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地方都市の目指すべき方向とは

競争力あるREIT設立で、地方経済活性化の起爆剤となる

全国市長会会長
金沢市長 山出 保

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東京では市況回復の感が見えてきていますが、地方都市の現状はいかがですか。

底を打ったとの声も聞かれますが、まだ、本調子ではないというのが正直なところでしょう。例えば地価など、下げ幅こそ縮小しているものの低下傾向は継続。これには二つの側面があって、地価が下がることで、まちなかへの進出が容易になるというメリットと、担保価値の減少というデメリットが挙げられます。地方都市としては、ここはまず利点を活かし、外から企業を呼び込んだり、また、例えば中心市街地におけるSOHO支援など、地元ベンチャーを育て街を元気にするチャンスと考えるべきです。

チャンスを活かすために、どのような施策を行うべきでしょうか。

金沢では都市機能の強化と中心市街地における経済活動の活性化を図るため、オフィス進出やオフィス機能向上に対して支援を行っています。さらに、"ふらっとバス"やバスレーンなど公共交通の利便性向上、美術館新設など文化芸術の振興、商店街活性化、ITやCG、アニメ業界の振興をバックアップ。また、これらと並行して、商業施設の立地誘導や戦災に遭わなかった情緒あふれる街並みを保存したり、景観に配慮して道路標識の大きさや色彩変更を行うといったことも重要な施策の一つです。これらを徹底するために景観の形成や用水保全、市民参画のまちづくりのための17の条例をつくり、市民が愛着を持てる街を育て、その特色をさらに強めることで他の地域との差別化を図る。地方都市が活性化し、街が元気になっていくには、やはり人真似ではないもの、オリジナリティあるものを打ち出していくことが不可欠といえます。

成果は出てきていますか。

色々と手を尽くし、やっと兆しが見えてきたところといえます。街の活性化には決定打があるわけではなく、明確なビジョンに基づいた細かい政策の積み重ねとマッチングが大切です。その意味で、日本では都市計画が土地政策と一致してこなかったことが、今、大きな問題となっています。これまで日本の都市計画のモデルは、アメリカのロサンゼルスなどでした。郊外で快適な生活を送り、ハイウェイで通勤、オフィス機能は街にあり、職住分離がキーワード。そして、これが理想像だと人は郊外へ出ていったのです。店舗も駐車場を備えた大規模郊外型となり、ますます郊外へいく。その結果、起こったことがまちなかの空洞化です。しかも、大型店舗は土地を自己資本にしません。利益が出なくなればすぐさま撤収で、残された自治体にとって、この後始末が大変なことになります。他方、ヨーロッパは職住近接、親しいコミュニティが存在し伝統が息づいています。今後は、こうしたヨーロッパ型のまちづくりにも目を向けていくべきでしょう。

金沢には伝統工芸品が多く、産業としても、 ヨーロッパモデルが通用しそうですね。

今春、エルメスを訪れてきました。本店で最高経営責任者(CEO)と懇談した時に、「こちらは馬の鞍からバックを作り、世界に通じるブランドとなりました。私の金沢はかつて侍が治め、必需品であった馬の鞍をつくっていた漆、象嵌が産業として育っています。ルーツは同じですね」と話したのですが、今年の秋には、今度は彼らが金沢にやってくることになっています。伝統的工芸品の工房など、たくさん見てもらいたいですね。そこから新たなコラボレーションや、製品が出せるヒントが生まれればいいと思っています。金沢には友禅染、象嵌、漆、九谷焼、和紙、箔など伝統的な産業は数多くありますが、これが世界に通用するかというとそうではありません。友禅染にしても、その柄はいまだに花鳥風月です。これを新しいデザインで新たな製品に置き換えたらどうなるでしょう。着物だけではない、ドレスにすれば世界が評価し、新しいビジネスの可能性が出てくる。こうしたことを考えているのです。

これらの伝統産業が、時代に即した産業になるために必要なものとは。

まずは、ファッションとデザインでしょう。金沢は繊維で有名ですが、昨今は中国に押され元気がありません。これはどこでも同じです。しかし、金沢オリジナルのデザインを生み出すことができれば、事情はまた違ってきます。デザインというと、アパレルやテキスタイルに限定されると思われるでしょうが、その概念はもっと幅広いもの。アクセサリーや日常食器、雑貨など、生活用品すべてが含まれます。このたび金沢美術工芸大学で、大学院にファッションデザインコースが設置されました。まちなかには"21世紀美術館"を新設し文化の拠点としていますが、これらをビジネスと結びつけていかなければなりません。そこで"ファッション産業創造機構"を設立し、その橋渡しをしようとしています。

デザインという抽象的な概念がビジネスとして成り立ち、地方都市活性化の起爆剤になり得るのですか。

これは、私も色々な人に意見を聞きました。金沢美術工芸大学の先生にも、金沢に本社を置くアパレルメーカーの経営者にも。だれもが「できる」と断言しています。ヨーロッパの一流ブランドも、ファッションをビジネスとしてグローバルに成功させています。金沢ではファッション産業都市宣言をしていますが、リソースを活かし、繋げ、独自のデザインを生み出していきたいのです。金沢発のワールドワイドなブランド誕生も、十分狙えると思っています。他方、繊維機械の部品をつくっていた人たちが、次々と新しい製品開発にトライしている。例えば回転寿司のコンベヤシステム、瓶詰め機や豆腐つくり機、垂直搬送システムなど、ユニークなものばかり。こうしたポスト繊維の産業が育ちつつあることも心強いですよ。

魅力的な街並み、デザイン性あふれたファッションビジネス、豊かな食文化。 街を活性化させる要素は観光にもプラスに働きますね。

もちろんそうですが、観光立市だけが金沢の目指すところではありません。むしろ、学術文化都市を目標とすべきです。また、企業城下町でも困る。これまでの都市の盛衰を見れば一目瞭然ですが、一つの業種や企業に依存するのでは、それが傾いた時に街自体が共倒れしかねない。とても怖いことです。とりあえず目先の"売り"を活かせばいい、大企業を誘致すればいいでは継続した街の活性化は成し得ません。先ほど申し上げた、多彩な施策とそのマッチングによる街の内面の育成、そして多様な業種構造を成り立たせることが、"強い街"をつくり上げていくものと考えています。金沢に行ったらオシャレなものがたくさんあった、色々なものがいいデザインだった、魅力ある街並みと文化、そして美味しいものがあった、その結果として「また来たい」と思われるならば、本物の賑わいに繋がっていくといえます。

その他、地方都市が持続的な発展をしていくためには、何が必要なのでしょう。

結局のところ、住民も含め自らが街をつくりあげていくという信念、その街への愛着と将来へのビジョンを持つということに尽きると思います。先に挙げた単なる観光都市や企業城下町にはそれがありません。加えて"自立"は欠かせない視点です。金沢の場合、景観や伝統産業、芸術文化などの恵まれた資源があり、とても幸運だと思いますが、そのなかで守るべきものは守る、伸ばすものは伸ばすという姿勢を貫いています。もちろんですが、民においても官においても、これらを十分に理解した上で街の進展を担う人材の育成が、今後必要になってくるでしょう。

最後に、金沢の10年後のビジョンはどうでしょうか。

金沢には10年後に新幹線がやってきます。ストロー現象を心配する声もありますが、東京からは名古屋や新潟よりも遠い、大阪より近いという利点を活かし、「仕事で来ても一泊していきたい」と思われる街にしていける。逆にいえば、そういう街にしていけるかどうか、この10年が勝負といえます。まちなかに美術館ができ、美術工芸大学からの人材も輩出。街の雰囲気は明らかに変わってきています。これにファッション・デザイン産業の育成が加われば、さらにテンポアップした活性化となるでしょう。金沢発のオリジナルブランドでの勝機も、きっと見えてきているに違いありません。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2005年秋季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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