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ITソフトウェアベンダ O社

ケーススタディ

2010年4月16日

本社オフィスの移転。それを機に、賃料コスト削減や企業イメージ向上、オフィス環境改善による業務効率の向上など、多くのメリットをもたらすことができる。その一方で、情報管理やスケジュール管理などさまざまな問題も付き物。特に、大規模なデータセンターや特殊設備などをもつ企業となると、一番の懸念点はBCP(事業継続計画)をいかに保つかであろう。一歩間違えると大惨事につながりかねず、移転の難しさは倍増する。

今回は、そうした難問を乗り越え、しかもわずかな期間で移転を成功させた、あるITソフトウェアベンダO社の好例を紹介する。

自社サーバルームがネックに?移転を阻害する、「“BCP”課題」

O社は、自社内に大規模なサーバルームを抱えるITソフトウェアベンダ。現入居中のオフィス賃料削減の為、契約更新が迫った際にオーナーと交渉し賃 料削減を検討したが、思うようにコストが下がらない事が判明。そのため、移転によりランニングコストの削減を目指すこととなった。移転先の条件としては、 企業イメージを損なわず、営業部の希望するエリアであること。しかし、移転プロジェクトを一任された総務部のN氏が1年以上も前から物件探しを開始してい たにも関わらず、移転期限まで残り6ヶ月に迫ってもなかなか条件に合う物件と出会えないでいた。

実は、24時間365日稼働し続けなければならないサーバルームを持つO社だけに、大規模な電力設備を持っているビルへの入居が大前提となってお り、大きな障壁となっていたのだ。N氏は「我々にとってBCP維持の観点における課題が大きな悩みの種だった」と述べ、当時の心境をこう続けている。

「大災害に備えて、24時間まで耐えられる自家発電装置や無停電電源装置が必要不可欠でした。しかし、こういった特殊設備は厳しいファシリティ条件をクリアしなければならず、対応可能な物件の基準やその有無さえ分からない状況でした」。

また、BCP維持に関わる課題の他にもネックとなっていたのが、移転スケジュール。仮に要望どおりの物件が見つかったとしても、電力設備の稼動も含めて、移転そのものをわずか数日で実現しなければならなかった。

最悪の場合は、データセンター事業者へのアウトソーシングも検討していたというO社。いずれにせよ、移転期日を逆算すると決断までの時間的猶予は刻一刻と迫っていた。

コミュニケーションロスの元凶。オフィス環境の改善が急務に

O社の抱える問題はもう一つあった。それはオフィス環境の改善だ。IT企業であるにも関わらず、オフィス家具やレイアウトに規則性がなく旧オフィスは雑然 とした雰囲気。背中あわせに座る社員同士の椅子で通路が通れないほど個人の執務スペースは狭く、業務に集中できない。その上、個人作業が中心となる業種の ため社員同士の横のつながりも希薄となりコミュニケーションロスを引き起こしている状態だったのだ。

移転期限も迫っていた矢先、現入居ビルのオーナーからシービーアールイー(以下、CBRE)の紹介を受け、相談を持ちかけたN氏。物件仲介にとどまらず、 プロジェクトマネジメントやファシリティマネジメントに数多くの実績があるCBREなら、コスト削減を実現させる幅広い提案力とサポート力に期待できるの では、と考えたからだった。

大規模電力設備を持つビルをスピーディに提示!

特殊用途物件や特殊設備物件の情報量も多く、実績も豊富なCBREは、N氏の要望を受けてすぐに、当該エリアで大規模電力設備を保有し、レイアウト 効率の良いビル物件の調査・選定に着手。いくつかの物件の中から、結果、Aビルが条件に適合した。提案の内容は、賃料から電源設備、建物構造、空調の仕様 に至るまで詳細なもので、CBREの仲介部門がオフィスコストや利害関係者の折衝、賃貸借契約の交渉を担当。
また、移転スケジュールや移転工事の調整については、同社のPMC部が担当をし、CBRE内での専門部署の連携が図られることにより、限られた時間の中で効率的な本社移転プロジェクトが立ち上がった。
O社は特にAビルが設備与件と、レイアウトのしやすさも優れていた点が気に入り、話を進めることとなった。

Aビルは他にも金融機関などが入居をしており、通常のビルと比べて特殊設備への対応がスムーズだった。なかなか該当物件が見つからず、その移転スケ ジュール、電力に関する与件整理、予算取り、そして工事工程のイメージができずに苦戦していたのが嘘のような、スピーディな入居、契約、移転計画の決定と なった。

生産性を高めるオフィス環境づくり成功のカギは、従業員の「生の声」に

移転先が決まったところで、次にCBREが着手したのがオフィス改善計画の策定であった。実は、O社は業務拡大に向けて、移転と同時に約100名の増員採用を見込んでおり、合計400名を収容できる新しいオフィスレイアウトが必要だったのだ。

しかし、真の問題は従業員の生産性とコミュニケーションを向上する点にある。そこでCBREは、従業員の意見を基に、働きやすいオフィスを構築するために社内アンケート調査を実施。集計した結果にコスト面の考慮も加えた上で、次の2点を策定・実施した。

1.ユニバーサルプランの導入

組織変更や人事異動などに伴うレイアウト変更にはコストがかかる。特にO社はその業種上、頻繁にプロジェクトチームが結成され、部署をまたいだメンバーが共同で業務に当たることも多い。そこで、机や椅子、什器の規格を統一し、ユニバーサルプランを導入。

PCを持つだけで容易に席移動ができる環境を整備することで、チームやメンバー同士のコミュニケーションを促進し、協創的なオフィスを生み出すこと に成功した。容易なレイアウト変更は長期的な視点でコスト削減効果にもつながる。また、雑然とした雰囲気が改善されることは個々の集中力を高め、業務効率 の向上にもつながるだろう。

2.什器の精査とリユース

また、上記を実施する上で、現在の什器やオフィス機器の精査を実施。再利用できるものはクリーニングをしてリユースを行なうことで、購入コストの削減を図った。

リスクヘッジを徹底的に考えた緻密なスケジュール管理で、短期移転を成功へ!

CBREはリスクヘッジと部門間の情報連携を効率的に行うため、プロジェクトマネージャーの役割を担当していた。スケジュール管理やビルオーナー・協力会社との調整を一つの窓口に集約管理し、全体スケジュールと進捗状況を適時定例会にて確認、報告。
そして、わずか3ヶ月の準備期間と2日間の移転期間しかないO社の場合、肝となるのは綿密なスケジュール管理であり、その徹底を図ったのだ。

例えば、移転期間の連休2日間について、工程を大きく6分割し、それぞれにおいてチェックポイントを設定。通常よりも細かくチェックポイントを設け ることで、移転作業の大幅な遅れを未然に防げるようにした。また、前述のとおり什器のリユースを行うが、それと同時に新規購入もバランスを検討した上で推 し進めた。 新規購入分は移転当日より前に搬入・設置しておくことで、当日は必要最低限の移動に抑えることができ、スケジュールを短縮することができたのだ。

結果、わずか1日間で移転が完了。残りの1日は天災など、思わぬトラブルに巻き込まれた場合のリカバリとして残すことでリスク分散を図った。N氏はこう締めくくっている。

「CBREさんの適切な計画立案によりすべての行程が管理されていたので、安心してお任せし、自分の業務に専念することができました。移転時には、 搬入時に通過する道路状況の把握や各協力会社の進捗コントロールなど、それぞれの工程で漏れや手違いを発生させない徹底ぶり。物件選定からオフィス環境改 善、移転プロジェクトマネジメントまで、一貫してお任せできたのは、関係者と機密性を保ったコミュニケーションを図る上でも、当社にとって大きな助けとな りました」

O社の根幹を支えるサーバルームは問題なく稼働し、連休明けにオフィスは予定どおり開業。もっとも懸念されていたBCPについては、移転先において も運用サイクルを確立することができ、一大移転プロジェクトは幕を閉じた。俯瞰的な視点を持ちながらも、細かなリスクヘッジを行い、賃貸借契約交渉と並行 しながらプロジェクトを行うことで、オフィスのプランや細かいスケジュール、リスクの洗い出しを行う時間を作り出して、緻密なスケジュール調整とタスク管 理につなげた。このことが、この移転プロジェクト成功の最大要因といえるだろう。

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