050-5447-7862

平日 9:00〜17:30

物件を探す

事業用不動産のあらゆるニーズを網羅するサービスと豊富な実績で、お客様の課題を解決する最適なソリューションをご提案いたします。

お役立ち情報

CBREが手掛けた、さまざまな業種・規模の移転事例のご紹介を始め、オフィスや物流拠点の移転に役立つ資料・情報をご提供しています。

マーケット情報

独自収集したデータを元に、不動産マーケットの市況を分析予測し、市場変化をいち早く捉え、ポイントをまとめた市場レポートを配信しています。
また、物件レポート、業界トレンド情報など、事業用不動産の最新情報、トレンドを配信しています。

CBREについて

事業用不動産の分野において、世界有数の企業であるCBRE。日本国内におけるその強み、拠点、会社概要をご紹介します。

ヘルプ

物件検索の使い方や、会員サービス、よくあるご質問など、当サイトをより便利にご利用いただくための情報をご紹介します。

仲介業者様はこちら

賃貸オフィス・事務所の記事

石狩市企画経済部企業連携推進課

豊富な再生可能エネルギー発電施設を活用してゼロエミッションデータセンターを実現し、次世代の分散型DCネットワーク構築を目指す石狩市。

石狩市企画経済部企業連携推進課

石狩市企画経済部企業連携推進課

北海道の気候風土を活用したデータセンター誘致を目指す

2021年以降、経済産業省を中心に、行政主導によるデータセンター(以下:DC)などのデジタルインフラを整備しようという動きが高まり、昨年には「中間とりまとめ2.0」が公表された。その中では、大規模災害への備え、および脱炭素電源活用等の観点からのDCの地方分散整備が掲げられている。だが、その10年以上前から、まさに方向性に基づいてDC誘致を積極的に展開してきた地方自治体がある。それが北海道の石狩市だ。

北海道はその冷涼な気候を活かして、2008年に「北海道データセンター立地アセスメント委員会」を発足し、DCの誘致活動を展開することを決めた。DCで発生する熱を外気の循環により 冷却し、電力コストを大幅に削減できるからだ。いくつか選ばれた候補地の中で、石狩市は札幌市と隣接しているため、都市機能や住環境が享受しやすいほか、集中する学術機関からの人材登用など、雇用面のメリットがある。さらに日本海側に位置することから、太平洋側と比して地震リスクが低い点が考慮され、最高評価を受けている。2010年6月には、ホスティングサーバ事業で日本最大手のさくらインターネットが石狩湾新港地域という工業団地内にDC建設を発表。 2011年11月にはクラウドコンピューティングに最適化した、日本最大級の郊外型大規模DCである「石狩データセンター」が開設された。この時石狩市は、必要とされる巨大な通信網の構築に、DCと通信の双方の事業者の仲介役として、積極的に関与した経緯がある。

業界最大手の事業者の進出に加え、折しも同年3月に発生した東日本大震災によるリスクヘッジのため、DC誘致は順調に進むかに見えた。だが、現実は甘くない。「喉元過ぎればで、時間の経過とともに分散の必要性よりも、利用地に近い利便性が重視され、都心回帰が急速に進みました。誘致には新たな武器が必要だったのです」。そう語るのは、石狩市企画経済部企業連携推進課の加藤純氏だ。

石狩湾新港洋上風力発電所

再エネが取り持つ企業連携で、自治体の取り組むべき姿が明確に

こうした中、石狩市が目を付けたのが再生可能エネルギー(以下:再エネ)だった。石狩湾新港地域は、総面積約3,000haという広大な土地を有し、進出企業は約700社に上る。海からの風況に恵まれ、2000年代半ばから風力発電や太陽光発電が導入されており、豊富な賦存量があった。これを武器に、再エネ活用の意識が高いDC業界にアピールしようと考えたのだ。これにより2017年に立ち上げられたのが、同地域内で再エネ利用率100%を実現する「REゾーン」構想である。地域内の60haのエリア(現在は100haに拡大)を選定し、自前のインフラでダイレクトに配電する試みである。

この考えに賛同したのが、京セラコミュニケーションシステム(以下:KCCS)だった。同社は再エネを需給一体で直接利用する「100%再生エネルギー ゼロエミッション・データセンター」を標榜しており、両者の思惑が完全に一致したのである。これにより2019年、実現に向けた2者による連携協定が締結された。

直接配電には法規制などの課題も多かったが、北海道電力の協力により、電力会社だからこそ持ちうる知見を得た。また、KCCSが持つICTのノウハウと合わせて、より強固なプロジェクトへと成長することになる。この連携により、2018年度には経済産業省の補助事業として、地産エネルギー活用マスタープランを作成しながら、様々なノウハウを吸収していった。「様々なステークホルダーがいる中で、うまく調整しながらプロジェクトを動かすことが、我々の役割でした。実際、民間事業者だけではうまくまとまらないことでも、行政という中立的な立場で仲介することで、スムーズに進められたという自負があります」(加藤氏)。KCCSのDC建設は現在進行中で2024年秋に開業予定だ。また北海道電力と石狩市は2019年6月、再エネの利活用を軸とした新たな産業やビジネスの創出を目指して協働する「再生可能エネルギー発電事業等に関する地域連携協定」を締結している。

REゾーン(Renewable Energy Zone)

データセンターの地方分散実現に、大きな足跡となる仕組みを模索する

石狩市では、その後も再エネ発電所の開発が続く。2023年3月には石狩湾新港地域内に木質バイオマス発電所が稼働し、2024年1月1日には国内の先進的事例となる、8MWの風車14基を設置した洋上風力発電所が運転を開始。一般家庭なら約8万3000世帯分の年間消費量に相当する発電容量である。

こうして着々とDC誘致のアドバンテージを築く中、2023年、新たな施策を打ち出した。それが石狩市、合同会社石狩再エネデータセンター第1号、シスコシステムズ、ほくでん情報テクノロジー、ビットメディアの5者による「SapporoIX PoC環境を使った企業誘致」に関する協定の締結だ。

これは一言で言えば、DCというリソースの有効活用と、再エネの利用率向上をテーマにした施策である。一般的なDCの場合、内部のサーバに蓄積されたデータはサーバーのあるDCでしか活用できない。一方、同協定では、管理する複数のリソースを見える化し、仮想的に移行させる仕組みを構築する。例えば、石狩で再エネ発電量が非常に多い場合、東京や大阪にあるDCのタスクを石狩のDCに移すことで、電力需要量を供給量に合わせるデマンドレスポンスを実行する。現在はほくでん情報テクノロジーが持つ札幌市内のDCを活用し、実証を行っている段階だが、成功すれば石狩再エネデータセンター第1号が石狩市内に建設するDCに実装する予定だ。つまりはフレキシブルな利用環境を整えることで、より使い勝手のいいDCネットワークが構築できることになる。

そのために、データのリソースを見える化する技術や、再エネの利用率など電力需給の管理ができる技術、仮想環境を提供する技術など、専門的な技術を持った事業者がそれぞれの得意分野を活かして、協業していく体制が確立されたといえる。実現すれば地方分散を目指すDC事業者にとっては大きなメリットとなる。特に石狩再エネデータセンター第1号のようなテナント型DCにとっては、大きな付加価値であり、訴求力は格段に向上するだろう。その意味で、再エネという資源を豊富に持つ石狩市の企業誘致戦略に大きな競争優位性をもたらすことになる。

「DC誘致が地域課題を解決するファンクションとなるよう、地域のデータ需要を創出するスタートアップやベンチャーなどに進出していただきたいです。その結果として新たなスマートシティのような街ができればと、夢は膨らむばかりです」。そう語る加藤氏。

今日、カーボンニュートラルの実現は企業にとっては、実現しなければならない重要事項である。一方、自治体にとっては住民に対し、直接的なメリットを表現しづらいテーマでもある。再生可能エネルギーとDCによる地域課題解決を組み合わせ、最大限の波及効果をもたらそうとする石狩市の取り組みが、今後の日本の自治体運営に与える影響は大きいだろう。

5者による連携協定締結式

ご移転計画のあれこれ、お気軽にご相談ください

CBREでは事業用不動産のプロフェッショナルチームが、お客様の経営課題や不動産にかかわるさまざまな課題解決をサポートします。

上記内容は BZ空間誌 2024年春季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

記事を探す

物件をお探しのお客様専用窓口

CBREの記事をお読み頂き誠にありがとうございます。
ご移転のプランニングや優良未公開物件の仲介をご用命の際は右記のフォームからお問い合わせください。

物件相談フォーム