リスクの高まりやパンデミックをきっかけとしたサプライチェーンの混乱で、世界の多くの企業が生産・物流体制の見直しを迫られている。
そのような状況にあって、注目を集めているのが半導体受託製造会社大手の台湾積体電路製造(TSMC)の日本における工場新設だ。同社がソニーグループおよびデンソーと共同出資するJapan Advanced Semiconductor Manufacturing (JASM) が熊本県菊陽町に新工場を建設中で、2023年に建物を竣工、2024年までに車載用や画像センサー向けなどのロジック半導体の生産を開始する予定である。TSMCは日本での第2弾の工場建設も検討しており、日本の半導体産業、ひいては製造業全体が活性化されることが期待されている。
本レポートでは、TSMCの熊本進出の事例から、工場新設で期待される経済波及効果と物流施設の需要について考察する。物流施設の需要は、これまで大都市圏の消費財の荷動きを中心に語られることが多かった。これからは製造業が、EC化の進展と並んで日本の先進的物流施設需要を牽引するもう一つの潮流となると考えられる。
2.TSMCの熊本進出と経済効果
九州経済の位置づけと半導体産業
TSMCの新工場が立地する熊本県を含む九州圏(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄の8県)の名目域内総生産は53.0兆円で、全国の約9%を占める(2019年度、Figure1)。全国経済の約4割を占める関東と、それぞれ約17%を占める近畿、中部に続く第四の経済圏である。人口は1,417万人(2021年10月)と全国の11%だが、政令指定都市である福岡市、北九州市、熊本市に集中している。韓国、中国、台湾といったアジア諸国との距離が近いことから、歴史的に海外との交流・貿易が盛んな地域である。
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- はじめに
- TSMCの熊本進出と経済効果
- 物流不動産へのインパクト
- まとめ
作成:2023年3月