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国土交通省 観光庁 観光戦略課長 河田敦弥氏|INTERVIEW

国土交通省 観光庁 観光戦略課に聞く、インバウンドにおけるコロナ禍の影響とアフターコロナに描く日本の観光業界の姿。

国土交通省 観光庁 観光戦略課 課長 河田 敦弥氏

2022年10月の水際対策の緩和を機に、急激に回復を遂げてきた日本のインバウンド市場。2023年3月には、政府が「観光立国推進基本計画」を閣議決定し、この国の新たな観光政策のビジョンが示された。国はインバウンドにおけるコロナ禍の影響をどのように見ているのだろうか。また、コロナ後の観光業の姿をどのように描いているのだろうか。国土交通省 観光庁 観光戦略課長の河田敦弥氏に話をうかがった。

国土交通省
観光庁 観光戦略課 課長
河田 敦弥

コロナ禍で訪日旅行市場4.8兆円が消滅、日本の主要輸出産業に匹敵する規模

3年余りに及ぶコロナ禍を経て、都市部や観光地に外国人観光客が戻ってきた。外国人観光客が皆無だった1年前と比べると風景は一変。日本政府観光局の発表によると、2023年9月の訪日客数は218万人で、コロナ前の2019年同月比で96%まで回復している。中でも韓国と台湾からの旅行者の戻りが早い。8月に入って日本への団体旅行が解禁されたばかりの中国からも、観光客が徐々に戻りつつあるという。訪日客数が過去最高だった2019年の3188万人に対し、2023年は1月~9月で1700万人超。「年間2000万人はほぼ視野に入ってきており、インバウンド需要が急激に回復していると言えます」と観光庁観光戦略課長 河田敦弥氏は話す。

コロナの感染拡大は、観光業に大きな爪あとを残した。2019年に4.8兆円あったインバウンド消費は、コロナの影響が最もひどかった2021年にはほぼゼロになった。4.8兆円がどのくらいの規模かというと、半導体等電子部品の輸出額(4兆円)や、自動車部品の輸出額(3.6兆円)よりも大きかったのである。インバウンド消費も「海外からの財を獲得する」という意味で「輸出」と捉えると、日本の主要輸出産業をしのぐ規模の市場が一気に消えたことになるのだ。

インバウンド消費が消滅した一方で、コロナ禍での国内旅行市場を下支えしたのは日本人旅行客だった。日本人の国内旅行市場は、2019年の21.9兆円から2021年は9.2兆円へと縮小したものの、これだけの市場規模を維持できたのは、「日本国内の場合、水際対策や法的な強制力が強い移動制限のような外部要因の影響が相対的に小さかったので、少人数での感染症対策に留意した旅行を基本的に個々人の判断で行う傾向にあり、半減したとはいえ人の移動が続いたと考えられます」と河田氏は解説する。

打撃を受けた観光業への支援策として、2020年7月から需要喚起策「Go To トラベル」がスタート。これは、「県民割」「全国旅行支援」と形を変えて現在も一部継続しており、予算がなくなり次第、終了する予定だ。観光業に対する手厚い支援には、「なぜ観光業だけが?」という批判的な声も挙がったが、これについて河田氏はこう説明する。「旅行代金を助成、還元したのは、他の業態よりも優遇していると受け取られたかもしれません。人の移動が経済全体にプラスに働くことを考えると、旅行は消費活動が回復するための入り口です。そこに対して支援を行ったということです」。また、事業主への支援としては、業種横断的支援である「雇用調整助成金」や「ゼロゼロ融資」が実施された。「ホテルや旅館には中小企業が多く、中小企業ほどコロナによる影響は甚大でした。一度観光地のホテルや旅館がなくなってしまったらコロナ後の観光業自体が成り立たなくなってしまいます。事業を継続していただくために、これらの支援策で下支えしていきました」(河田氏)。

インバウンドのエリア別宿泊者数

インバウンド“冬の時代”を経て、インフラ整備が訪日客増大につながった

ところで、日本はいつ頃からインバウンドに力を入れるようになったのだろうか。

日本のインバウンド施策は、2003年、当時の小泉内閣が始めた「ビジット・ジャパン・キャンペーン」が最初である。当時の訪日客数は約500万人。これを1000万人に増やす目標が立てられた。そもそも、なぜ日本はインバウンドに取り組む必要があるのか。その背景には、人口減少と少子高齢化の問題があると河田氏は説明する。「日本人の人口減少に伴い、国内の経済活動も縮小していきます。定住者が減る代わりに、交流人口・関係人口を増やして消費活動を生み出しましょうと。国内旅行者を増やすのはもちろんですが人口減少の中では、海外から旅行客を呼べば効率的という考え方です」。

「観光立国」を掲げて訪日誘致事業や広報活動を展開したが、「2003年から2012年はなかなか1000万人に届かず、冬の時代でした」と河田氏。理由の一つに、訪日側の事情があったという。「インバウンドの一番のターゲットは、近隣の中国や韓国、東南アジアの国々でした。一般的に、その国のGDPが一定程度を超えると海外旅行に出かける人が増えると言われています。日本へのインバウンド促進には、周辺国の経済成長を待つ必要がありました」(河田氏)。

その間に、日本側の受け入れ態勢が着々と整備されていった。格安航空会社(LCC)の就航やビザの緩和を進めるとともに、訪日の一番のハードルとなっていた言語の問題にも取り組んだ。今でこそ地下鉄での日本語、英語、中国語、韓国語の4言語表記は当たり前だが、当時は日本語表記のみで、コミュニケーションがネックとなっていた。公共交通機関における多言語案内もこの頃から始まったという。「こうして少しずつ進めてきたインフラ整備が花開いて、2013年以降の訪日客数の伸びにつながっていきました」(河田氏)。

さらに2013年以降、訪日客が急激に増えたのは、国土交通省の航空局と共に取り組んできた空港機能の強化が大きく寄与している。新千歳空港、福岡空港、那覇空港などの地方空港で国際線の誘致を進めたほか、滑走路を増やして空港のキャパシティ(発着容量)を増やした。羽田空港でも同様に、東京上空飛行を実現して発着容量を増やしてきた。

これらの総合的な施策をベースに、2016年には「訪日外国人旅行客を2020年に4000万人、 2030年に6000万人」を目標に設定。インバウンド拡大への絶好のチャンスとなった東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、東京周辺にはグローバルブランドを含む数多くのホテルが開業したことは記憶に新しい。一時期、日韓関係が悪化した2018年、2019年はやや足踏みしたものの、2019年には3188万人まで訪日客が伸びていった。ここまでがコロナ前までのインバウンド誘致の経緯である。

日本人宿泊者数(2019年同月比)とコロナ陽性者数の推移

宿泊施設の高付加価値化で、持続可能な観光地づくりをめざす

2023年3月、政府はコロナ禍で更新を見送っていた「観光立国推進基本計画」(第4次)を6年ぶりに改定し閣議決定した。コロナ前やコロナ禍の課題を踏まえた新しい計画には、次の三つのキーワードが盛り込まれた。①持続可能な観光、②消費額拡大、③地方誘客促進である。一つずつ見ていこう。

「持続可能な観光」は、コロナ前から言われていたことであり、当時、急激なインバウンドの増大による「オーバーツーリズム」の問題が懸念されていた。一部の観光地では、混雑や観光客によるゴミのポイ捨てなどにより、地域住民の生活に影響が及ぶ事態が発生しており、これらの問題に対してはマナー啓発の看板設置や入域料・入域制限の導入などの対策が取られてきた。加えて、新しい計画では、「観光地や観光産業の再生・高付加価値化」を掲げている。「自然や文化等の保全と観光とが両立し、地域住民に配慮しながら、観光が地域の社会・経済に好循環を生むことが計画の一番の柱です。大勢での団体旅行ではなく、個々人がそれぞれの目的で長期滞在して、自然や文化に触れていただくのが親和的だと考えています。そのためには、地域の観光資源や滞在環境の付加価値を高めていく必要があります」と河田氏。

その対策の一つが、宿泊施設の改修をエリアごとに支援するというもので、コロナ禍において実施された。改修の狙いは、提供するサービスの価値を上げ適正な対価を得て収益力を上げること、そしてその収益が従事者の方々や地域に還元されること。これを観光需要が回復するコロナ後に実現することである。また、観光地の魅力化のネックになっていたのが、廃業したホテルや商業施設などが放置され景観を損ねていた問題である。これらの廃屋の撤去資金も政府が支援することで、魅力的な観光地づくりに取り組みやすくしている。

観光立国推進基本計画(第4次)

一人当たりの消費額20万円が目標、インバウンドの「量から質へ」の大転換

次に「消費額拡大」である。これまでの基本計画では訪日客の目標数が重視されていたが、第4次計画で代わりに重視されているのが、訪日客の「旅行消費額単価」である。これには、「例えば、1、2泊で東京と京都だけに行く人は結果的に少額しか使わないかもしれないが、1週間以上いて他の観光地にも訪れてくれる人はおそらく高額に消費してもらえると思うので、そういった人の満足度を上げ多く訪日してもらえるようにしていきたい」という思惑がある。新しい基本計画では、2019年に約16万円だった消費額平均単価を、2025年には20万円に引き上げる目標が掲げられている。この数字の根拠はこうだ。「早期に達成したいのは、過去最高だった2019年水準(訪日客数3188万人、インバウンド消費4.8兆円)を超えることです。2025年を待たず、2024年にも旅行消費額5兆円を達成することをめざした上で、さらに伸ばしていった水準として、仮に消費額20万円/人で3000万人が訪日すれば、旅行消費額は6兆円となります。コロナ前の最高水準よりもさらに高い水準をめざして、20万円/人という消費額目標を設定しました」(河田氏)。

足元ではどうかというと、2023年の上期(1月~6月)で訪日客数1071万人、消費額2.2兆円となっており、単価はすでに20万円/人を超えている。「政府の早期目標であるインバウンド消費5兆円も年内達成が見込まれており、この数字からもインバウンド需要の順調な回復が見て取れます」と河田氏は話す。

2013年からの訪日外国人旅行者の消費額の推移

地方へのインバウンド誘致が地方活性化のカギを握る

最後に「地方誘客促進」である。東京、京都、大阪のラインには何もしなくても訪日客がやって来るが、それ以外の地方にいかに訪日客を呼び込むかは長らくの課題だった。訪日客の宿泊先は地域によって偏在しており、三大都市圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県)だけで約7割を超えている。訪日客を地方にも呼び込むために、政府は全国から11地域をモデル観光地に選定し、宿泊施設の整備や観光地の高付加価値化を進めていく。モデル観光地の一つ、「東北海道」の弟子屈町(てしかがちょう)の川湯温泉街では、廃業したホテルの跡地に星野リゾートが進出することが決まっている。川湯温泉街は阿寒摩周国立公園内にある。「国立公園は訪日客には魅力的な旅行先ですが、一昔前までは、自然や動植物の保護エリアである国立公園で経済活動をするという発想はありませんでした。今は管轄省である環境省の協力を得て、貴重な動植物を観察するガイド付きツアーを高額少人数制で提供したり、高級宿泊施設の整備を進めたりしています」(河田氏)。

地方への誘客の指標として、基本計画に新たに盛り込んだのが「訪日旅行客一人当たりの地方部宿泊数」である。前述の一人当たりの消費額を増やすには、日本に連泊してもらう必要がある。これまで三大都市圏に偏在していた訪日客の宿泊を地方へ分散させるため、2019年に1.4泊だった地方部への宿泊数を、2025年には2泊にすることを目標としている。「人口減少は特に地方で進んでいます。観光を核として訪日客を地方に呼び込み、地域活性化につなげることが重要だと考えています」(河田氏)。

ここまで見てきたように、日本の観光業の目指すべき姿は、コロナ禍を経て「量から質へ」「都市圏から地方へ」と大きく転換している。インバウンド市場はコロナ禍から見事な回復を遂げつつあるが、観光立国としてさらに持続可能な形で成長していくために、政府は「持続可能な観光地域づくり」「インバウンド回復」「国内交流拡大」の三つの戦略に取り組むとしている。

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上記内容は BZ空間誌 2023年冬季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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