1995年に発生した阪神・淡路大震災から四半世紀以上が経ち、復興を成し遂げた神戸においてはまちづくりが新たなステージを迎えています。神戸市はめざすべき都市像を示した「神戸の都心の未来の姿(将来ビジョン)」と三宮周辺地区の「再整備基本構想」を2015年に策定しました。海と山に囲まれ、駅とまちが近いという立地条件を活かし、三宮駅に降り立った瞬間に訪れた人々が自然とまちへと誘われるような神戸の玄関口にふさわしい三宮をつくろうとしています。
建物とみちを一体整備 にぎわいを創るこれからのまちづくり
三宮周辺においては複数の建替計画が進行しています。これからは単にビルを建てるのではなく、建築物と公共空間を一体的に整備することで、広く豊かな屋外空間を創出するとともに、密を避けながら安心して駅から周辺エリアへ回遊できるようゆったりとした歩行空間や憩いの滞留空間をつないでいくことが重要です。新たなにぎわいや憩いの場を生み出し、「人が主役の居心地のよいまち」を創出していこうとしています。
市民が創る公共空間のかたち 今後のまちづくりの試金石に
昨年春、阪急神戸三宮駅にオープンした神戸三宮阪急ビルとその足元に隣接するサンキタ通りは、沿道の店舗を通り側に開いて配置し、夕方から翌朝まで車両通行止めにしたことでオープンテラスのあるショップが連なるヨーロッパのような街並みが生まれました。コロナ対策のための道路占用特例を活用し、屋外でも飲食を楽しめるようにしました。さんきたアモーレ広場では、昨年10月の供用開始以降、広場を愛する市民有志の方々が主体となり、音楽やダンス、アートといった様々な文化芸術のプログラムが実験的に発信されています。また、広場の運営のあり方についても、積極的な議論が繰り広げられています。その姿勢に我々は感銘を受け、新しいまちづくりに向けての力強い市民の力を感じました。
クルマからヒトと公共交通機関中心へ 魅力ある「えき≈まち空間」を創出
西日本最大級のバスターミナル誕生へ
〔Ⅰ期ビル2027年度頃完成予定〕
三宮には九州、四国方面等への中長距離バスが1日1,700便ほどあり、乗降場が点在しています。それらを集約する新たなバスターミナルの整備計画があり、完成すれば西日本最大級のバスターミナルとなります。2020年4月に国の直轄道路事業として事業化され、バスターミナルに加え、図書館、ホール、オフィス、ホテルなどの複合用途の開発が進んでいます。
官民連携で進めるJR三ノ宮新駅ビル開発〔2029年度開業目標〕
JR三ノ宮駅前においては滞在、オフィス、にぎわいという3つの機能を兼ね備えた高さ160mの新駅ビル開発をJR西日本が進めています。昨年10月にJR西日本、UR、神戸市の3者にて「JR三ノ宮新駅ビル及び三宮周辺地区の再整備の推進」に関する連携協力協定を結び、官民協力の上、神戸の玄関口としてふさわしくにぎわいのあるまちづくりを進めていくことになりました。
さらに神戸市はバスターミナルとJR三ノ宮新駅ビルをつなぐ歩行者デッキも並行して整備を進めています。2027年度以降、これが順次完成すればバリアフリーで東西移動ができるようになり、乗り換えの利便性が格段に高まります。
三宮クロススクエアからはじまる「えき≈まち空間」の再整備
三宮にある6つの「えき」とその周辺の「まち」をつなぐ空間を「えき≈まち空間」として、デザインにも配慮した神戸の玄関口としてふさわしい空間として整備します。その核として、三宮交差点を中心にフラワーロードと中央幹線の一部に人と公共交通優先の空間「三宮クロススクエア」を創出し、人が快適に地上を歩ける空間を段階的に整備していきます。
民間企業とともに 新たな回遊の拠点をめざして
神戸市本庁舎2号館建て替えへ始動〔2027年度頃完成予定〕
本庁舎2号館は、建築から60年以上が経過し老朽化が進んでいることや、阪神・淡路大震災の被害を受けていることなどから、再整備を進めています。本庁舎の立地は、三宮駅周辺と旧居留地やウォーターフロント等のエリアを行き来するための結節点であり、新たな拠点として回遊性向上やにぎわい創出を図る必要があると考えています。そのため、新たに整備する施設は、庁舎機能に加え、にぎわい機能等を持たせた官民連携の複合施設として再整備し、2027年度頃に完成予定です。
庁舎という市職員が働くだけの場にとどまらず、民間の力を借りて、まちの活性化につながるアイデアをしかけていきたいと思っています。
にぎわいをまちづくりの原動力にする ヒトに寄りそう公園へ
神戸市役所の南に位置する東遊園地は「PARK-PFI」制度を活用し、公園内に芝生広場と一体となったカフェやイベント施設を持つ公園としてリニューアルされます。その南には安藤忠雄氏寄贈の「こども本の森 神戸」が今春オープン予定です。
まとめ-さらなる官民連携によるまちづくりへ
三宮再整備では公共空間と建築物の一体整備により相乗効果が生まれようとしています。単なるビルの建て替えにとどまらず、公共空間を民間企業と公的セクターがともにつくりあげていく官民連携の動きが大きな特徴です。2030年頃にはここに紹介した多くの開発が完成を迎えます。これらの動きと連動し、引き続き民間企業側でも様々な開発が進むことを期待しています。