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不動産価格高騰で郊外移転が加速。多様化する工場立地

丁田 剛

シービーアールイー株式会社

インベストメントプロパティ
シニアディレクター
丁田 剛

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生産拠点の海外移転で不動産価値を失った工業用地

一般に工場用地と呼ばれるものには、民間企業が独自に生産拠点を建設するものの他に、各地方自治体や、国の行政機関が主導となって開発する工業団地があります。世界初の工業団地は、1896年にイギリスのマンチェスターに誕生しました。我が国に上陸したのは1934年頃のことで、東京都大田区の下丸子に誕生したものが最初だと言われています。

行政が主体となった理由は、土地の乱開発防止と合理的な利用、公害防止とともに、雇用の創出や税収の増加、さらには企業城下町の誕生による、住宅地建設にともなう地域発展を目指してのことです。そのため、1960年代の高度経済成長期には、日本全国に内陸型、臨海型、臨空型など、様々な形態の工業団地が造成され、重工業や家電、自動車メーカーなどの誘致が行われてきました。

しかし1980年代に入ると、国内の生産工場を人件費の安い海外に移す動きが顕著となりました。この空洞化の流れにより国内での工場需要は低下し、工場用地の不動産としての価値は、徐々に失われていくことになりました。その後、1990年代後半から2000年代前半には、工場用地を買い求める動きはさらに減少し、取引価格は路線価の半値から7割程度になりました。また、工業団地の開発も鈍化し、すでに造成済みのものも、長年にわたって買い手がつかず、塩漬けとなるような状況が発生していたのです。

物流センターへの転用で大きな転機を迎えた工場用地

ところが、工業団地は2003年に大きな転換期を迎えることになります。その発端となったのが、千葉県成田市の工業団地における物流施設の開発です。この土地は元々、千葉県の工業団地として分譲されたのですが、プロロジスが物流施設の建設用地として購入し、マルチテナント型物流施設が開発されたのです。恐らくこれが、我が国における、工業団地を物流開発デベロッパーが購入した第一号だと思われます。

しかも本来、工業団地は工場や物流センターの実需での購入・利用を想定したものですから、投資目的・不動産活用を目的とした土地利用での売却としても初のケースと言えるでしょう。これを契機に、関東圏、関西圏、中部圏および、福岡、仙台などの主要都市で、次々に工業団地が売却され、LMT(大型マルチテナント型物流施設)に生まれ変わっていったのです。

元々、工業団地は雇用の創出や地域の発展を目的に、不動産的な価値が低い土地を中心に造成されたものですから、売買価格的には廉価なものが多い点も、購入のしやすさにつながっていると言えます。

首都圏 工場の敷地とLMT稼働床面積

この流れは工業団地にとどまらず、民間の工場跡地にも広がっていきました。2007年には日産自動車の、約10万4000㎡の座間工場跡地がプロロジスに売却されたのに続き、2010年には日本ビクターの横浜市の工場跡地、約3万9000㎡がSGリアルティに、荏原製作所の東京都大田区の跡地、約10万2000㎡はヤマト運輸クロノゲートに、それぞれ売却・開発されました。

さらに近年では、横浜市緑区の雪印メグミルク跡地の約3万9000㎡が住友商事に売却、2014年にパナソニックの兵庫県尼崎市の工場では、既存の工場約12万㎡をセンターポイント・ディべロップメントが改修して物流センターに生まれ変わらせる等、物流センターの開発が進んでいます。このように、ここ数年のLMTの規模拡大は、工業団地および閉鎖工場跡地からの変換がほとんどです。

〔図表1〕からも分かるとおり、首都圏における工場、製作所などの事業所敷地面積は、20年前から年々、減少しています。一方、物流開発デベロッパーが建設した物流施設の、関東圏のストックは、ここ十数年で600万㎡を超えているのです。物流施設の容積率は、そのほとんどが200%なので、ざっとみても、この期間内で約300万㎡の用地が開発されたと言えるでしょう。

大都市圏に集中する物流施設が不動産価格を押し上げる

物流施設が、首都圏を中心に開発されるのには理由があります。LMTの主な荷主の1つが通販業者ですが、その注文から配送までの時間はどんどん短縮されています。かつてのカタログ販売等の通販では、注文から商品の到着まで1~2週間かかることもありました。しかし今日、隆盛を極めるネット通販では、早ければ即日、遅くとも1~2日以内に到着するのが当たり前になっています。こうしたサービスレベルの向上を図るには、消費人口が多いエリアの近くに、物流施設を確保することが必要条件となっているのです。

さらに言えば、国内工場での生産品が減少する一方、海外から完成品を輸入するケースが多いため、東京港や横浜港などの港に近いこと、郊外工場の生産品を、都市中心部まで配送するための時間と輸送コストの無駄を削減することも、目的となっています。

このような理由を背景に、物流開発デベロッパーによる、都心中心部での用地確保は、今後も続くと思われます。その流れにともない、かつては路線価の5~7割だった工業団地や工場跡地の土地価格が、今や路線価の倍以上、ものによっては4~5倍で取引されるようになっているのです。これでは、工場建設を目論む実需系の企業には容易に手が出せません。マンション開発デベロッパーと物流施設が競るような工場跡地も増えています。最近、埼玉県で駅から徒歩7分、約7,000坪の、いわゆるマンション立地の土地が、物流施設開発業者に落札されました。

その背景の1つが建築費の高騰です。一般にマンションの建築費は現在、坪当たり70~90万円掛かると言われています。ですから、高額な土地に建設すると、市場の相場観を大きく逸脱した販売価格になりかねません。その点、物流施設は坪当たり30~40万円ですから、立地に魅力があれば、土地代金が多少高額でも割に合うケースがあるのです。物流施設開発業者が、特にここ2~3年、強気の開発ができるのは、こういった事情もあると思われます。

より効率的な運営を目指して郊外移転が加速する生産拠点

一方、民間企業の都心部の工場が、撤退するのにも理由があります。その1つは、施設の老朽化です。さらに、周辺地域が宅地化して騒音や臭いの問題がある、慢性的な道路の渋滞や交通規制、従業員雇用の難しさなどがあります。つまり、既存の敷地に工場を新設して、操業を続けるにはメリットが薄いのです。

では、閉鎖された工場は機能自体がなくなってしまうのか、と言うとそうではありません。その多くが、都心の工場を売却して郊外へ移転しているのです。近年の高速道路の延伸、例えばアクアラインや圏央道などにより、郊外エリアの利便性は向上しています。また、土地の取得単価が安いのも大きな魅力です。郊外へ移転しても、都心の工場跡地を売却した差益で工場の建設から設備投資までを賄えているケースもあるのです。

一例を挙げれば、先述の雪印の工場は、横浜市緑区から茨城県の阿見町に拡張移転を果たしましたが、購入した土地の坪単価は売却価格の約10分の1でした。しかも、郊外であれば、騒音や臭いに対する近隣からのクレームの可能性が低い上、労働力の確保も比較的容易だと言えます。

このような例は、近年、枚挙に暇がありません。特集巻頭の都道府県別工場投資ランキングでも分かるとおり、茨城・兵庫・群馬・静岡・愛知の各県のように、大都市圏に近いエリアに、年間で50以上の工場投資が行われているのです。

将来的に見れば、物流施設へのニーズが一段落する頃には都心部の工場跡地の価格が下降することも考えられますが、当面は、こうした売却差益を生かした郊外への移転が加速するとみられています。

一部には、質の高い日本人技術者と、メイド・イン・ジャパンというブランドを求めて躍進する外資系企業が、都心部での工場建設を目論む動きもあります。

都市型工場をサポートするセール&リースバック方式

とは言え、都心の工場を売却して郊外に移転するには、土地の取得から工場建設まで、それなりの準備期間が必要になります。そこで、施設を移転せずに新たな資金調達を行う手段として、注目されているのが「セール&リースバック方式」です。従来、自社で所有していた土地を売却し、それをリースバックしてもらうのです。

セール&リースバックを活用するメリットとしては、

  • 継続利用したまま資金調達
  • セールによる調達資金で新規投資・負債削減(調達資金による設備増強)
  • 資産価値の顕在化を通じた企業価値の向上

などが挙げられます。

この方式は、もちろん、工場の新設の際にも有効で、土地は投資家に購入してもらい、長期間のリース契約を結び、その上に工場設備を建設するのです。この方式は、投資家側にとってもメリットがあります。例えばですが、将来的に物流施設に過剰感が出て、空室率が上がれば、賃料も下落することになり、売却するにも不安定要素が増すことになります。

しかし、土地だけ、あるいは工場設備も含めて、優良メーカーにリースできれば、コーポレートリスクだけで済みます。ですから、不動産マーケットが不安定になった場合は、工場リースバックは、圧倒的に安定した投資物件となり得るのです。そのため、これまで物流開発を積極的に行ってきた物流ファンドも、すでにこの新しいスキームを検討しており、今後はこの分野も広がりを見せる可能性が高いと言えます。

移転後の旧工場跡地処分の予定用途

ここまで、大都市圏の工場用地の動向を中心に述べてきましたが、全国レベルで見れば、工場跡地の活用方法が未定のままの土地が数多く残っているのが現状です〔図表2〕。当社はこれまで、数多くの工場用地の売却や取得のお手伝いをしてきましたが、今後、さらに工場のセール&リースバックという新しいスキームも含めて、より多くの企業の、より良い工場運営のサポートをしていく所存です。

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上記内容は BZ空間誌 2016年秋季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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