晴海、有明、台場、豊洲といった東京湾岸部はもともと賃料水準が低廉で、大規模・ハイグレードなオフィスが確保できるエリア。
そのためリーマンショック直後は、高騰を続けてきた都心部からの転出需要を吸収し、2008年9月に6%近かった空室率は期を追うごとに低下した。
都心部に設置しておく必要のない管理部門や研究開発部門の分室化や、経費削減に向けた統合移転、重厚長大型産業の都心部からの転出が主たるニーズで、ワンフロアが広く、グレードが高く、さらにコストが安い同エリアが受け皿として最適だったと言える。
ただし空室率が最も低下した3%の水準でも、大型ビルがほとんどを占めるため空室ボリューム自体は大きい。
満室稼働は少なく、いつの時期も、どのビルも、ある程度の空室を抱えるといった状況であった。
昨今は、都心部の相場下落から相対的に値ごろ感が少なくなり、空室率が急上昇。
大規模な移転ニーズはあり契約にも至っているが、供給ボリュームが大きすぎてそれに追いついていない。
今後は、湾岸部でも交通利便性が比較的良好で、さらに職住近接の利点を有する「豊洲」、メディア所在を軸とした独自性と、文化・アミューズメントの側面を備えた「台場」、晴海通りの延伸で、車でのアクセスがさらに向上した「晴海」、規模・グレードに対して、一層リーズナブルな賃料が期待できる「有明」と、各地区の特長を前面に打ち出したテナント誘致が行われるものと思われる。