
安心・安全 という三菱地所のブランドイメージを基軸に、
今後は、自社開発・運営による案件にも積極的な取り組みを。
三菱地所株式会社
都市開発事業部 物流開発室
副室長 前野 進吾 氏
2012年、満を持して誕生したナカノ商会辰巳センター
当社都市開発事業部では、これまでオフィスビルを中心に、商業施設、賃貸住宅、などの収益不動産の開発を行ってまいりました。つまり、土地を取得して、その用地の特性に応じた建物を建て、テナントを誘致し収益を上げられる物件にして、REITやファンドなどの投資マーケットに売却。その資金を次の開発物件に充てるというビジネスモデルで事業を展開しています。
物流施設については、2000年代前半からの主に外資系企業による先進的な大型物流施設の開発を契機として、マーケットが誕生したことから、今日では不動産投資市場の一定のパイを占めるアセットクラスに成長しています。当社としても、時機をみて事業に組み込むことを検討してきました。これまでにもいくつかの案件について入札に参加する等検討はしてきましたが、なかなか事業化に至らなかったというのが正直なところです。
転機となったのは2009年度、「(仮称)辰巳三丁目物流施設開発計画」がスタートしたことです。これは三井物産より共同事業の申し入れをいただき、開発することになったものです。場所は首都高速湾岸線「新木場」「有明」出入口から約2㎞、東京メトロ「辰巳」駅から徒歩約4分に位置する、都心部、港湾施設、空港等へのアクセスに恵まれた立地にあり、9,939.01㎡の敷地面積を有しています。
当初、物流施設開発、及び物流テナントの誘致などのノウハウが十分ではなく、当社にとって初の物流施設開発であるということから社内でも不安視する意見もありました。しかし、三井物産は、物流施設開発について実績があり、これまでもオフィスビルの開発をはじめREITの運用会社に共同出資をするなど、良好な関係を保ってきたことから、当社物流施設1号案件として単独開発のリスクを低減する上でよいパートナーシップを築けること、ナカノ商会への1棟貸し(マスターリース)を前提とするBTS型の開発であるということから、無事にプロジェクトをスタートさせることができました。
最終的には延床面積31,533.50㎡の地上5階建のプランで2011年4月に着工し、2012年2月末に竣工。現在は「ナカノ商会辰巳センター」として3月より本稼働しています。
第2弾案件は国内最大級のマルチテナント型物流施設
さらに2号案件として現在進行中なのが、神奈川県相模原市に開発される「(仮称)ロジポート相模原」です。こちらはラサール インベストメント マネージメント インク(以下ラサール)との共同事業による、国内最大級のマルチテナント型大型物流施設です。相模原市中央区の約9.4ha(約28,500坪)の広大な敷地は、主要幹線である国道16号線、国道129号線への高いアクセス性を備えています。また、東名高速、中央道だけでなく、圏央道(仮称)相模原ICが利用可能になることで、首都圏広域をカバーする物流拠点となり得るポテンシャルを秘めています。
1号案件の着工後、次なる開発用地を検討しているなかで、ラサールから共同事業の申し入れをいただいた物件で、当社にとっては初めてのマルチテナント型物流施設となります。また相模原という立地は、先の辰巳のように従来から物流適地とされてきた場所ではなく、かつ国内最大級となる超大型の物件ということでリスクも想定されました。しかし、今後の物流分散ニーズを含め潜在的に需要の増加が期待されるエリアであること、ワンフロアまとめてお借りいただくことで効率的なオペレーションが可能になること、東日本大震災にも影響を受けなかった堅牢な地盤を持つ土地でありテナントから評価をされ得るエリアであること、また、ラサールがこれまで物流施設開発について多数の実績があることなどを総合的に判断して、共同事業として取り組むことを決定したのです。
ラサールとはこれまでオフィスビルの開発などを通じてお付き合いがありました。今回は物流での共同開発という初めての試みでもあり、オープンに意見をすり合わせてビジネスプランを共有しながら事業を推進していきました。その結果、地上5階建、延床面積約210,000㎡という巨大物流施設の概要も固まり、現在はこの夏の着工に向けて設備面の細部を詰めている状況です(2013年秋竣工予定)。
また、今回の2つの案件が動き出し、今後も開発を続けることを考慮して、今年4月には都市開発事業グループ内に物流開発室を新設し、物流施設開発事業への取り組みをさらに強化していく予定です。
企業カラーの「安心・安全」を礎に最適な物流施設を模索
これまでの案件を振り返ると、最初の「辰巳」は当初からBTS型による開発ということで、当社初の物流施設開発として取り組みやすかったことは事実です。ただし、BTS型とはいえ、未来永劫、契約が継続される保証があるわけではないため、テナントの意見を取り入れながらも、汎用性、さらには開発コストとの兼ね合いに留意しながらの商品企画となりました。物流施設はオフィスビルや賃貸住宅と比較してシンプルであるとはいえ、多様なニーズを持つテナントがいることから三井物産他関係者と商品企画について詳細な部分に至るまで検討を重ねることになりました。
また賃料設定についても、オフィスであれば当社の従前の取組からおおむね各エリアの相場感を把握することができますが、物流施設マーケットは未知の領域だったため、周辺の情報を集めて検討した次第です。用地取得については、BTS型であれマルチテナント型であれ全方向的に土地を探し、立地特性やニーズに応じていずれかの施設形態で開発を進めていくことになります。どのような開発においても共通するのは「安心・安全な施設をつくる」ということです。
当社では、これまで開発してきたオフィスビルやマンション等について、安心・安全というブランドイメージを確立してきたと自負しています。その考え方を、物流施設においても変わることなく維持していくことは言うまでもありません。今後、数多くのテナントと長期間に及ぶ取引関係を積み上げることで、三菱地所グループの物流施設の安心・安全なブランドイメージを、徐々にですが確実に浸透させていきたいと考えています。
総合不動産業の優位性を活かした物流施設開発を推進
当社では、総合デベロッパーとして、長きにわたり、オフィスビル事業や商業施設事業など様々な事業を通じ、テナント企業をはじめ、多くの企業と友好な関係を築いてきました。またCRE営業などにより、企業との太いパイプを持つに至っています。こうした企業の物流ニーズを取り込みながら、事業の拡大を図っていければと思っています。また、土地の取得に関しても、当社としてはオフィスビル、商業施設、マンションなど、多様な土地活用メニューがあるため、多面的に検討できる可能性があると思っています。こうした点を優位性としながら、物流適地における施設開発に取り組んでいければと考えています。
また、これまでの2案件は共同事業によるものでしたが、十分なノウハウを吸収・蓄積した上で、自社開発・運営による案件にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。
江東区辰巳にBTS型物流施設を開発 ナカノ商会辰巳センター | ||
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現在地 | 東京都江東区辰巳3丁目8番5号 | ![]() |
敷地面積 | 9,939.01㎡ | |
延床面積 | 31,533.50㎡ | |
構造 | 地上5階建 | |
竣工 | 2012年2月 |
神奈川県相模原に大型物流施設を開発 ロジポート相模原(仮称) | ||
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現在地 | 神奈川県相模原市中央区田名 | ![]() |
敷地面積 | 94,197.27㎡ | |
延床面積 | 約210,000㎡ | |
構造 | 地上5階建 | |
竣工 | 2013年秋(予定) |