業務内容の異なる拠点の統合に加え、
さらに新機能も付加するという複雑な物流・品質管理拠点の構築。
プロジェクトマネジメントに求められるのは、物流不動産への豊富な知識と、的確な提案。
そして、確実な業務遂行能力。
ネットワンシステムズ株式会社
サービス事業グループ
参事 磯崎 洋一 氏
スピードアップと コスト削減のために異なる機能の施設を統合
2013年1月、当社は「品質管理センター」及び「品質管理センター別館」と、「サービス品質センター」の3ヶ所を統合移転し、東京都大田区東海のGLP東京内に新たな形で「品質管理センター」を開設しました。
従来の「品質管理センター」の機能は、メーカーから入荷した製品を専門の技術者が独自の検査体制のもとに検査し、良品と確認された製品のみをお客さまに出荷するというものでした。この検査により、メーカーから製品を入荷したときには1~3%程度ある初期不良率を、約0.1%にまで低減したうえでお客さまに納品することを実現してきました。一方「サービス品質センター」の機能は、メーカーから入荷した保守サービス用部材の品質を検査し、良品と確認された部材のみをストック。お客さまの施設・設備で障害が発生した時には、365日24時間対応で保守部材を迅速に配送するというものでした。
両施設とも、製品の入荷、検品、検査、在庫など、重複する作業が数多くありましたし、また「品質管理センター」は、さらに本館と別館に分かれていたため、一つの製品を両館の間を行き来させなくてはならず、作業時間にかなりの無駄が発生していました。そこで三つの施設を移転統合することによって、重複作業工程を削減し、業務のスピードアップとコスト削減を図ることにしたのです。また、統合により入出荷エリア等を共用利用できるようになるため、スペースの効率化を実現できるのも移転の狙いの一つでした。
もう一つ、今回の統合に合わせて、従来は当社の「テクニカルセンター」に設置していたプレインストールエリアについても、新「品質管理センター」に移管しました。これは、お客さまに納品する製品群に事前にソフトをインストールし、システムとして稼働確認してからお納めするといった場所で、移転統合前に比べて、約1.5倍の1,800㎡の規模に拡大しています。
プレインストールエリアを移管・拡充した背景には、お客さまの間で製品が納品された後にすぐに稼働可能なシステムを求めるニーズが高まっていることがあります。プレインストールされた製品であれば、お客さま先での構築作業に伴うシステム停止時間を最低限に抑えることが可能になります。そこで移管・拡充によって、入荷→品質検査→プレインストール→出荷の作業工程を迅速に行える体制を整備することにしたのです。
ちなみに新「品質管理センター」は、施設の5階から7階までの3フロア、約1万7000㎡の床面積を誇る施設です。5階は製品・保守部材受入・検品エリア、6階は製品・保守用倉庫エリアや出荷作業エリア、7階は受入検査エリア、出荷検査エリア、プレインストールエリアとなっています。
移転に伴う業務停止を 避けるために PMの専門家の力が不可欠だった
当社はICTの発展とともに、この25年余りで急成長を遂げてきた会社です。そのため組織の規模の拡大に合わせて、これまでも何度か施設の移転を行ってきました。そして移転のたびに、様々なトラブルに遭遇したり、また苦労をしてきた経験があります。
特に今回の移転については、それぞれ異なる機能を持っていた拠点を一つに統合するとともに、「プレインストールエリア」の移管拡充を図るという、これまでにない大がかりなものでした。また経営委員会で統合移転が決定されてから実際の移転までに、わずか半年の期間しかなく、短期間でプロジェクトを遂行することが求められました。そのため統合移転プロジェクトを自分たちだけで進めるのは困難であり、プロジェクトマネージャーの協力を得る必要があることは、当初から認識していました。
特に私たちが絶対に避けなくてはいけなかったのが、移転統合時に当社の業務がストップしてしまうことです。
当社では、お客さまにトラブルが発生した時に、保守サービス用部材を配送し、復旧支援を行うというサービスを実施しています。お客さまの中にはその先のエンドユーザーにサービスを提供されている事業者もいらっしゃいます。もし万が一、移転統合時に当社の業務が停止するような事態が発生すれば、お客さま及びその先のエンドユーザーにも迷惑をかけることになります。ですからこうした事態を回避するためにも、プロジェクトマネジメント(以下PM)の専門家の力を借りることが不可欠であると判断したのです。
豊富な不動産知識を 持っていたことが 選定の最大の理由
今回、PMの事業を行っている会社の中からCBREさんに依頼することにしたのは、物流施設に関する豊富な不動産ノウハウを持っていることが最大の選定理由でした。物流施設や倉庫の場合、賃貸や原状回復に関する概念がオフィスとは様々な面で異なります。その点CBREさんは、私たちが気づかなかった観点から提案をいただき、交渉や契約をまとめてくれました。
また、短い納期という厳しい条件の中で予定期間内での移転を実現してくれたのも、ビジネスという意味では当然とは言え、やはりありがたいことでした。特にCBREのプロジェクトマネージャーの協力なくしてはスムーズに実現することができなかったと思うのが、7階のプレインストールエリアの工事です。プレインストールエリアでは製品群の組み合わせや設定を行うため、たくさんの電源を確保するための電源工事が必要となります。一方で躯体工事やネットワーク工事についても並行で進めなくてはいけませんでした。そうした中でプロジェクトマネージャーが複雑な工事日程を調整してくれ、大きなトラブルなく工事を完遂することができました。
さらに新「品質管理センター」が、大量の電気を消費する性質の施設であるということから、空調機を電気ではなくガスにするという提案も行ってくれました。空調機を電気にした場合とガスにした場合のそれぞれのコスト試算をしてくださったのです。そのシミュレーションを見ながら、最終的に我々のほうで空調機はガスにするという判断をしました。 もちろん物流施設の移転統合は、プロジェクトマネージャーに完全に任せきりではうまくいきません。私たちもマネジメントチームの下に四つのタスクチームを設け、明確な役割分担のもとに各メンバーが移転準備を進めてきました。
プロジェクトマネージャーには不動産や施設工事に関する専門的な観点から提案やアドバイスをしていだだき、我々はその助言をもとに迅速に意思決定をして実行に移す。こうした連携体制をうまく組めたことが、今回の移転統合プロジェクトを円滑に進めることができた一番の理由だと考えています。