天神ビジネスセンターが高稼働で竣工。空室率は6 期ぶりに低下。
想定成約賃料は5期ぶりに上昇
シービーアールイー(株)の調査による、2021年9月期の福岡主要オフィスゾーンの空室率は、前期(同年6月期)から0.2ポイント低下の3.0%と、6期ぶりに低下した。建設・土木関係、IT関連、コールセンターなどの業種を中心とした、拡張・分室の案件が成約に至ったことが、低下の要因と考えられる。
想定成約賃料は対前期比0.2%上昇の16,200円/ 坪( 共益費込)と、5期ぶりの上昇となった。新たに供給されるオフィスが、福岡のマーケットを、全体的に押し上げていることも背景にあるが、堅調なテナント需要が下支えしていると考えられる。一方で、コロナ禍を通じたコスト意識の高まりから、募集賃料が20,000円/坪(共益費込)を超えるオフィスについては、空室が長期化する事例も見られる。
新規供給ラッシュ到来
緊急事態宣言下の今年9月、福岡市が主導する再開発事業「天神ビッグバン」の規制緩和第1号案件「天神ビジネスセンター」が竣工を迎えた。全国的には、新築物件の内定率・稼働率が高くない中、また、コロナ禍で企業の動きが鈍化している状況下でも、竣工時のテナント内定率は約90%と、高稼働を実現した。募集賃料も、福岡のマーケットでは、今までにない高価格帯設定であったが、“テナント内定率約90%”という実績は、その条件設定が、決してマーケットを逸脱するものではないことを表したと言える。改めて、福岡の都市としての強さや、ポテンシャルの高さを示すものとなった。
「天神ビジネスセンター」を皮切りに、福岡では2021年から2025年にかけて、約8万坪の新規供給が予定されている。その多くは、2024年12月期~2025年度にかけての供給になるため、2024年9月期までの影響は限定的と考えられるが、ここ5年の間に、新規供給だけでも20%近く、福岡のオフィス総面積が増える形となる。
IT関連、コールセンター業を中心に、大型面積を必要とする一定程度の根強いニーズはあるものの、新規供給ビルへの移転に伴う、優良な二次空室の発生など、テナントは選択肢が増え、オーナーは、価格競争につながる競合物件が増える可能性が高い。テナント・オーナーともに、よりよい選択・決定のためには、常に市場の動きを的確に把握する必要があるだろう。
福岡支店 田中 菜津美
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