すでに全国各地に拠点を置く企業はもちろん、企業合併・M&Aに際しての全国拠点の統合・再編、成長著しいベンチャー企業の多拠点一斉展開等々、拠点戦略において、地方中核都市のマーケットを知り得ておくことが必要不可欠なのは言うまでもない。このマーケットの情報とは、決して賃料相場や空室率といった数値だけではなく、むしろ重要なのは、各都市、各地域毎の特性や特色。さらに言えば、街の雰囲気、その地での評価を捉えることが、各都市に最適な拠点を構築する上で最も大切なポイントとなってくる。"土地勘"という言葉が示すように、これらは、あくまでその地に居てこそ得られるもの。東京の銀座や新橋、茅場町であっても、そのイメージはなんとなく掴めるが、札幌の西11丁目、福岡の呉服町といわれても皆目見当が付かない。東京本社の拠点戦略担当者の中には、そんな方も多いのではないだろうか。
今回の特別企画は、東京以外の全国主要都市ビジネスゾーンを一挙紹介。市場データはあえて除き、そのエリアがどのような特色・雰囲気を有しているのかをレーダーチャートで表現した。全国展開企業、これから各地に進出を予定されている企業のオフィス担当者必見の特集。ぜひお役立ていただきたい。
札幌 都市データ
札幌は北海道の政治・経済の中心として発展を続け、現在も人口は増加しており、道内における一極集中の傾向は依然として強まっている。<市の中心部は、大通公園を挟んで北側の駅前通を中心としたオフィスエリア、南側の大型商業施設が集積する商業エリアとに大別することができる現在、この二つのエリアを地下歩道でつなげる事業が2010年完成を目処に進行中であり、さらなる都市の活性化が期待される。求人倍率は、全国の大都市と比較すると弱含みな水準であるが、前述の一極集中傾向の継続、大企業の数、大学生(若者)の数も多く、都市ポテンシャルは高い。またオフィスエリアにおいては、既存ビルの建替計画が複数進んでいる。
札幌 都市データ | |||
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順位 | 調査項目 | 調査結果 | 凡例 |
5 | 人口 (最新9月1日調査) |
1,894,745人 [過去5年間の増減率:+2.7%] |
各市発表の平成19年9月1日人口 過去5年間の増減率は、平成14年9月1日の人口との比較 |
6 | 企業数 | 72,900社 [H13→H18 増減率:-4.2%] |
平成18年事業所・企業統計調査より事業総数 増減率は平成13年同統計調査との比較 |
5 | ワーカー数 | 781,821人 [H13→H18 増減率:-0.4%] |
平成18年事業所・企業統計調査より従業者総数 増減率は平成13年同統計調査との比較 |
5 | 大企業数 (従業員300人以上) |
179社 [H13→H18 増減率:+10.5%] |
平成18年事業所・企業統計調査より 従業員数300人以上の事業所数 増減率は平成13年同統計調査との比較 |
15 | 有効求人倍率 | 0.53倍 | 平成17年度、各市内公共職業安定所における取扱数より |
5 | 大学数 | 0.53倍 | 平成17年5月、文部科学省学校基本調査より |
7 | 大学生数 | 56,215人 | 平成17年5月、文部科学省学校基本調査より |
6 | 銀行店舗数 | 187行 | 平成17年末、銀行協会発表より |
12 | 総預金高 | 7兆2437億円 | 平成17年末、銀行協会発表より |
5 | ワーカー1人当たり 商品販売額 |
1932万円/1人 | 平成16年商業統計調査より 従業者1人当たりの小売業年間商品販売額 |
15 | ワーカー1人当たり 製造品出荷額 |
1733万円/1人 | 平成16年商業統計調査より 従業者1人当たりの製造品出荷額等 |
12 | オフィス店舗ビル 棟数 |
10,638棟 | 平成18年1月1日、各市固定資産概要調書より 事務所・店舗の建物総棟数 なお事務所・店舗とは、事務所、店舗、銀行、百貨店の計 |
5 | オフィス店舗ビル 総床面積 |
4,004,088坪 | 平成18年1月1日、各市固定資産概要調書より 事務所・店舗の総床面積 なお事務所・店舗とは、事務所、店舗、銀行、百貨店の計 |
- | 東京からのアクセス | 空路: 羽田空港-新千歳空港1時間30分 | |
- | 空港 | 新千歳空港 | |
- | 都心から空港までの アクセス・所要時間 |
JR快速エアポート: 札幌駅-新千歳空港駅36分 直通バス: 札幌駅前(ANA前)から約1時間20分 |
※ 順位は、17政令指定都市(札幌・仙台・新潟・さいたま・千葉・川崎・横浜・静岡・浜松・名古屋・京都・大阪・堺・神戸・北九州・福岡)に東京都区部を加えた18都市によるもの。
※ 調査時点で政令指定都市になっていない都市は順位からのぞいている。
※ 銀行店舗数及び総預金高は、さいたま、千葉、川崎、新潟、浜松、堺を除く12都市中の順位。
西11丁目
JR札幌駅から南西に約1キロメートル、地下鉄東西線西11丁目駅を中心とした業務集積エリアである。比較的中小規模のビルが多く、近隣には札幌高等裁判所や合同庁舎、中央区役所等の機関が集積しているエリアのため、テナントの構成としては弁護士や税理士といった「士」業の個人事務所が多いのが特色。
札幌駅北口
札幌駅北口の開発は比較的最近であるため、駅前は平成竣工のビルが多い。
JR札幌駅へのアクセスが非常に良く、同駅を起点に道内アクセスを考える企業にとっては好立地と言える。ただ、オフィス街の範囲としてはあまり広くなく、物件集積度も札幌中心部に比べると低い。また、ここ数年でマンション建設が盛んに行われ、かなり住宅地化が進んだ。
創成川東
オフィス資料や駐車料金が中心部に比較して安く、車の渋滞が少ない等の理由から、移転需要が増えてきているエリア。現在、渋滞緩和、東西市街地一体化。歩車道分離による安全性確保等を目的に、北3条から南5条の間にある二つのアンダーバス連結と向上部を憩いの場とする計画が進められている。完成は2008年の予定。最近はマンションの建設も多く、周辺人口が増加している。
札幌中心部
JR札幌駅の南口から大通公園を越え国道36号線に至る、名実ともに北海道随一のビジネス街と言われるエリア。駅前通を中心に最もオフィスの集積度合いが高く、北海道庁や札幌市役所といった公的機関もこのエリアに所在する。当然ながらオフィス需要も多く、数年後には大型ビルの竣工やJR札幌駅周辺と大通周辺をつなぐ地下歩道の完成も予定されている。
函館
人口 | 290,572人 | 企業数 | 14,764社 (-10.3%) |
ワーカー数 | 119,714人 (-6.0%) |
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函館の業務集積は、函館駅を中心とした「駅周辺」、市電の五稜郭公園前駅を中心とした「五稜郭」、産業道路沿いに広がる「美原」の三つのエリアに分けることができる。「駅周辺」「五稜郭」はオフィスエリアであるが、需要は「駅周辺」よりも「五稜郭」の方が強めと言える。「美原」は幹線道路に面した大型店舗が多く、オフィスより店舗系の需要が多い。今後の動向で注目したいのは、北海道新幹線の新青森~新函館間の開業である。2015年度末の完成を目指して2005年5月より工事が進められているが、開業による実際の影響もさることながら、それに伴う事前のオフィス需要に対する影響に期待したい。
旭川
人口 | 357,279人 | 企業数 | 15,393社 (-9.3%) |
ワーカー数 | 139,691人 (-8.6%) |
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旭川は、商業施設が集積している駅前から、買物公園通りと呼ばれる歩行者専用道路に沿って商業エリアが広がり、買物公園と平行して伸びる緑橋通り沿いと、それと交差する四条通りの一部がオフィスエリアとなっている。道北の拠点として旭川に事務所を構える企業も多いが、最近では札幌へ統合する動きも多々見られ、オフィスマーケットとしては厳しい面がある。そのため、新築のオフィスビルや建築計画はほとんどなく、今後の市場拡大の要素も乏しい。全国的には、最近では旭山動物園の人気が高く、2006年度も入場者数が300万人を突破するといった明るい話題もある。
苫小牧
人口 | 173,888人 | 企業数 | 8,284社 (-9.5%) |
ワーカー数 | 81,081人 (-4.2%) |
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苫小牧は街の中心部に王子製紙の工場があり、古くから「紙のまち」としてその名が知られてきた。ただ昨今は、苫小牧駅前で営業を続けてきた道内大手百貨店の丸井今井やダイエーが2005年に相次いで撤退するなど、一時、駅前空洞化が進んだ。オフィスエリアとしては、駅前から国道36号線までの間と同36号線沿いになるが、需要は必ずしも活発とは言えない状況である。しかし最近では、新千歳空港への好アクセスや、道内最大の貨物取扱高を誇る苫小牧港などの交通利便性が評価され、自動車関連の工場が相次いで進出を決定するなど明るい兆しも見えつつある。