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2005年10月に施行された物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)。環境負荷低減が主目的だが、法の内容は、現在の物流システムを大きく変えうる影響力を持つ。その概要と、すでに導入事例が出始めている活用例を解説する。

制度内容

どのような計画なら認定されるのか?

大前提

施設の基準(新設・既存は問わず)

 

輸送、保管、荷捌き、流通加工を一体的に行い効率化を図る事業であること。

 
  • 地区要件
    物資の流通を結束する機能を有する社会資本等の近傍(周辺5km)に立地。
  • 設備要件
    仕分け、搬送、荷捌き、情報処理、流通加工の設備を有している。
  • 規模要件
    容積5,000m3以上の貯蔵槽倉庫、容積3,000m3以上の冷蔵倉庫。
    もしくは延床1,500m2以上の平屋倉庫、延床3,000m2以上の多層階倉庫。

物流総合効率化法の認定をうけると・・・

1 税制の優遇がある。

例えば...延床面積1万m2、建物取得費10億円の倉庫で、新設から5年間の合計で
約3,000万円の節税効果(法人税、固定資産税、都市計画税)が得られる。

2 事業許可・登録の手続きが簡略化される。

3 金融支援・低利融資が受けられる。

4 これまで建設が困難だった市街化調整区域での開発許可について配慮される。

物流の効率化に有効と認定された計画であれば、開発許可が下りる可能性が出てくる。

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物流総合効率化法、その政策趣旨と現在の状況

国土交通省
総合政策局 貨物流通施設課 松下 雄介

自治体の"横にらみ"となっている、物流総合効率化法への対応

流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(物流総合効率化法)の法案は、2005年3月1日の閣議決定を経て第165回国会に提出され、同年7月15日に成立、7月22日に公布、10月1日に施行されました。

その目的は、在庫管理の徹底による物流コスト低減を通じた国際競争力の強化や、多様化する消費者の需要に即したサービスの提供、地球温暖化防止のための京都議定書の発効を受けて環境に配慮した物流体系を構築することなど、昨今の社会的、経済的事情の変化に対応するものです。法律の内容では、輸送・保管・荷捌き・流通加工等の物流業務を、総合的かつ効率的に行う事業(流通業務総合効率化事業)を定め、この事業の中核となる物流施設(特定流通業務施設)の整備促進を図るため、所要の支援措置及び事業の計画の認定に係る手続きを明らかにしています。同法が有効に活用されることで、高速道路のインターチェンジ周辺など物流適所に、多様な機能を持つ総合的な集約物流拠点が設けられ、交錯輸送のムダを省き、環境負荷の低減に役立ち、さらに、我が国の物流業界の国際競争力アップにつながっていくものと期待しています。

認定の際は、「基本方針に沿った適切な計画か」「総合効率化事業を確実に遂行できるか」「施設が地区要件など省令の基準に適合しているか」「各事業法の許可・登録基準に適合しているか」の4項目について審査されます。そして認定を受けると、事業許可等の一括取得、法人税・固定資産税等の税制特例、立地規制に関する配慮、資金面等の支援といった優遇措置が受けられます。とりわけ注目されているのが立地規制への配慮で、高速道路のインターチェンジや港湾、空港といった社会資本から5km以内であれば、市街化調整区域であっても拠点を構築できる可能性が生まれたわけです。この支援措置は物流業界のみならず、不動産開発業界においても注目されているようです。

2005年末までの認定事例は12件。法案の国会審議における答弁では、年間100件から150件の認定件数の見込みと説明しており、それからするとやや少ない感もありますが、スタートとしてはまずまずと評価しています。基本的に申請があり要件を満たしていれば、比較的短期間で認定を受けることができます。ただし、同法の認定は国が行いますが、建物の開発許可は各自治体に任せられているので、動き出したばかりの法律に自治体が対応しきれるかという課題があることは事実です。現在のところ、事例が少ない中、自治体間でも横にらみの部分もあるやに聞いております。

総合効率化計画の認定事例(2006年2月現在)
管轄
局名
事業者名 特定流通業務施設の所在地 認定日 社会資本
からの距離
関東 (株)ジェービーエス
(株)ビックカメラ
東京都板橋区前野町4-22-17 2005年
11月11日
I.C.から2.0km
澁澤倉庫(株)
澁澤陸運(株)
千葉県千葉市稲毛区長沼原町200-1 2005年
11月29日
I.C.から0.3km
東京団地倉庫(株)
櫻井倉庫(株)
東京都大田区平和島3-4-1 2006年
1月25日
I.C.から1.0km
東京団地倉庫(株)
矢倉倉庫(株)
大東倉庫(株
東京都大田区平和島3-4-1 2006年
1月25日
I.C.から1.0km
東京団地倉庫(株)
醍醐倉庫(株)
醍醐運輸(株)
東京都大田区平和島3-4-1 2006年
1月25日
I.C.から1.0km
日本通運(株)
日本自動車ターミナル(株)
東京都大田区平和島2-1-1 2006年
2月8日
I.C.から1.0km
中部 矢崎総業(株)、翔運輸(株) 愛知県田原市緑が浜2号2-99 2005年
10月20日
工業団地内
福玉(株)、三ツ井運輸(株) 愛知県丹羽郡大口町御供所2-201 2005年
12月9日
I.C.から2.4km
(株)ロジックス、小出運送(株) 愛知県豊田市堤本町油田1-1・2-1 2005年
12月21日
I.C.から2.5km
福井倉庫(株) 福井県敦賀市莇生野78号5-1 2005年
12月28日
I.C.から4.0km
日本トランスシティ(株)
トランスシティロジスティクス中部(株)
三重県四日市市垂坂町字山上谷1340 2006年
1月24日
I.C.から3.0km
近畿 三菱倉庫(株)
菱倉運輸(株)
大阪府大阪市此花区桜島3-42-5 2005年
10月20日
I.C.から1.0km
アートバンライン(株) 大阪府茨木市島3丁目W4街区2-1画地 2005年
1月2日
I.C.から4.0km
三井倉庫(株)、
(株)サン・トランスポート
大阪府摂津市烏飼上2-3-23 2005年
12月19日
I.C.から3.5km
(有)滋賀鶴見運送 滋賀県東近江市今代町字栗林516-4 2005年
12月28日
I.C.から3.0km
九州 株)八木運送 熊本県上益城郡益城町古閑131-14 2005年
11月16日
I.C.から0.5km
センコー(株) 福岡県福岡市東区箱崎ふ頭5-1-40 2005年
11月28日
I.C.から0.5km

 

開発許可後の転用狙いは許されない、認定後の報告義務もあり

同法の認定を受けることで、市街化調整区域内への施設建設の可能性が出てくるということは、実現できれば、企業にとって比較的安価な土地を獲得できコスト競争力を持つことになります。しかも、国税と地方税の優遇がある。高度化融資については、今のところ低金利が続いていますから、企業としては、さほど魅力とは感じていないかもしれません。ただ、高度化融資を受けて行う事業は開発許可が出やすいという面もあります。そのため、融資そのものが魅力というより、許可を得る手段として融資を検討する企業が多いと聞いています。また、国が認定した事業であることを、営業活動上のアピールとして使うことを検討している企業もあるようです。

さて、同法における企業の一番のニーズですが、やはり開発許可にあるだろうと考えています。ただし、繰り返しになりますが、これは都市計画との兼ね合いがありますから、自治体としては物流の効率化が図れるというだけで、すんなりとは許可できないものとなっています。制度上では、同法の認定前に国から都道府県知事に意見照会を行い、不適格なものに歯止めをかけることとしていますが、物流総合効率化法が先か、開発許可の目処が先かという点については、実際の運用面で調整が必要なポイントとなるでしょう。

そして、もう一つ配慮が必要なこととして挙げられるのが、法律の悪用を防ぐという視点です。自治体が開発許可を出す場合に重視するのは継続性でしょう。ことに転用については、厳しく審査していると思います。と言うのは、入り口だけこの法律を使い、建物を建てた後、あるいは開発許可を得た後、全く違う用途で使用するなど悪用されることがあってはならないからです。他方、物流総合効率化法の認定を受けた進出企業の撤退や、何らかの不備があり認定が取り消しになった場合における開発許可の取り扱いについては、今後の動向によっては何らかの手当てが必要になってくるかも知れません。

もちろんこれは、まっとうに流通業務総合効率化事業を実施する企業を排除しようということでも、荷主が変わっていくことに縛りをかけていこうというものでもありません。この法律では設備要件を規定し、基本方針は「輸送、保管、荷捌き、流通加工などを総合的に実施する施設」という内容になっています。となると、施設建設のため事業主はかなりの投資を行うことになるでしょう。当初から転用狙いで施設整備をするということは実態上は想定しにくいのではないかと考えています。加えて、認定後5年間は事業の実施に関する報告義務が課されています。

また、例えば「複数テナントが入居する営業倉庫を同法に適用させるにはどうすればいいか」などの問題が出てくるかと思いますが、基本的にはテナントの数だけ申請書が必要ということになります。事業者にとっては少々面倒なことになりますが、法の精神を活かした運用をしていくこととなるでしょう。

様々なプレーヤーを応援する、荷主、事業者、地域、環境と一石四鳥の施策

物流総合効率化法自体は、決して大企業向けのスキームではなく、中小企業も含め、ディベロッパーと物流事業者がアライアンスを組んだり、中小企業の共同事業が出てきたりといったことを期待しています。しかし、残念なことに、このようなケースはまだ事例がありません。中小企業の場合、設備、機器などを共同で整備することによるイニシャルコスト及びランニングコストの削減、保管費や在庫コストの削減も可能となるなど、大きな成果が見込まれます。共同事業ではありませんが、これまでの認定の中にも中小企業の実例がありますから、物理的に活用できないといったことはないでしょう。今後も、物流事業者の大半を占める中小企業の取り組みを応援していく所存です。

また、運送系の業者がこの法律を梃子に総合物流企業へと飛躍していくことも想定していますし、他産業からの参入など、色々なパターンが出てくることを見込んでいます。運送業や倉庫業といった、個々の機能を持った物流業者が総合物流にシフトすることで、荷主企業は経営資源をコアビジネスに集中できます。これは本業の競争力向上に直結するものです。物流事業者にとって、拠点集約による効率化が大きなメリットをもたらすことは説明するまでもありませんし、これらは環境問題への解決策の一つとして位置づけられてもいます。さらに付け加えるならば、物流拠点となる施設での荷捌き・流通加工分野での雇用創出は、地域活性化にもつながると言えるでしょう。

現時点においては、この法律を活用して中小の物流事業者が総合物流に進出するという動きはそれほど多いわけではなりません。しかしながら、こちらに寄せられる相談件数はかなりの数になっていますし、地方自治体内では、申請希望者からの問い合わせの増加により、同法に関係する開発許可に関する内規の見直しに着手するといった動きも出てきています。今まさに、施策が軌道に乗りつつあるといったところではないでしょうか。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2006年春季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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