四電エンジニアリング・中部プラントサービス 2社ジョイントで、知多太陽光発電事業に参画。 長期にわたり継続した発電を実現することこそ、社会インフラであることの使命。
四電エンジニアリング株式会社
執行役員
プロジェクト開発管理室長
綾田 善一氏
四電エンジニアリング株式会社
プロジェクト開発管理室
グループ長代理
寺岡 信氏
株式会社中部プラントサービス
執行役員
営業本部 営業部長
上田 博之氏
株式会社中部プラントサービス
営業本部 営業戦略部
チーフマネジャー
伊佐治 真樹氏
発電所建設・保守に強みの2社が共同出資する太陽光発電事業
― 知多太陽光発電所プロジェクトでは、工事・運用だけでなく、両社ともに出資者として参画されているのが特徴だと思います。まず、このプロジェクトに取り組まれた経緯からお聞かせください。
寺岡●四電エンジニアリング(以下、四電エンジ)は、四国電力のグループ会社として、発電設備・変電設備等の建設およびメンテナンスに従事しています。再生可能エネルギー事業には我々も寄与していきたいという想いがあり、単に発電所を建設するだけでなく、25年、30年にわたり地元と共存する発電所に育てていくために、事業者として出資できる機会を模索してきました。そうした経緯もあり、今回のプロジェクトでは、発電所の建設、メンテナンスに加えて、出資も行っています。太陽光発電事業の出資案件としては、3例目です。
― 四電エンジさんは、愛知県知多市に土地勘はあったのでしょうか。
寺岡●我々は四国に限らず、国内の至るところで建設ならびに事業を行っています。事業に参画するかどうかは、その土地の日射量や天候、災害リスクの有無、さらに工事やメンテナンスを視野に入れ施工能力の高い協力会社が見つかるかどうかを総合的に考えて、判断しています。
― 一方の中部プラントサービス(以下、中プラ)さんはどのような経緯で?
上田●当社は中部電力のグループ会社として、発電所や各種プラントの建設、保守、運転に携わっています。再生可能エネルギー事業への出資は中部電力が行い、我々はその中でEPC(設計、調達、建設)を請け負うというスタンスでしたので、これまで自社での出資案件はありませんでした。今回も、当初は出資までは考えておらず、地元の知多で大規模な太陽光発電事業が計画されていると知り、情報収集を進めていました。情報収集を進めるうちに、四電エンジ様がEPCとO&M(運転、保守点検)で参画されるとわかり、まずは電気工事を請け負わせてもらえないかと打診したのが始まりです。
そのうち、元々出資を検討していた四電エンジ様から「中プラさんも出資しませんか」とお声がけいただきました。運転開始後は四電エンジ様のもとでメンテナンスを担当する予定でしたので、我々もこの長期案件に主体的に関わっていく覚悟から、出資も検討したという経緯です。
― 電力関係のデベロッパーが2社で連携するメリットをどのように考えていますか。
寺岡●実はこれまでも、四国電力管内で我々が対応できないような工事を中プラ様に対応していただくなど、柔軟に連携してきました。中プラ様は我々と業務内容が近く、信頼のおけるパートナーです。しかも、知多市は中プラ様のホームグラウンドですから、現地に精通している中プラ様に施工から運転開始後のメンテナンスまでご協力いただけるのは、発電所を20年間安全に運転していく上で大きな安心材料になっています。また、最終的に共同出資という形になったことで、「我々の発電所」という意識で協力していけるのは大きなメリットだと考えています。
上田●四電エンジ様は太陽光発電や風力発電の実績が豊富で、高い技術力をお持ちです。そのような会社様と連携させていただくことで、互いの技術力を結集し、質の高い発電設備を造れたと思います。
建設地周辺は地元住民の散歩道 丁寧な説明と安全管理徹底で苦情ゼロ
― このプロジェクトを進める上で課題はありましたか。また、それらをどのように解決されたのでしょうか。
寺岡●大きな課題はあまりなかったと思っています。ただ、元々休耕地だった場所を農地転用して進める案件だったため、工事前の許認可関係の確認は念入りに行いました。また、地権者が60名以上に上り、すぐ隣に住宅地が広がる場所でしたので、発電所建設とその後の事業に対して地元の方のご理解を得られるよう、丁寧な説明を重ねる努力をしました。
綾田●発電所の周辺が地元の方の散歩ルートでしたので、工事でご迷惑をかけないよう、安全管理には細心の注意を払う必要がありました。散歩ルートにゴミが置かれたりすると、問題になりますから。結果的に大きな苦情もなく工事を終えられたのは、現場作業員の方々が安全に配慮して作業を進めてくださった賜物ですね。
伊佐治●工事に関しては、四電エンジ様の綿密な工程管理のおかげで、問題なく進められたと思います。課題を強いて挙げれば、今回は特別高圧の設備でしたので、その変圧器を置くための地盤改良やクレーンの配置計画には気を使いました。
― 現地に詳しい中プラさんの土地勘が発揮された場面はありますか。
上田●設置モジュールが約4万枚と膨大な数でしたので、モジュールやケーブルの品質に配慮して、保管場所を工夫しました。また、特別高圧設備には電気主任技術者が必要ですが、当社の資格保持者がトラブル時にはすぐに現場に駆け付けられる体制を取れています。それが地元企業の利点だと思います。
― 今回のプロジェクトに限らず、太陽光発電所を造る上で課題と感じることはありますか。
綾田●東日本大震災以降、原子力発電がストップしたために太陽光発電に注目が集まり、至るところで太陽光発電所が造られるようになりました。短期的視点で考えれば、安価な太陽光モジュールを使い、建設コストを下げて、事業採算性を追い求めることもできますが、それで本当にいいのかは疑問に感じるところです。電気は継続性が重視されるインフラですから、寿命の長い発電所が本来は求められるはず。太陽光発電を金融商品の一つと捉えるより、“価値あるもの”を造るという観点が大事だと思います。
ちなみに、日本初のメガソーラは、1982年(昭和57年)に我々が愛媛県西条市に造ったものです。40年弱が経った今も、その一部が現役で稼働しています。ここまで寿命が長いのは、やはり高品質の国産モジュールを使用していることが一番の要因でしょう。品質のいいモジュールを選んで、20年、30年、40年と寿命の長い発電所を造るのが我々のモットーです。
上田●コスト重視の風潮に対する懸念は、我々も持っています。東海地方にも太陽光発電所が数多くありますが、時々、基礎が非常に簡単に造られている設備を見かけます。基礎工事がいい加減だと、自然災害に遭えば簡単に崩れてしまい、20年間も維持できないことも起こり得ます。
先ほどのモジュールのお話と同様に、コスト優先で基礎工事が疎かになるのも問題だと考えています。当社は、知多太陽光発電所のほかにも、自社施設の跡地や屋上に自社の発電設備を数ヶ所持ち、さらにお客様の設備工事を請け負っていますが、我々もコスト優先ではなく、長く使い続けられることを前提に工事を進めています。
FIP導入で太陽光発電に逆風か!?火力発電の脱炭素化の動きにも注目
― 再エネ促進改正が来年に迫り、FIP制度の新設など再生可能エネルギー事業は新たなフェーズを迎えます。現状の事業環境や課題をどのように捉えていますか。
綾田●脱炭素社会の実現に向けて、政府は2030年の再生可能エネルギーの発電見込みを、2019年度に比べて1.7倍になると試算しています。再生可能エネルギーの比率が高まるのは望ましいのかもしれませんが、その分、火力発電が減っていくことになります。火力発電の減少が、電力の安定供給や経済性の面から考えて本当にいいことなのか、という懸念があります。というのも、自然条件に左右される太陽光発電や風力発電は、供給が不安定にならざるを得ません。こうした“不安定な電気”が使えるのは、“安定した電気”、すなわち火力発電や原子力発電が電力の安定供給の土台になっているからです。CO2を排出するというだけで火力発電を悪者扱いすることが、本当に社会のためなのか、ということは申し上げたいですね。
これから人口減少や高齢化が進む日本では経済が縮小し、同様に高齢化社会を迎えるアメリカの経済も失速していくでしょう。2030年はおそらく、今の社会構造とはガラリと変わっているはずです。その中において、我々日本も国としてエネルギーの需要予測や全体構成を大きく見直す必要があると思います。
上田●同感ですね。既存の火力発電に関しては、なくしていくだけが正解ではないので、いろんな取り組みをしていくことが大事だと思っています。足下では、愛知県にある碧南火力発電所で、石炭にアンモニアを20%混ぜて燃やすことでCO2排出の削減を図ろうという動きがあります。こうした脱炭素社会の実現への取り組みに当社も関わっていきたいと考えています。
再生可能エネルギー事業に関しては、今後太陽光発電に代わり、洋上風力発電が注目されています。今年11月には、秋田県沖と千葉県沖での事業者が公募により決まることもあり、洋上風力発電は今後伸びそうです。我々としては、今後の状況を見極めて取り組みを進めます。
綾田●我々四電エンジも、火力発電所でのアンモニア混焼によりCO2削減に寄与していくことは考えています。
来年4月から導入されるFIP制度に関しては、 FIT制度とは違い売電価格が変動するため、FIT制度と比較すると事業実施に対するハードルが高くなる認識です。こういった中で現在の制度の見直しも必要ではないかと思っています。例えば風の適地である北海道で我々も風力発電を計画していますが、同じように考える事業者があまりに多いために、出力変動緩和対策として蓄電池の設置が義務付けられています。北海道で計画される風力発電には蓄電池が必要で、それ以外の場所では必要ないというのは、公平性が欠けているように思います。それに、蓄電池を設置すると採算が厳しくなるのはどの事業者も同じです。蓄電池設置に対する国の補助があれば、北海道での風力発電がもっと伸びるのではないかと思います。
また、今は誰でも再生可能エネルギー事業に参入できるため、言葉を選ばずに言えば、ピンキリの状態です。それが今は一律に評価されているので、例えば、定期的な安全管理審査で「優良」と判断された事業者には、20年を超えて25年、30年の運転を許可するなど、個別に評価する取り組みがあってもいいのではないでしょうか。再生可能エネルギーを本気で増やすなら、エネルギー事業の新たな体制づくりも必要ではないかと思います。
小型バイオマス発電所による地産地消や大型蓄電池ビジネスに意欲
― 最後に、再生可能エネルギー事業における自社の競争優位性と、今後の成長戦略をどのように描いているかお聞かせください。
伊佐治●長年にわたってエネルギー事業で培った設計、建設、運営のノウハウが我々の強みです。それを活かして、バイオマス発電の領域で、自社設備や他社施設のEPC、O&Mに力を入れていきたいと考えています。自社設備では、現在運営中の7MW(メガワット)のバイオマス発電所に加え、2MWのバイオマス発電所の建設も計画しています。
今、バイオマス発電では、燃料としての輸入材への依存が問題視されています。輸入すると輸送エネルギーがかかり、CO2削減に寄与しないからです。かといって、国内材で対応しようとしても、従来の大規模なバイオマス発電所には膨大な燃料が必要で、それを国内で集めるのは容易ではありません。そこで我々は、年間5千トンぐらいの木材で発電できるような小規模なバイオマス発電についても検討しています。5千トンクラスであれば、バイオマス発電の地産地消も可能です。小規模なバイオマス発電所が各地に造られることで、日本の林業への貢献にもつながるのではと考えています。
綾田●我々は再生可能エネルギー事業において、常にトップランナーであり続けてきました。先ほどお話ししたように、太陽光発電では国内初のメガソーラを建設しましたし、1999年に北海道苫前町で稼働した国内初の風力発電所も我々が設計・施工を手がけました。現在は、鹿児島県にある100%子会社で風力発電事業を行っています。今後も引き続き、太陽光発電ではセカンダリー案件への活発な投資、風力発電では陸上・洋上を問わず新規案件への事業参画を行っていきます。また、蓄電池に関しては、今、稚内で780MWhという世界最大級の蓄電池の据え付けを行っています。そこで培ったノウハウを活かし、デマンドレスポンスアグリゲーターなど大型蓄電池ビジネスにも参入していきたいと考えています。