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コロナ禍のオフィスづくり

これからのオフィス、次の一手をどう打つべきか?

コロナ禍のオフィスづくり

コロナ禍、多くの企業が、今後の働き方、働く場についての明確な解答を見出せずにいる。これまで培ってきたセオリーは過去のものとなり、オフィスづくりは手探りの状態。まったく新しい価値観やベンチマークが必要となってきている。今号の特別企画は「コロナ禍のオフィスづくり」と題し、各種データや方法論、ケーススタディから、アフターコロナを考えたオフィスのあり方を探る。

コロナ禍で一変したオフィスのあり方戦略的な変革のチャンス到来

この1年ほど、オフィスのあり方が問われたことはかつてないだろう。これまで必要性が叫ばれながら遅々として進まなかったリモートワークが、否応なしに導入され、その結果としてオフィス不要論までもが、まことしやかに語られるようになった。まだ先の見えないウィズコロナ、そして収束を迎えた後のアフターコロナ時代にオフィスはどうなるのか、次の一手をどう打つべきなのだろうか。

まずは過去から現在、そして未来のオフィスマーケットを見てみたい。オフィスの需給バランスを見る上で最も重要な指標となるのが空室率だが、東京での推移は2012年以降一貫して低下を続けてきた。一般に、空室率が5%を下回ると貸し手市場として賃料相場が上昇し、逆にこれを上回ればテナントにとっては借りやすい状況と言われている。堅調な景気動向を背景に、すでに2015年には5%を下回り、 2019年には1%を切っていた。

だが、コロナ禍により2020年の第2四半期には様相が一変。特に飲食、観光関連を中心に、パンデミックの直撃を受けた企業が、使用しているオフィスの一部を解約するという動きが出始めた。また企業によっては、在宅勤務の導入により席の利用率が減少したことで、一部の床を解約するという動きも少しずつ見られ始めた。その結果、徐々に空室率は上昇しており、賃料相場にも影響を及ぼし始めている。

次に新規供給動向だが、2000年以降の東京の平均供給床面積は年間約18万坪で推移してきたが、2021年、2022年はそれぞれ約10万坪程度で、これまでの平均を大幅に下回る。そのため、コロナ禍が収束して経済が正常化すれば、空室率が低下に転じる可能性は高い。だが、2023年と2025年は比較的大量のビルが完成するため、新築ビルに人気が集まり、既存ビルに大量の空室が発生すると見られている。言い換えれば、テナント側にとっては選択の余地が広がるわけで、今後のオフィス戦略を立てる上で、絶好のタイミングになると言える。

東京オフィス市場の空室率と新規供給

オフィス戦略の最重要ポイントは増員の数ではなく働き方

これまで、オフィス戦略を立てる上で最重要視されてきたのは増員計画だろう。だが、リモートワークが社会に浸透した現在では、オフィスでは何人がどのように働くかを考える必要がある。ここで、当社が実施したアンケートの回答をご紹介しよう。コロナ禍が始まる前からリモートワークを導入していた企業は3割、感染拡大を機に導入した企業が6割で、現在では9割の企業が実施している。これが先に触れたオフィス不要論の要因だ。コロナ収束後も定常的な制度として維持する企業が多いとは思うが、乱暴な言い方をすれば、6割の企業は望んで実施しているわけではないと言える。なぜなら、回答企業の4割以上がリモートワークのメリットとした項目は、わずかに四つしかない。最も多いのは、「従業員の通勤時間の短縮、通勤に伴う精神的・身体的負担の軽減」で9割強。次に「育児や介護との両立の一助となる」が7割弱。「ワークライフバランスを図ることが可能」で6割弱、「業務効率化、時間外労働の削減」が4割強という結果だった。

一方、リモートワークの課題としては、1.従業員同士のコミュニケーション。2.部下・チームのマネジメント。3.捺印。4.心身の健康管理が難しい。5.ペーパーレス化が進んでいない。6.通信環境。7.執務環境の整備。8.働き方・評価制度の見直し、という8項目を、4割以上の回答者が選択している。その中には1や2など、解決が必ずしも容易でないものも多い。さらに興味深いのは、通勤に伴う精神的・身体的負担の軽減がリモートワークのメリットで挙げられている一方で、社員の心身の健康管理が難しいとされていることだ。企業にとって最も重要であるはずの生産性についても、「上がった」との回答と「下がった」が拮抗していた。つまり、その職種、業種、あるいは社員一人ひとりの働き方によって、良い面も悪い面もあるわけで、リモートワークの普及率向上イコールオフィス不要というのは、あまりに乱暴な議論だろう。事実、今後のオフィス床の増減予定についても、「増やす」と「減らす」がほぼ拮抗している。ただし、最も多くの割合を占めたのは、「わからない」との回答だ。つまりリモートワークの導入に加え、さらなる働き方改革を推進する上で、オフィスを含めてどのようなワークプレイスを構築すべきかが、判断できない状況にあると言える。

多様な働き方に合わせて場所を選ぶBORDERLESS WORKという考え方

では改めて、業務内容と場所の関係についてのアンケート結果を見てみる。働く上での8項目のシチュエーションについて、四つの異なる環境のどこが適しているかを選んでもらったものだ。すると、予想通り、クライアントとのコミュニケーションやコラボレーション、あるいは対外的に企業イメージをアピールする場所として最もふさわしいのはオフィスであった。一方、集中したい作業や自己啓発、リフレッシュなどの場としては、自宅やフレキシブルオフィスのポイントが高い。つまり快適に働けるワークプレイスとは、どこか特定の場所ではなく、それぞれの作業に適した、多種多様な環境を選択できることが理想的だと言えるだろう。

コロナ前には、本社を中心に、状況に合わせてサテライトオフィスやプロジェクトオフィス、コワーキングスペースのようなフレキシブルな空間を選択する、というオフィス戦略がすでに見られ始めていた。しかし、アフターコロナの働く場は、これらに加えて在宅はもちろん、通勤や出張における移動空間、旅行中のリゾート地、あるいはカフェやジムといった、多種多様な選択肢の組み合わせが考えられるようになるだろう。つまり、場所の枠がない、リアルとバーチャルの枠もない、ワークとライフの枠もない、シームレスな世界で、生きて働くという考え方。社員一人ひとりが自分らしい生き方をクリエイトする「BORDERLESS WORK」という考え方が重要となる。そして、それを可能にする環境を提供することが、企業には求められるようになる。

オフィス使用床の増減

まずは働き方の多様性を理解し誰にでもわかる言葉に落とし込む

では具体的に、どのようにして最適なワークプレイスを構築すべきなのか。当社では、今後のオフィスの中長期プランを、「働き方の多様性」「オフィスのあり方」、そして「カルチャー」という三つの視点で戦略を立て、実行に移すべきだと考えている。そのための10のポイントを以下に説明しよう。

1働き方の多様性を知る上で、まずは自社特有の、働き方のパターンを「WHO(誰が)、 WHAT(どんな仕事を)、WHERE(どこで行うのがベストか)」で明確にすることが重要だ。それをもとに、出社率や制度の設定、オフィス必要面積の算出、テクノロジー投資などに対する、根拠に基づいた対策構築が可能になる。

2働き方を多様化する理由を議論し、その効果目的と成果の測り方を整理する。これにより困難な改革のハードルを下げ、前向きに取り組みやすくする。

3リモートワークの導入で薄れがちな帰属意識を高めるために、「当社らしさとは何か」という議論を重ね、誰にでもわかりやすく伝えやすい言葉で明文化する。それをワークプレイスの空間や活動に落とし込むことでビジョンを生み出す。

オフィスに必要な要件を整理し最適なスペース配分を割り出す

4次に具体的なオフィスのあり方だが、まずは個人用の「MEスペース」と社員の共用スペースである「WEスペース」の割合を算出すべきだろう。従来のオフィス内は、組織図をそのままレイアウトに落とし込んだものが主流で、「MEスペース」がオフィス面積の約7割を占めていた。だが今後のオフィスは、交流の場である「WEスペース」を増やし、コミュニケーション重視の場所に変えることが重要だ。企業独自のカルチャーに合った「MEスペース」と「WEスペース」の割合を戦略的に算出すべきだろう。

5オフィスに必要な要素を整理し、設計要件をまとめる。リモートワーク導入は、オペレーションコストの見直し、通勤時間削減、オフィス面積最適化などの狙いがある。だが、出社率が30%だからオフィス面積も30%に減らすのは短絡的だ。将来のオフィスに必要な面積を出すには、設計要件をまとめる必要がある。デスクの数や、コラボレーションスペース、偶発的な雑談の場など、どんなサイズのスペースを、いくつ用意したら適度な利用率で運用できるかを計算する方式を用いるべきだ。また、個人作業向けに最適なスペースを用意したり、最速かつセキュリティの高いネット環境、目に優しい照明や適度な空調や温度など、快適な環境を組み込むことも、オフィスづくりの成功につながる。

6持続可能なオフィス運用プログラムを構築する。最低でも3~5年は変更なく、増員計画や組織変更計画を見据え、フレキシブルな働き方の制度と運用ルールをしっかり作ることが重要だ。また、フリーアドレスやABWなどを導入する場合は、一つのデスクを何人が使うかという「シェア率」を想定した設計が必要となる。

7専門家の情報を集める。これまで、ワークプレイス構築のステップを説明してきたが、そこから次第に自社の目指すべきシナリオが見えてきただろう。それをさらに実現に近づけるには、専門家の持つノウハウを活用すべきではないだろうか。

企業独自のカルチャーを支えるエンゲージメントの向上に注力

8リモートワークで希薄となった企業カルチャーを熟成するには、オンラインコミュニケーションを通したエンゲージメント向上が重要となる。手前味噌だがCBREでは、全社員向けのCEOとの対話時間、スキルラーニングのプログラム、素晴らしい仕事をしたチームやメンバーを祝う時間など、様々なイベントを設けている。また部門単位では、ビジネス上の情報交換や、日ごろの悩みを仲間と話し合う機会を設けるなど、オンラインの交流によって帰属意識の向上を図っている。

9企業のワークプレイス構築をリードするCPO(Chief Place Officer)を組み込む。最近、海外では不動産戦略やファシリティマネジメントに関わると同時に、エンゲージメント向上に向けたカルチャー作りをマネージするCPOの存在が注目されている。これは単なる役員ポジションではなく、経営層、広報、総務、IT、人事、経営企画部、タスクチームなどが連携を取り、チームでその役割を果たすこともできる。カルチャーを日々の働き方に落とし込むことで、エンゲージメントの高い組織作りが可能になるだろう。

10社員への影響を考慮した、チェンジマネジメントを重視すべきだ。オフィスの中長期プランを実行に移す際、最も影響を受けるのは社員であろう。彼らの変化がなくては、カルチャーの促進や多様で柔軟な働き方の定着といった目標も、絵に描いた餅に等しい。新しい働き方を、社員が自分事として捉える道のりのガイドを、チェンジマネジメントと呼ぶ。新しい働き方の制度を整え、オフィスという箱を作って終わるのではなく、社員のマインドチェンジにも時間と労力をかけるべきだ。

ここまでオフィス改革の体制作り、議論ファシリティ方法、不動産シナリオ検証、カルチャーをワークプレイスに落とし込む方法などを説明してきた。だが、一般企業の方が、唐突に取り組んでも、難しい点があるのが現実だ。アフターコロナを見据えたオフィスの次の一手を検討するなら、ぜひ専門家であるCBREまでご連絡いただきたいと、切にお願いしたい。

く場所別シチュエーション適正度

※ケーススタディに関しては、後日掲載させていただく予定です。

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上記の記事の内容は BZ空間誌 2021年夏季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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