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キオクシア岩手株式会社

NAND型フラッシュメモリの
リーディングカンパニーであるキオクシアが、
成長をかけて東北で挑む、生産拠点第2弾!

キオクシア岩手株式会社

世界に先駆けてNAND型フラッシュメモリを開発した東芝から2017年に分社し、現在も同商品のリーディングカンパニーであるキオクシア。その同社が従来からの四日市工場に続く第2の生産拠点として選んだのは、岩手県北上市だった。なぜ岩手県なのか、そこでどのような成長をめざすのか。2023年内の完成をめざし第2製造棟の建設が急ピッチで進められている今、その戦略を訊いた。

キオクシア岩手株式会社

NAND型フラッシュメモリの分野で
リーディングカンパニーであるキオクシア

今を去ること30数年前の1990年当時は、世界の半導体メーカー売上ランキング上位10社のうち、6社が日本企業という時代であった。だがその後、使用用途の拡大とともに急速な高性能化が求められる中、急激に競争力を失ったのも、歴史が示す通りである。だが、その中にあって、今日もなお世界の大企業に伍して、特定分野における高性能製品の提供により、業界トップクラスのシェアを獲得している国内メーカーがいくつか存在する。その一つが世界トップクラスのフラッシュメモリ専業企業である「キオクシア」だ。

フラッシュメモリとはデータを記録する半導体メモリの一つで、電源を切ってもデータの保持が可能で、大容量データの保存に向いているという特徴がある。光ディスクやHDD(ハードディスクドライブ)と比較して小型、低消費電力、耐衝撃性に優れている点もメリット。こうしたフラッシュメモリは、PCはもちろんDC(データセンター)などでも利用されるSSD(ソリッド・ステイト・ドライブ)、スマホやデジカメに搭載されるmicroSDメモリカードやSDメモリカード、PCなどのデータ共有に不可欠なUSBなど、幅広いデバイスで活用されている。

キオクシアはNAND型フラッシュメモリ市場で約20%の世界シェアがあり、協業先であり共同生産をしているWestern Digital分を合わせると約30%がキオクシア四日市・北上工場の生産シェアとなっている。

グループ全体の連結売上高を見ると、2021年の販売額は1兆5265億円と、過去最高を記録した。2001年から2021年までの20年間で約10倍に拡大している。拠点はグローバルで10の国と地域に上り、従業員は約1万5000人の規模に拡大している。「現在、世界中で不足が叫ばれているのは、マイコンやロジックといった半導体であり、当社とは直接的には関係ないと言えます。ですが、我々の工場が止まると、全体の3分の1の製品が世界市場から消えることを考えると、製造責任は非常に重い。そうならないように常に注意を払っています」。そう語るのはキオクシア岩手の取締役総務部長である鷲津裕己氏である。

キオクシア岩手株式会社
キオクシア岩手株式会社
キオクシア岩手株式会社
キオクシア岩手株式会社

加速度的に急拡大する生成データ
その活用の鍵を握るフラッシュメモリ

キオクシアは元々、東芝の半導体メモリ事業であったものを、2017年に分社化して設立された後、2019年に社名変更して現在に至っている。1990年代の東芝当時は、DRAMをメインに扱っていた。だが、2000年頃にITバブルが崩壊し、DRAMを製造していた企業は軒並み立ちいかなくなった。東芝でもメモリ事業から撤退という話も出ていたが、その時に救世主となったのがフラッシュメモリである。

東芝では1987年、現在でもフラッシュメモリ市場の主流であるNAND型フラッシュメモリを、世界で初めて発明していた。当初は細々と開発していたが、世間では2000年頃からデジタル家電が登場し始め、SDメモリカードなどの需要が急拡大したのだ。そのためNAND型が注目されたために、主製品をDRAMから乗り換えたことで息を吹き返す。その後、さらにスマホの登場や、PCの記憶メディアがHDDからSSDに置き換わってきたため、用途が格段に広がってきたのだ。

こうした中、製品の構造的にも平面である2次元から、世界初の多層的に構成する3次元フラッシュメモリを2007年に発表し、2015年に48層、2016年に64層のフラッシュメモリを製品化したことで大容量化が一気に加速した。驚くべきは層を重ねても製品の厚みがほぼ変わらないことで、2018年には96層、2020年112層、2021年に162層、今年には200層を超える製品を発表している。

だが、誰もが手軽に手にできるスマホは世界中に広がっている。さらにメタバースや6G(第6世代移動通信システム)などの登場により、今後生成されるデータ量は加速度的に増加するだろう。つまりそれだけ保存するニーズが拡大するのだ。しかも蓄えるだけでなく、医療や自動運転など、今までとは違ったビッグデータの活用分野も拡大している。

半導体の成長率は全体では年7%の成長率だが、メモリ市場に限ってみると年約10%の成長率で拡大してきた。だがデータの生成率が加速度的に増えている状況を考えると、今後のメモリ分野の成長率は、さらに高まると予想される。「技術革新で開発したものを、生産の効率化で安くする。それが新たな活用分野を産み出し、さらに技術が進み、低価格化が進む。その繰り返しが半導体のビジネスモデルです。だからこそ研究開発や生産拠点の拡充が生命線となるのです」(鷲津氏)。

キオクシア岩手株式会社

四日市と北上の2拠点体制の確立
さらに第2製造棟建設に着手

こうした変化の中、前述した通り、社名変更して現在に至ったのがキオクシアだ。当時の同社の生産拠点は、1992年に設立した四日市工場だった。1993年には第1製造棟が稼働を開始し、DRAMを中心に生産していた。そして1996年には第2製造棟も稼働し、1999年にはNAND型フラッシュメモリの生産を開始している。だが2001年には汎用DRAMの製造・販売から撤退することを決定した。

しかし2002年、東芝の半導体メモリ事業はNAND型フラッシュメモリに本格的に舵を切った。その後の成長は前述の通りで、生産拡大に合わせて、2005年には第3製造棟が操業を開始し、2007年には第4製造棟が稼働を開始。翌2008年には世界での生き残りをかけ、第5製造棟の建設を決定した。だが、折からのリーマンショックにより計画延期に追い込まれた。しかし、市況回復とともに2011年に第5製造棟が完成。さらに既存棟の建て替えを含め、2018年には第6棟と開発センターなど建設ラッシュが続いた。現在では第7棟の一部が完成し稼働を始めている。

その後、2019年に社名を現在のキオクシアに変更した同社だが、同年には岩手県北上市に新たな拠点を設けた。それがキオクシア岩手である。「北上は、1992年、最初のNAND型フラッシュメモリを量産し始めたのが岩手東芝エレクトロニクス(現ジャパンセミコンダクター)であったという、いわばゆかりの場所。2008年に、需要の拡大に応じて四日市に次ぐ国内第2の拠点を作ろうという計画がスタートしたのですが、残念ながらリーマンショックにより計画は凍結しました。その後、約10年かけて年率約30%成長の市場となり需要の拡大に応えるべく再度、2017年に国内海外を含めて候補地を探した結果、ここ岩手県北上市への進出が決まったのです。その後、キオクシアの100%子会社であるキオクシア岩手(当時は東芝メモリ岩手)を設立、2019年にK1と呼ばれる第1製造棟の竣工により、その歩みが本格的に始まったのです」(鷲津氏)。K1は2020年に量産を開始した。

北上市に決めた理由はいくつもある。一つは隣接するジャパンセミコンダクターの支援を受けられること。また、岩手県南部には工業団地などに様々な工業が集積しており、特に半導体関連の企業が多いこと。半導体産業は自動車産業と似ていて、基盤の裾野の広がりが重要なのだ。電力や水などの動力インフラ面や、さらに新幹線や在来線の駅、空港、高速道路が近いなど交通面が充実していること。行政のサポートが充実していることなどが挙げられる。

完成したK1は340m×115m高さ50mの5階建で、免震構造採用。2022年3月の福島沖地震でも震度5強を、震度2程度の揺れに軽減したという。2階と5階がFabと呼ばれるクリーンルームで製造装置の本体を配置し、その下の1階と4階がSub-fabとして、階上の製造装置に付帯する装置を配置している。同じ階ではなく分けることで製造装置の設置効率が上がり、メンテナンスもしやすいからだ。AIを活用した生産システムを導入し、全自動で生産ラインが動いている。もちろん省エネにも配慮し全館LED照明のほか、屋上には全面太陽光パネルが設置されている。

ここでは半導体製造の前工程としてシリコンウェハという円盤状の部材に回路を作っている。その後テスト工程を経て、後工程である組立工程を担う国内外の協力会社へと送られる。岩手では最先端の製品しか作っていないそうだ。「世界の3分の1の生産シェアを占めている以上、BCPの観点からも2拠点体制は不可欠でした。四日市とは距離はありますが、データ連携によりリアルタイムで両方の生産管理ができるようになっています。こちらはまだ日が浅いので、四日市工場から500人弱の経験者を出向させて、実務指導とか立ち上げのリーダーなどをしてもらっているところです」(鷲津氏)。

そして今日、現在ほぼフル稼働となったK1に加えて第2製造棟(K2)の計画が進行中で、2022年4月に建物の建設が始まった。市場動向を見ながら工場拡大の計画を決定し進められたもので、K2に関しては、北上に進出した頃から将来的な建設を視野に入れていたという。量産する中でのスケールメリットや効率を考えれば、規模はできるだけ大きい方がいいからだ。 K2は7階建で高さは60m。一般のビルの13階に匹敵する高さだ。K1と同じFabは2層だが、7階建のレイアウトにすることで、製造装置をより効率的に配置できるようになる。

K2の開発コンセプトとしては、次世代量産Fabとして、これまでの継承である「スピードと規模」、「オペレーション効率」に加え、「環境考慮、省エネ・省電力・省資源、さらにはBCP・BCM(事業継続マネジマント)」などのサステナビリティの部分が強調されている。

キオクシア岩手株式会社

産・官・学の連携による東北の発展
キオクシアの進出はその起爆剤に

設立5周年を迎えたキオクシア岩手だが、現在は従業員(派遣社員含む)が約2,200人の規模に達している。2019年から毎年、定期採用を実施しており、今年は200人が入社した。そのうち約150人が高卒であり、現場の平均年齢が約28歳と若いのもうなずける。その多くが製造装置のメンテナンスなどに従事する技能職で、全体の約65%を占めている。

だが、K2が稼働することになると、さらに1,000人規模の人材が必要になるという。そのために、人材確保と育成が急務なのはもちろんのこと。そこで東北経済産業局が主導し2022年6月に立ち上げられたのが「東北半導体・エレクトロニクスデザイン研究会」だ。東北地方の半導体・デバイス産業の競争力強化を図り、同産業の発展につなげることを目的とし産・官・学の連携強化を進め、東北地方における人材確保と育成・サプライチェーンの強靭化などを実現しようという業界横断的な試みだ。「手前味噌ですが、当社が進出したことがこの取り組みの大きなきっかけになっていると思います。毎年100人規模の新卒採用の実施は、地元出身の学生の受け皿にもなりますし、関連企業を含めればもっと大きな規模になります。その意味で、産・官・学が連携して東北を盛り上げることができれば、我々としてもこの上ない喜びです」(鷲津氏)。

半導体の分野での日本企業の躍進は、今日における経済面での国力強化にとっても欠かせない要因だ。その意味でも、キオクシア岩手が大きな成長を遂げることは、多くの人々にとって福音をもたらすことに間違いないだろう。

キオクシア岩手株式会社

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上記内容は BZ空間誌 2023年夏季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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