居抜き移転を成功させるには、スケジュール感も重要です。居抜きで最初にアクションを起こすのは退去テナント。退去企業が普通借家契約の場合、契約終了の6ヶ月前に解約予告をするわけですが、例えば300坪クラスのオフィスでは、契約終了の前に1ヶ月の移転準備や約3ヶ月の原状回復工事の期間が必要です。つまり、原状回復工事の発注は契約終了の4ヶ月前ということになり、正式な居抜きの募集期間は、解約予告から工事発注までの2ヶ月間。その短い間に後継テナントを決める必要があり、決まらなければ当然、原状回復工事をして返却することになってしまいます。
ですから最初にすべきことは原状回復工事の見積もりをできるだけ早く取ることです。契約終了のおおむね1年前くらいが妥当ではないでしょうか。居抜き退去にするかどうかの判断材料であると同時に、失敗した場合に発生する予算を確保するためにも重要なのです。居抜き退去を目指すと決まったら、次はオーナーに打診します。ここでOKが出て、初めて居抜き退去に向けての、後継テナント募集に乗り出せるのです。本来は解約予告後ですが、水面下での動きも重要となります。そして原状回復工事の正式発注までにテナント誘致ができれば、プロジェクトは成功となるのです。
定借であっても、このスケジュールはほとんど変わりません。間に再契約か解約かの交渉期間が含まれますが、後継テナント募集は早めに動くべきなのは当然です。これは定借の契約期間が残っている場合には、より重要になります。自分たちが退去するのが決まっているなら、より早く後継テナントを見つけることができれば、少しでも早く合意解約や転貸できる可能性が生まれる。つまり、残存期間の賃料を支払う必要がなくなり、より多くのコストメリットが発生することになるのです。
より多くのメリットが享受できる成熟したマーケットにするために
ここまで、居抜き退去・後継テナントに関する、それぞれの立場についての多大なメリットと、わずかなリスクについて、そして成功させるためのスケジュール感についてお話ししてきました。しかし、そのメリットばかりを享受しようと、いわゆる“なあなあ”の状態で話を進めると、思わぬリスクが潜んでいるのもまた、事実です。
退去テナントにすれば、オーナーとの交渉や後継テナントとの折衝のほか、譲渡契約の覚書の締結や譲渡品目の記録や確認など、通常の賃貸借契約に加えて行うべき業務があります。この作業をないがしろにすればするほど、後々にトラブルが発生するリスクが高まるのです。ですから、退去するテナント企業はできるだけ早めに行動すると同時に、経験豊富で安心できる専門仲介業者に協力を求めるべきでしょう。特に後継テナントの募集力が短期決戦では大きくものを言うわけですから、慎重にパートナーを選ぶべきです。
居抜きオフィスをマーケットとして見た場合、最大の難点はまだまだ物件の数が少ないことです。常に新しい物件が更新されて、その情報を手軽に入手できるようになれば、より大きく、メリットの多い選択肢になるはずです。そのためには、退去テナントはもとより、入居希望のテナントやビルオーナーの方々に、居抜きオフィスの存在をもっともっと知っていただく必要があります。そして取引量が増えれば、先ほど述べた契約に関わる付帯業務もより洗練され、安心・安全な取引がしやすくなることは間違いありません。
我々一同、少しでも早く、より多くの皆さまに居抜き移転のメリットを享受していただけるよう、精進していこうと考えています。



