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多極的なエリア特性やインフラ整備の進展から拡大を続ける関西の物流マーケット

  • 2024年6月13日

CBRE関西支社 アドバイザリー&トランザクション インダストリアル&ロジスティクス

CBRE関西支社  アドバイザリー&トランザクション   インダストリアル&ロジスティクス

近年、大型マルチテナント型物流施設(LMT)の供給が続く関西の物流マーケット。その範囲はこれまで一大消費地である大阪を中心に拡大し、現在、兵庫・京都・滋賀・奈良方面へ広がりを見せている。その背景を読み解くと、それぞれのエリアの特性のもと、さまざまな条件が重なりあい、物流施設を供給する側とテナント側の両者にメリットが生まれていることがわかる。LMTが新規で投入されるのは、単に広い敷地があるからではない。物流の効率化といった眼前の課題解決をはじめ、さまざまな目的やニーズのもとでLMTは機能している。拡大する関西の物流マーケットの現状とその可能性について、CBRE関西支社のメンバー4名に語ってもらった。

大阪中心部から、東西南北へ供給エリアが拡大

関西の物流マーケットは、過去20年でそのエリアを急速に拡大してきた。【図2】首都圏同様、人口の多い消費地として大きなポテンシャルを有し、食品をはじめ、医薬品、工作機械、部品製造など、メーカーも数多く集まっている。ものをつくる、ものを届ける、ものを売る。地域に根付く「商い」のもと、それぞれの立場から独自に構築されてきた拠点は各所に残りつつ、2000年頃からは海運をメインとする大阪湾沿岸部に物流施設が集積。加えて、新名神高速道路など、道路網の整備に伴って拠点の再配置も始まり、内陸部にも物流拠点が点在するようになった。そして現在、北陸や中四国方面など、広域を視野に入れた物流のハブとして機能している。

近年は大型マルチテナント型物流施設(以後、LMT)の供給が進み、2023年には22.5万坪が竣工、2024年には20.8万坪、そして2025年には、過去最大の39.7万坪という新規供給が予定されている。【図3】そして現在、2025年第一四半期までに供給されるLMTの総面積のうち、すでに62.0%はテナントが内定。【図4】2024年第一四半期における空室率は、前期6.0%から5.3%へと低下した。【図5】

「5.3%という空室率の正体が何かというと、それは2023年に周辺部エリアの外縁部で竣工した物件が抱える空室によるものです。それらは奈良県、神戸市西部、川西市など、これまであまり供給のなかったエリアに位置しています。一方、兵庫県尼崎市や西宮市など、関西の物流の中心部エリアや湾岸部エリアの物件は、満床で稼働中です。さらに、竣工から1年が経過した既存物件に絞れば、空室率はわずか1.2%。供給エリアは拡大しつつも、テナントから見れば選択肢は少なく、賃料も上昇傾向です。【図6】非常にタイトなマーケットになっていると考えられます」(北村)

図1|物流マーケットエリア区分

図2|近畿圏エリア別貸室総面積とその割合

図3|近畿圏のLMTの需給バランス

図2|近畿圏のLMTのテナント内定状況

図5|近畿圏のLMTの需給バランス(四半期)

図6|近畿圏のLMT実質賃料指数

名神と新名神が結節する滋賀県南部

これまで物件の供給が少なかった周辺部エリアだが、テナントの獲得が難しく思われる一方、着実に需要を吸い上げているエリアもある。中でもCBRE関西支社のメンバーが注目しているのが、琵琶湖の南側に広がる滋賀県南部、久御山町や京田辺市を擁する京都府南部、そして奈良県北部だ。これらのエリアの物件が起爆剤となり、それぞれの地域で需要を掘り起こすことで、関西のマーケットが拡大している側面もあるという。

「新名神高速道路が開通し、沿線のインターチェンジ付近で大型物流倉庫の開発が始まりました。滋賀県南部もそのひとつです。昨年も13,000坪の4層ボックス型倉庫が供給され、苦戦が予想されましたが、早々に満床になりました。また、今年竣工した18,000坪の物件も、着工前にテナントが決定しています。新規エリアでの供給でありながら、非常に強く需要を吸い上げています」(北村)

物流マーケットとして滋賀県を読み解くと、その歴史は古く、1960年代の名神高速道路開通まで遡る。滋賀県はもともと製造業が盛んな地域。高速道路が開通するとトラック輸送が有利なことから、大手メーカー各社がインターチェンジ周辺に工場や倉庫を開設した。「自社で所有する施設が多く、しかも大きい。そのような工場や倉庫が年月を経て、拠点分散や老朽化への対応が課題となっています。しかし建て替えるにしても建築費の高騰や企業における財務的な指標改善といった事情から、賃貸倉庫への借り換え需要が膨らんでいます」(澤井)

滋賀県は大都市圏と比較して土地価格が低廉であることから自前の施設が多く、比較的賃貸物件が少なく賃貸需要自体も限定的なエリアだった。しかし、その状況も変わりつつある。「海外生産を国内生産に戻す動きやコロナ禍以降サプライチェーンの維持といった課題が浮き彫りとなり、部品や半製品などを保管する場所の必要性も高まっています。また、工場内の倉庫スペースを生産ラインとして活用するために保管貨物を外部出しする事例もあるなど、賃貸倉庫の需要が一気に上昇している印象です」(北村)

現在、物流施設開発が増えつつある滋賀県南部は、名神高速道路が通るうえ、新名神高速道路も結節するエリア。「新名神は名神と比べて急カーブや急坂が少なく、冬場の降雪も少ないことからドライバーにとって走りやすいという利点があります。また、滋賀県南部からは従来の名神経由で北陸方面へ行くこともできるので、近畿・中部・北陸エリアの結節点にもなりえる立地だと言えます」(北村)

名神と新名神がつながる滋賀県南部エリアは大阪や京都への通勤利便性が高く、関西でも数少ない若年層の人口流入が増えているエリアのひとつだ。働き手の確保に有利な立地にあり、安心・快適に働ける先進的物流施設の登場。そんな背景もマーケットの拡大を支えている。

広範囲への配送を可能にする京都府南部・奈良県北部

久御山町や京田辺市など京都府南部も、道路網の整備に伴うかたちで成長を続けるマーケットだ。中でも第二京阪道路の存在は大きい。京都や大阪の中心部へ行きやすく、接続する京滋バイパスを経由すれば名神・新名神方面へもスムーズ。大阪方面へ向かえば、阪神高速道路にも連絡する。京奈和自動車道を利用すれば、隣接する奈良へもアクセスしやすい。新名神高速道路が全線開通すれば、さらに物流立地としてのポテンシャルが高まる可能性がある。

奈良県北部も、京都府南部と同じく周辺部エリアであることから、空室率が高く、空き物件があると思われがちだが、実はそうではない。「新規LMTが竣工して1年経ちましたが、賃料などの条件をそれほど落とすことなく、順次テナントが決まっています。つまり、一気に満床にならないくらい、大きな物件が供給されたのですが、リーシング状況としてはかなり順調だと感じています。周辺部エリアは、中心部エリアに比べると、もともと賃料も低めです。コストを抑えながらより広域へ配送しようと、周辺部エリアを選ぶテナントも増えています」(濱本)

満床の物件が多く、競争率の激しい中心部エリア

一方、港湾に近い尼崎市などの中心部エリアは、周辺部エリアとは異なり、海上貨物を取り扱うことが多い。大阪や神戸といった消費地への配送はもちろん、広域配送も可能なエリアで、大型物流施設ができるとなれば、すぐにテナントが決まる。賃料も10年前と比べて1.5倍程度になっており、今後もさらなる上昇が見込まれる。「先進的なスペックを備える物件なら、すぐにテナントが決まるのが尼崎です。決して賃料は安くありませんが、施設を使う物流会社や荷主企業も、効率的に事業を展開できることや、働き手に好まれる労働環境を整えることを重視し、必ずしもコストだけで物件選定をすることはなくなってきています。施設側も倉庫内に空調を実装し、共用部分の充実を図るなど、付加価値をつけることで賃料上昇に対するテナントの納得感を引き出す努力をしています」(北村)

先進的物流施設のニーズは、10年前と比べても明らかに高まってきている。「人口の減少もあり、物流の機械化、DX化はさらに進みます。今後はそのような変化を前提に、規格化されたLMTが登場するかもしれません。ただし、現状はまだまだ人の手もほしい過渡期といえます」(土居)

尼崎市と西宮市はJR・阪急・阪神の鉄道3路線が通り、人が集まる大阪市や神戸市も近い。海運の需要にプラスし、働き手も確保できる。過渡期のいま、そのような点もニーズを集める理由に挙げられる。

物流や社会が抱える課題の解消が新たな需要の源泉に

近年、2024年問題などにより物流拠点を再配置する動きが見られるなか、西日本の拠点として関西を希望するケースは多い。【図7】また、今後3年間の拠点計画について調査したところ、拠点数や面積の拡大を検討している企業は多い。【図8】そのようなニーズの受け皿となるのが、LMTのような先進的物流施設だ。しかし、LMTの供給が全国的に増えているとはいえ、そのストックは、それ以外の倉庫も含めた全体の10%に満たないのが現状だ。「関西のLMTは全体の8%で、大半は旧型の倉庫です。【図9】古い物件は、業務の効率化に向けて最新の物流システムを導入しようとしても、必要なスペックを満たしていない場合もあります。そのままでは働く人の負担も大きく、雇用の面でも不利になると考えられます」(濱本)

近畿圏の倉庫全体の床面積は2,500万坪。そのうち750万坪は、1981年以前に建てられたという調査結果*3もある。「つまり、全体の30%が旧耐震基準で建てられた倉庫です。しかも当時は数万坪クラスの大型物件はなく、中小規模の倉庫が中心で、企業は保管拠点を分散せざるを得ない環境で物流を運用してきました。そのため、BCP対策の観点や分散拠点の統合先として大型の先進的物流施設に需要が集まり、古い物件からの借り換えが増えています。また、コロナ禍による国際的なサプライチェーンの混乱や円安によるものづくりの国内回帰もあり、製造業を中心として国内在庫を増やす傾向があるようです。近畿圏の倉庫面積2,500万坪に対し、仮に全体で在庫が1%増えただけでも、25万坪の保管スペースが必要になります」(北村)

「オーナーが建て替えを検討しても、高騰を続ける建築費に二の足を踏む。土地はあるのに建物を新しくできないなど、建て替えも難しくなっています。そのため、自社倉庫から賃貸倉庫へ移転せざるを得ないケースも生じていますね」(土居)

さらに、物流の機械化、DX化への対応や建物の老朽化【図10】、人材の雇用など、課題は多く、一方でそれらが新たな需要を生み出す源泉にもなっている。

「関西では、2025年にLMTが過去最大の39.7万坪供給される予定です。空室率は一時的に上昇すると思いますが、需要は十分に見込めます。また、阪神高速大和川線や淀川左岸線など、高速道路の整備も進められており、開通すればさらに新たな需要が生まれるかと思います」(澤井)

図7 | 物流拠点として希望のエリア〔都道府県〕(複数選択可)

図8 | 今後3年間に優先または重視する施策(3つまで選択可)

図9 | 倉庫の総床面積に占めるLMTの面積割合

 

図10 | 全国の倉庫着工面積の推移

先進的なLMTの供給でさらに可能性が広がるマーケット

施設の開発を手がけるデベロッパーやオーナーから見れば、今後も需要が見込める関西の物流マーケット。LMTが供給されることにより、これまでタイトだったマーケットで選択肢が増えるため、テナントから見れば、理想とする物流拠点の構築や人材獲得のチャンスが生まれるだろう。また、物流の効率化に向け、機械化やDX化が進むなか、それらに応えられる先進的なLMTの需要が伸びていくのは必至と言える。エリアを拡大し続けるとともに、大きな可能性を秘める関西の物流マーケットのこれからに注目したい。

*3)国土交通省資料よりCBREリサーチ推計 2023年3月

*1)CBRE 近畿圏LMT調査 概要

対象 延床面積10,000坪以上〔原則として、開発当時において複数テナント利用を前提として企画・設計された施設〕
エリア 大阪府、兵庫県、京都府を中心とする地域(82棟)
空室率 2024年3月末時点集計(新築施設は竣工済のものが対象)

*2)物流施設の利用に関する意識調査2024 概要

調査方法 WEBによるアンケート調査
調査期間 2024年2月27日~3月12日
対象 CBREインダストリアル&ロジスティクス営業部が名刺交換をした物流施設ユーザー企業
回答者数 202

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上記内容は BZ空間誌 2024年夏季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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