小誌掲載の「賃貸不動産その動向と相場」において、震災以降エリアを問わず頻繁に目にするようになった「旧耐震ビルから新耐震ビルへの移転」という動向記事。これらは、あくまで弊社営業担当の私見に基づく記述であるが、それでは一体、新耐震ビルと旧耐震ビルとでは、どの程度のニーズの差が生まれているのだろう。全国の新耐震・旧耐震ビルの空室率データからそれを読みとってみたい。
右の折れ線グラフは、全国12都市における新耐震・旧耐震ビルの空室率推移を、震災直後の2011年3月から2012年9月まで示したもの(対象は延床面積500坪以上)。ただし、新耐震・旧耐震の判別は、竣工年(1981年以前以後)のみで行っており、耐震リニューアルの有無については考慮していない。また、新耐震ビル群には、母集団に新築ビルが次々と追加されるため、これらの稼働率が大きく空室率を上昇させる要因となる。これらのことを加味した上でご覧いただきたい。
普通に考えれば「需要を獲得する新耐震に対し、そうではない旧耐震」という構図が想像され、ほとんどの都市でその傾向は見受けられる。ただし、それが単純に「空室率が低下する新耐震と上昇する旧耐震」なのかというと、明確にそのような傾向を示したのは実は横浜と広島の2都市だけである。旧耐震ビルは多くが各都市の中心オフィス街に位置しており、その好立地さと低廉な賃料水準からニーズを獲得してきた。事実、2011年3月時点で新耐震ビルの方が空室率が低かった(ニーズが高かった)都市は静岡だけ。これが、2012年9月のデータでは逆転し、横浜と神戸がいまだ旧耐震の方が空室率が低いものの、東京と京都、名古屋は同水準、その他の都市の空室率は、いずれも新耐震が旧耐震を下回る結果となっている。
先に記したように同数値には新築ビルが含まれるため、東京では2012年の新規供給動向がグラフに反映されてしまっている。また新しいビルと古いビルの選定要因の差は、当然、耐震性能だけではない。そういった意味から、東京主要5区のみ次のような設定でデータを抽出してみた。下記のグラフは、1981年を境に以後10年間に竣工したビルを新耐震、それ以前の10年間に竣工したビル群を旧耐震として空室率推移を比較したものだ。両母集団のビルグレードや立地の差はさほどないと思われるが、やはり新耐震・旧耐震ビルへの需要の差を示す結果が表れている。
東京主要5区
東京主要5区の空室率は、震災直後に新耐震ビルが急低下、旧耐震ビルは上昇を示した。しかし、2012年の新規供給の影響で、一時、新耐震ビルの空室率が大きく上下動。2012年9月期の空室率は、新耐震・旧耐震ビルとも7.2%。
名古屋市
震災以降、名古屋における新耐震ビルの空室率は一貫して低下傾向。2011年3月から2012年9月で、2.6ポイント低下した。対して旧耐震ビルは、2011年中は上昇していったもののその後低下に転じ、現在、新耐震・旧耐震ビルの空室率は同水準。










