大量供給と東日本大震災
2008年から2010年の3年間、仙台市中心部では大型ビルの竣工が集中し、5.9万坪もの大量供給があったため、空室率は2010年9月に21.1%まで急上昇した。2011年になると新規需要が急激に上昇しているが、これは東日本大震災による緊急避難的な需要が、築浅ビル中心に集中したことによるものである。翌2012年には二次空室の顕在化が懸念されたが、仙台中心部に緊急移転したのは調査対象エリア外の沿岸部からの需要であったことや、建設業を中心とした新規開設・拡張移転・増床等の復興支援需要の増加により、空室率の再上昇には至らなかった。
復興需要は2012年下期には落ち着きを見せるが、BCPへの意識の高まりから主に2007年以降竣工の築浅大型ビルにニーズが集まり、新規供給が抑制された中で、これらの物件の希少性が増していくこととなる。2013年以降も、サービス業を中心に復興需要以外に起因する成約が進み、空室率は低下傾向で推移。築浅ビルの品薄感が強まる中で、それ以外の大型ビルでも需要を吸収する事例が見られるようになる。
需要は堅調、賃料水準は上昇傾向に
一時20%を超えていた空室率は、2014年以降1桁台で推移。需要動向を見ると、拡張や館内増床、新規開設、市中心部への集約等、前向きな移転動機が多く、郊外に立地する企業が営業活動の強化やBCP対応を目的に、倉庫と事務所を切り離し、事務所のみを中心部へ移す動きも出てきている。また、コールセンター等の進出も活発であり、宮城県や仙台市による企業誘致策の充実が奏功しているものと考えられる。
上記のように前向きな需要が活発な動きを見せていることで、築浅ビルやランドマークビルを中心に順調に空室の消化は進み、市況は好調な動きを見せている。
こうしたオフィスマーケットの流れから、当社データによると、想定成約賃料は今後3年間で約7%上昇するものと予測される。継続する空室率の低下や賃料上昇傾向の先を見据え、今が好機と捉え、移転・進出に踏み出す企業が多く見受けられる。
●オールグレード:オフィスエリアに所在する、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した賃貸オフィスビル 想定成約賃料:共益費込、フリーレント等のインセンティブは含まない
ビル名称 | 竣工年月 | 規 模 (地下/地上) |
延床面積 | 基準階面積 |
---|---|---|---|---|
〔仮称〕野村不動産仙台青葉通ビル | ※2017年 4月 | ※1/10 | ※3,834坪 | ※209件 |
仙台トラストタワー | 2010年 4月 | 0/37 | 37,903坪 | 670坪 |
AER(アエル) | 1998年 3月 | 3/31 | 22,104坪 | 327坪 |
仙台マークワン | 2008年 8月 | 2/19 | 15,097坪 | 360坪 |
ヨドバシカメラ仙台第2ビル | 2012年 3月 | 1/8 | 10,926坪 | 1,008坪 |
仙台ファーストタワー | 2007年 6月 | 2/24 | 8,866坪 | 215坪 |
東京建物仙台ビル | 2009年11月 | 3/20 | 8,620坪 | 322坪 |
東二番丁スクエア | 2008年 7月 | 1/14 | 8,542坪 | 468坪 |
青葉通プラザ | 1996年 7月 | 1/14 | 7,403坪 | 353坪 |
※予定または計画値(2016年3月時点、会社情報および報道情報などによりCBRE作成)