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新たな課題を的確に捉えリスクヘッジできるか否かが
不動産業界の永続的発展の条件

参議院議員
民主党
副室長 大塚 耕平

 

1959年名古屋市生まれ。早稲田大学政経学部卒、同大学院博士課程修了(学術博士、専門はマクロ経済学)。日本銀行に入行し、金融政策の最前線である旧営業局(現在の金融機構局、決済機構局、金融市場局)に長く在籍し、バブル経済の発生と崩壊の過程を実体験。当時のセキュリタイゼーション協議会の立ち上げにも関わる。2001年、参議院議員に初当選。2005年から中央大学大学院客員教授も務める。

大塚先生は日本銀行にお勤めの時代にバブルを経験されたわけですが、当時の諸状況を総括すると。

私は1983年の日銀入行以来、95年まで金融政策の現場にいました。その間、85年のプラザ合意による円高不況があり、その下支えとして低金利政策が行われました。それに伴い、86年頃から企業経営に貧窮した経営者が、会社の土地を不動産事業や売却によって活用するケースが急増し「会社は貧乏、社長は金持ち」といった状況が生み出されました。

やがて「何か変だ」と皆が思い始め、銀行の貸出増加率を調べたところ、全体が1桁の伸びであったのに対して、不動産、建設、ノンバンクの3業種への貸出は30~40%も増加していました。

3業種を中心に土地の値上がりを期待した借入が多くなり、その結果、負債調達コストと事業収益のバランスが崩れ始めました。しかし、この変化を気に留める人は少なかったですね。そこに政府による総量規制と日銀による金融引締が行われて一気にバブルが崩壊し、不良債権処理の時代に突入しました。不動産の事業収益よりも値上がり益に重点を置いていた企業や個人が、その大波を被ることになってしまいました。

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昨今の不動産市況も、同じような状況にあるのでしょうか。

構造的に似ている面はあります。今回の不動産価格の上昇も、基本的には金融緩和がベースにあることは間違いありません。2000年から02年頃までは、実需に基づく底値買いや自己資金での不動産投資が中心でしたが、02年後半頃からは、負債調達による不動産投資が増えました。先日、ゼロ金利政策が解除されましたが、それでも金融関係者の体感イメージとしては、前回バブル期の数倍の「異常な超金融緩和」が継続されているという印象です。

反面、似ていない面もあります。一つは投資対象となる地域や物件が限定されていることです。前回のバブル期のように、どこでも投資が行われ、どんな物件でも値上がりが期待できる状況とは違います。周辺地域への広がりがありません。もちろん、当時の「原野商法」のようなことも現時点では起きていません。

さらに、REITに象徴されるように、個人投資家の資金が大量に流入していることも大きな相違点といえます。

当社のアンケートでは、昨今の状況から「一部にバブルがみられる」という回答が最も多かったのですが。

バブルの定義が明確ではないので、一概には評価しにくいですね。しかし、確かにREITの利回りの低下や、NOI利回りが5%、インプライドキャップレートが4.5%程度と下がってきていますので、過熱感が出始めているのは間違いないでしょう。

ただ、前回バブル期の投資と違って、「土地であれば何でも」といったものではなく、その多くが地に足がついた投資であることは安心材料です。逆説的ですが、だからこそ特定の地域や物件に対する買いが集中し、そうした物件の値上がり感が過熱しています。それがその物件の事業収益性に見合った価格なのかどうか、適正な投資資金の流入なのかどうかという観点からは、懸念材料がないわけではないですね。

局地集中の是非を読みきれないことが、市場で"バブル"の声が聞かれる原因なのでしょう。今後、上昇するエリアが拡大していきそうですが、どの程度の拡大が適正といえるのでしょうか。

昨今の状況を見ると、例えば吉祥寺や柏などのように、郊外でも一定の商圏が形成された地域の中心地は値上がりしています。一方、それ以外の地域、つまりこの15年で疲弊し商圏が崩れた地域の土地は上昇していません。むしろ、値下がりしています。

これは、この15年で国内の社会構造が変わったことも影響しています。その理由は二つありますが、一つは「少子高齢化」。不動産市場はこの点からは縮小均衡に向かっており、商圏の確立していない地域はこれから淘汰されていかざるを得ません。

二つ目は「地域格差」です。例えば、北海道経済は相変わらず低迷していますが、札幌の不動産は値上がりしています。これは北海道経済が低迷する中で、以前は道内各地にあった出先機関が、中心都市である札幌に集中する傾向を強めているからです。だからといって、札幌が今後どんどん発展するかどうかはよく分かりません。この15年間の地域経済の疲弊によって、こうした不思議な現象が起きています。

大量の資金が疲弊しきった市場に注がれ、"いびつ"さが生まれている、といった感じでしょうか。

たしかに資金はダブついています。「何かに運用しなければならないが、商品先物は恐いし、株はすでに持っている。金利がつかない銀行よりREITにでもするか」という投資家が多いかもしれません。ゼロ金利政策が解除されましたので、不動産事業者や投資家の皆さんは今後の潮の変わり目を冷静に分析する必要があると思います。

海外の投資家にとっては、日本はまだ魅力ある投資先であるようですが。

海外の投資家は為替差益に着目しているようですね。彼らはもともと、株や不動産のキャピタルゲインを狙って日本市場に参入しました。ゼロ金利政策が解除され、今後は金利上昇リスクが高まりますので、本来なら投資を縮小してもおかしくありません。しかし、円高が進んで為替差益で儲けることが可能だと考えているようです。

今後の円相場の動きを予測することは簡単ではないですが、日本の景気の改善傾向が続けば円高基調です。もっとも、海外投資家の多くは、現在の日本の景気が異常な超金融緩和政策で下支えされていることを認識しています。景気の悪化傾向が明確になった瞬間に海外投資家の撤退が始まり、一気に円安になる可能性もあります。

前回のバブルの際は、国内資金が中心の不動産投資であり、地価上昇に伴って一段と資金力が高まり、とうとう海外の不動産まで買い始めました。今回は、まず海外投資家の資金が流入しました。続いて国内での負債調達コストがゼロだったことから、内外の投資家が借入して投資を始めました。円安を契機に海外投資家が撤退するとなると、借入して投資を始めた国内投資家だけが取り残されることになります。このように海外投資家の影響が大きいのも現在の特徴ですね。

不動産ファンドの出資母体に外資がかなり含まれていることを考えると、為替の動きには十分注意を払う必要があると思います。

現在の不動産投資はREITに代表されるように証券化ベースであり、換金性が高くリスクが低いと思うのですが。

たしかに、そういう面はあります。しかし、油断は禁物です。

現在、REITの全銘柄の運用状況が良いからこそ、信頼性も高く、流動性が維持されています。しかし、もし一銘柄でも失速すると、全体の信頼性に波及する恐れがあります。その場合、前回バブル期には大口投資家に集中していた不動産の価格変動リスクが、多くの一般投資家に及ぶことになります。この点も前回バブル期との違いですね。

REITの信頼性を判断する際の留意点は二つです。一つはデューデリジェンス。15年前と比べると事業見通しの分析精度が上がっているとはいえ、デューデリジェンスの前提となっている経済指標の予測値はアテにならないのが実情です。デューデリジェンスの結果を過度に信用するのは危険です。

一番重要なのは、不動産価格の値上がり期待の「投機」ではなく、実需に基づく「投資」であるか否かです。デューデリジェンスの結果がどんなに良くても、経済状況が変われば見通しははずれます。しかし、堅実なビジネス、あるいは実需に基づいた不動産事業であれば、経済状況が変わっても相対的に安全といえるでしょう。REITは当初その傾向がはっきりしていましたが、最近では値上がり期待の運用に傾く傾向が強くなっている点が気になりますね。

二つ目の留意点は、海外物件を投資対象にしようとしていることです。これは、先のバブル期と同様に、実態を確認できない物件への投資拡大の予兆といえます。

例えば、投資対象地域として注目されている北京では、現在オリンピックに向けてインフラや施設の工事、高層ビルの建設が急ピッチで進んでいます。7月に訪中した際に中国の政府関係者から聞いた話では、現在建設中の高層ビルの竣工期限は来年12月。それまでに完成しなければ、政府が物件を接収するということでした。真偽のほどは定かではありませんが、万が一REITの投資対象がそんな事態になれば、大きな損失を被ることになります。そうしたいわばカントリーリスクやデューデリジェンスの不確実性を抱えた海外物件を投資対象にする動きが出てきていること自体が、REITが転換期にきている証拠といえます。投資対象の国や地域、物件の限定など、慎重な対応を期待したいと思います。

その他、リスクとして認識しておくべき点はありますか。

不動産だけでなく、金融証券全般についていえることですが、最前線で働いている40歳以下の若い世代は、社会人になってから金利上昇局面を経験していないという点です。これまで業績をあげている若いディーラーやトレーダーは、金利上昇局面でどんなリスクがあり、どのようなリスク回避手段と行動をとるべきかという点について、これから初めての経験をします。経営陣はその点を考慮しながらマネジメントしていく必要があるでしょう。

一般の不動産の買い手についても、長年のゼロ金利政策に伴う影響を指摘できます。昔の感覚だと、金利が上昇し始めれば住宅やマンション購入を急ぎます。しかし、1995年以降、事実上のゼロ金利政策が10年以上続いていましたから、現在35歳以下の第1次住宅購入世代にとってゼロ金利は常識になってしまいました。ゼロ金利は経済が正常であれば二度と起きない事態ですから、ゼロ金利政策が解除されたこの局面は常識的には借り時です。しかし、現時点では借入申込みが殺到する事態にはなっていません。少子化の影響で持ち家を相続して住宅投資が必要ないという世帯が増えているのかもしれません。いずれにしても、現在35歳以下の世代の住宅投資行動は予測がつかないというリスクがあります。サプライヤーの皆さんも、これまでの常識でビジネスを展開すると、思わぬ落とし穴に遭遇するかもしれません。

新たなリスクが顕在化した不動産投資ですが、不動産投資マーケットとして、あるいは金融商品として、永続的な価値を維持するために関連業界に求められることは。

倫理規範やディスクロージャーに対する自主規制、自らを律する自主ルールをつくることでしょう。ここ数年、コンプライアンスという言葉がよく使われます。コンプライアンスは、単に法律やルールを守ることだけでなく、個々の企業が追求する価値や倫理を守ることも意味しています。企業としてやること、あるいはやらないことを明確にするという意味があります。つまり、法律やルール以外にも守るべきものがあるということです。マーケットを永続的に維持・発展させるには、不合理な過熱感が出てきたら、自らクールダウンする業界の自制心が必要です。逆に過熱を継続させるために次々と奇策を弄するのは、一見マーケットを大事にしているように見えても、結果的には悪い方向に進めることが往々にしてあります。業界の自制心が求められる局面ですね。

空室率や需要量、賃料など、投資判断に必要なデータのクレディビリティを高めることも必要でしょう。REITなどによって新たな個人投資家が増えたことから、彼らの判断に資するデータを提供することが、結果として不確実性の高い投資行動を抑制することになると思います。

一方で、これまで日本経済再生のための不動産流動化など、国の政策はうまくいっていたと思いますが。

確かに90年代後半の景気底割れ局面以降の立ち直りのプロセスを振り返ると、REIT等による不動産流動化の施策が牽引役の一つになったと思います。しかし、その背景には、頭に「超」がいくつも付く異常な金融緩和政策が行われていたことを忘れてはなりません。「偽りの好景気」とまではいいませんが、立ち直りのプロセスと現状には明らかにバイアスがかかり、歪みが生じています。

政府には、将来の構造的な不動産需要減少を見越した政策面での対応が求められます。前回バブル期の都心の不動産市況高騰によって郊外にスピルオーバーした需要は、90年代後半から2000年代初頭にかけて都心回帰しました。しかし、今また郊外にスピルオーバーし始めています。だからといって、この局面でワンパターンの宅地造成を進めれば、少子化、人口減少という構造変化を捉えていないことになります。供給過剰を招き、不動産業界の不安定性を高めることになるでしょう。ゾーニングの見直しや新たな宅地造成の抑制など、縮小均衡的な政策を行うことが、むしろ不動産業界や国民全体の利益につながるかもしれません。しかし、従来型の政治構造と行政体質の中では、縮小均衡的な政策パッケージの実施は困難であり、そのことが最大の経済失速リスクといえます。

こうした状況を起こさないために、私としては金融政策の正常化や財政の健全化、不動産投資に対する税制対策などを関係省庁に働きかけていくつもりです。

しかし、市場の繁栄にとって最も重要なのは、繰り返しになりますが、業界自体が自制心を保ち、むしろ行政や政策当局を牽引する業界リード型の政策運営を実現することです。同時に、投資に際しては、今後さらに顕現化してくるであろう様々なリスクを広い視野から分析・認識し、ビジネスの不確実性に対して万全の対応を行うことが求められます。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2006年秋季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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