立地条件を最優先した施設選び結果的には最適なチョイスに
楽天物流株式会社
事業運営部 部長
村上達志氏
当社は2010年3月、楽天が運営する仮想商店街「楽天市場」の物流部門を担当する100%子会社として設立されました。当初は「楽天ブックス」の商材である本・雑誌・CD・DVD・ゲーム・PCのサプライ用品といったパッケージメディアを全国へ配送するセンターとしてオープンし、今年7月からは日用雑貨も取り扱うようになっています。当社が自社物流センターを設立するに当たり「プロロジスパーク市川1」を選んだ基準としては、まず、実際の配送を行う運送会社が近い、主要道路のアクセスが良い、ワンフロアで十分な広さがあるなど、あくまでも立地と機能性を最優先した結果でした。当施設が免震構造であることは、もちろん知っていましたが、実はその効果がよくわからなかったため、選定における優先順位は、正直なところさほど高いものではありませんでした。
実質被害ゼロ改めて実感した免震の効果
楽天物流株式会社
事業運営部 部長
村上達志氏
当社の業務は、不特定多数のエンドユーザーに対する発送であり、データ管理や梱包等は機械化しているものの、商品のピッキングは庫内ワーカーの手による人海戦術で行っています。そのため業務中の作業人員は多く、震災当日の3月11日も180人程が施設内で働いていました。
地震発生直後から、まるで船に乗っているような横揺れが長く続き、当然ながらまず人命を最優先し、拡声器を使って商品をストックしている棚の間からワーカーを退避させ、揺れが落ち着くのを待って車路に避難させました。当日の作業はそこで全面中止にし、施設の安全を確認して業務を再開したのは翌々日のことでした。その間、マテハンはもちろん、商品の点検もしたのですが、棚にびっしりと並べられていた約60万ピースの本やCDの商材は、ほとんど落下しておらず、また、棚自体も変形していませんでした。けが人も商品の破損もない、実質的な被害がゼロであったことには本当に驚かされました。結果的には今回の震災によって、免震構造の持つ意味を実感することになったといえます。
免震だけでは不十分周辺インフラと付帯設備も重要
ただし、BCP(事業継続計画)の観点から見ると、いくつかの課題も見えてきました。その最大のポイントは周辺インフラです。具体的には、液状化現象による敷地周辺の通行への支障、断水によりトイレが使えない、交通機関の運休によりワーカーが通えないといった問題が起こりました。当日、帰宅できずに宿泊したワーカーは約40名程となりました。また、その後の計画停電に関しても、実際には停電には至らなかったものの、その可能性を考慮した結果、業務に支障をきたしたのは事実です。
事業は人と場所はもちろん、道路・電気・水などのインフラが整ってはじめて継続できるものです。ですから、施設を選ぶ際には免震だけでなく、こうした点も考慮に入れる必要があることも痛感した次第です。特に、電気が一番の問題だったため、自家発電設備、あるいはデータセンターのような電源経路の二重化といった対策が重要だと思います。
今回の震災に当たり、当社では災害対策マニュアルの見直しを行いました。具体的には安全委員会を設置し、その主導による避難訓練の実施、避難経路の再確認、非常食の確保などが新たに盛り込まれています。非常食などは、基本的に外に避難するよりもここにいた方が安全であることがわかったことで、まさに"籠城"できるようにするためです。
免震の安全性及び投資効果が高いことは証明されたと考えています。今後は、周辺インフラの確認や災害対策マニュアルの強化により、将来起こり得る突然の災害に備えていく所存です。