CBRE APACアドバイザリー&トランザクション・サービス シニア・ディレクター、シダース・ダワンによれば、アジア太平洋地域では複合開発のオフィス、ショッピングモールから物流施設に至るまで、オーナーやテナントが電気モビリティ時代に向けた準備を進めるにつれ、EV充電インフラは急速に一般的になりつつあるという。
事業用不動産は公共充電ポイントに、さまざまな選択肢を提供
公共充電インフラ整備において、事業用不動産業界はなくてはならない役割を果たしている。最適な充電ソリューションを決定するため、オーナーは来訪者の特性と行動を確認し、充電ポイントの設置が予定されている不動産の機能と技術的 仕様を評価することが望ましい。〔図8〕
物流施設・工場における急速充電器の大きな可能性
大型EVの普及は乗用車と比べて遅れをとっているが、最新の技術革新によりラストワンマイル配送や長距離配送の両方でEVを採用する可能性が高まっている。
多くの物流事業者が車両のEV化を進めており、車両基地としての役割も果たす物流施設での充電ポイントの需要が高まっている。〔図9〕CBREの「2023年アジア太平洋地域の物流施設テナント調査」によると、物流施設テナントの68%が、ポートフォリオに充電ポイントの増設を望んでいることがわかった。一部の物流事業者はCPOと提携しているが、グッドマンやブルックフィールドなど大手デベロッパーは、今後の開発物件に充電器を設置する意向だ。〔図10〕
物流施設のテナントは、車両のバッテリーサイズが比較的大きく、充電の待機時間が短いため直流急速充電に対する需要が強い。長距離移動の大型トラック用に、主要な交通インフラには路上急速充電ポイントを増設する必要がある。
充電ポイントへの需要はオフィスが分散している場所ほど強い
アジアではオフィス勤務の従業員のほとんどが公共交通機関を利用して通勤するため、オフィスの充電ポイントの需要は非常に限定的だ。CBREの調査によると、EV充電ポイントを最も必要とするビル設備に挙げたテナントはわずか24%であった。〔図11〕郊外のビジネスパークやサイエンスパークでは、従業員の多くが車で通勤するため、充電ポイントに対する需要は比較的強い。
インドなど一部の市場では、従業員の移動手段を重視している企業もある。こうした企業の多くは、車両のEV化に伴い、駐車場設備のアップグレードを計画している。
CBREは、規制要件の導入により、新築オフィスへの充電ポイントの設置が早まると予想している。オーストラリアでは現在、新しいオフィス開発において、駐車場の10%に充電ポイントを設置することが義務づけられている。シンガポールやインドの主要都市も同様の規制を導入しており、東京も2025年4月に規制を導入する予定だ。
法的要件に加え、いくつかのグリーンビル認証会社は、EV充電インフラを評価システムに組み込んでいる。
CBREは、従業員がオフィスに長時間滞在することを考慮し、従業員用にレベル2の充電器を多く設置する一方、社用車に急速充電器を確保するようオーナーに提案している。
ショッピングモールでのEV充電器の普及が進む
EVの充電器は主なショッピングモールではすでに一般的になりつつある。CBREの調査によれば、オーストラリアでは主なショッピングセンターの78%に充電ポイントが設置されている。充電には通常30分以上かかるため、EV保有者は待ち時間に退屈しないさまざまなエンターテインメントが提供される場所を求めると考えられる。中国の調査によると、小売店や娯楽施設の近くの公共充電器の需要が中国では最も高い。〔図12〕オーナーからすれば、充電ポイントを提供し、顧客の滞在時間を増やすと同時に、消費額を増やすこともできる。
中国や韓国では、EVメーカーが充電器のあるショッピングモールに優先的にショールームを設置し、存在感を強めている。
サービスエリアなどの交通インフラに充電器の増設が必要
CBREは、高速道路のサービスエリアが、単にEV充電器や水素燃料を追加するだけでなく、大きく変貌を遂げると予測している。
EV利用者は、充電に時間がかかるため、サービスエリアでの滞在時間が長くなり、より総合的な店舗やレジャーを期待するようになる。よりよい飲食スペースは、消費者をひきつけ、維持するために不可欠である。〔図13〕
サービスエリアには、路上での充電需要に対応するため、主に急速充電器が設置される。連休中の交通量の多さを考慮し、中国の一部のサービスエリアでは、待ち時間を最小限にするため、モバイル充電器を増設している。
通勤用駐車場、特に日本や太平洋地域の駐車場では、より多くの充電ポイントが必要になる。あるシドニーの通勤者用駐車場では最近、EV充電インフラを組み込むための改修がなされ、今後もさらに増える予定である。