世の中、需給バランスがひっ迫すればモノの値段が上昇し、緩めば低下するのは自然の摂理。そして、今、物流業界を取り巻くコストが厳しさを増す状況にあるのは、業務に携わる方々が、皆一様に感じているところではないだろうか。物流コストは、大きく人件費、輸送費、そして施設費に分けられるが、それぞれが明らかに上昇基調にある。
まず人件費だが、直接物流を担うトラックドライバー不足の問題はもとより、昨今は物流拠点を考える要素の中で、庫内ワーカーの人材確保とその人件費が非常に重要な項目となっている。「働き甲斐のある」「働きやすい」ハイグレードな物流施設、通勤の利便性の高い物流施設は、他の施設に対する大きな差別化要因となるほどだ。特に、アパレルなどの比較的多くの人手が必要な業種などでは、人材確保とそれにかかる人件費は、センター運営の成否に関わる重要な課題だと言えるだろう。
輸送費に関しては、トラックの軽油等燃料費の上昇が切実な問題だ。こうした燃料費の上昇に対して、各企業は、輸送網の見直しや共配などの選択を迫られたりしている。また、その一方で、他業者との競争、サービスの維持向上の観点から仕組みの切り替えがなかなか進まないのも事実としてある。
こうした物流コストが上昇する中で、追い打ちをかけるように物流施設の賃料も確実に上昇傾向にある。背景には、物流適地における賃貸施設マーケットのひっ迫、建築費の高騰などが挙げられるが、東京近郊でエリアを問わず上昇しているのは、左記グラフをご覧いただければ一目瞭然である。
個々上昇する物流コスト。しかし、それをトータルした売上高物流コストの比率は、近年、5%を切り大きな変動がなく推移している。いや、過去からの流れは、むしろダウントレンドと言ってもいいだろう。このマジックの種は、いったいどこにあるのか?もちろんこれは手品でもなんでもなく、各企業は売上を伸ばしながら、維持しながら物流効率化を図り、または設備投資してオートメーション化やネットワークの改善を進め、そして物流拠点の集約統合、配送時間短縮を目指して拠点見直しを行ってきたことの結果に他ならない。
今号の「物流マーケット情報」では、このような物流を取り巻く状況を荷主の視点から調査・分析し、的確なソリューションを提供する物流コンサルティング会社3社に取材し、昨今の市場と荷主の変化と、そこで求められる物流施設のあり方についてまとめてみた。