首都圏
過去最大の新規供給で空室率は上昇も、需要は底堅く推移
今期(Q1)の首都圏大型マルチテナント型物流施設(LMT)の空室率は8.2%と、前期(Q4)の5.6%から2.6ポイント上昇した。その理由は、大量の新規供給にある。今期の新規供給は32.4万坪(11棟)と、四半期ベースで過去最大を記録した(これまでの記録は2022年Q1の9棟、26.0万坪)。そして、圏央道方面や神奈川県湾岸で竣工した大型物件のリーシングが低調だったため、竣工時稼働率は33%と、前期と同様に低水準にとどまったことが空室率の大幅な上昇につながった。
ただし、新規需要は昨年の四半期平均12.2万坪を上回る15.4万坪となり、底堅く推移。首都圏の需要は物流会社が引き続き牽引しており、荷主はEC事業者のケースが多かった。加えて、メーカーやメーカー系物流会社が契約するケースも多数確認された。取扱荷物は日用品や化粧品、アパレル、雑貨、食品、飲料などの消費財のほか、機械・電子部品などもみられ、需要の裾野は広い。
既存物件では、長期で空室が残っていた物件がほぼ満床となった事例や、短期契約だった区画が長期のテナント誘致に成功する事例も確認された。一方で、1年前の2022年Q1に竣工した多くの物件が未だ空室を抱えていることのほか、まとまった空室が新たに複数発生したことなどから、既存空室率(築1年以上の物件の空室率)は前期1.1%から2.5%に上昇した。首都圏の既存空室率が2%を超えるのは2019年Q1以来、4年ぶりである。
首都圏のQ1の実質賃料は4,540円/坪と、対前期比横ばいだった。ただし、立地やスペックによる二極化が進んでいる。空室がほとんどなく今後の供給も少ない東京や千葉の湾岸エリアなどでは賃料が押し上げられている。その一方で、テナントの引き合いが弱く、今後も供給が増える圏央道エリアの茨城方面、圏央道エリアの更に外側の賃料の低い物件と競合する埼玉方面では、実質賃料が低下傾向にある。
Figure 2 : 首都圏 LMT物流施設 需給バランス
続きを見るにはログインが必要です