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経済産業省 渡辺 琢也氏

国際的なデータ・ハブを標榜して、官民一体のデジタルインフラ強化を目指した政府のグランドデザインと支援策のあり方。

経済産業省
商務情報政策局情報産業課
ソフトウェア・情報サービス戦略室 室長
渡辺 琢也

経済産業省 商務情報政策局情報産業課 ソフトウェア・情報サービス戦略室 室長 渡辺 琢也氏

生成AIの登場で加速度的に増大するデータトラフィック

我が国のインターネットにおけるデータのトラフィック量は、2015年を境に上昇が顕著になってきました。さらにその後、ここ数年の間にコロナ禍におけるテレワークの拡大や、それに伴うWeb会議の浸透、外出自粛によるネットゲームや動画コンテンツの配信などを背景に、爆発的な勢いで、増加の一途をたどっています。

また2022年11月には、革命的な技術革新ともいえるChatGPTに代表される生成AIが登場してきました。これにより、専門家の予想をはるかに超えるデータの通信や処理が加速度的に増加しています。生成AIの開発にとって重要なのは、「計算資源」と「データ」であり、我が国でも開発力が本格化すれば、必要となるデータの量は巨大なものとなり、データ通信が拡大することは避けられません。

さらに近い将来、メタバースや遠隔医療、遠隔教育、自動運転等の普及・拡大など、いわゆるIoTが発展するといったサービスの高度化が進むことで、膨大な計算能力が求められるようになることは確実です。その時、現在の通信用のネットワークや、データを処理するデータセンター(以下:DC)といったデジタルインフラではとても対応できないことは想像に難くありません。

ですが、米中の対立をはじめとする近年の国際情勢の変化を受け、各国での事業戦略の見直しが進められています。地政学的に見て、今日の中国にDCを置くことに関して、様々な課題や懸念があると言わざるを得ない状況です。その一方、DCは膨大な電力を必要とするため、例えばシンガポールでは、電力供給の懸念により2019年以降、新規のDC開発を停止するなど、データ処理拠点開発が停滞する動きが見られるようになっています。つまり言い換えれば、日本にDCを置くことは、国内のみならず東アジア地域全体のデータ処理の担い手として注目が高まっているのです。

アジア・太平洋地域の主なクラウドデータセンター立地状況(2021年予測)

データの急拡大に対して 脆弱な我が国のデジタルインフラ

では現在の我が国のDCの立地状況はというと、機密性が高いので必ずしもすべてが公になっているわけではありませんが、少なくともサーバー面積で約150万㎡(東京ドーム約30個分)が存在していると言われています。データの移動距離が長くなれば、その分、遅延が発生するため、おおむね40㎞圏内が限界とみられています。そのため、DCの8割強がデータの大消費地である東京圏(63%)、および大阪圏(24%)に集中しています。これはDC事業者の経済合理性に基づく結果であり、そのため、この傾向は今後も続く可能性が高いと言えます。

また、海外とのデータのやり取りには国際海底ケーブルの敷設が重要ですが、現在の陸揚げ拠点は、関東の南房総~北茨城周辺、および関西の志摩のエリアに集中していることも、DCが東京・大阪圏に集中する要因の一つとなっています。

しかしこの状況は、自然災害に対する強靭化というレジリエンスの観点からリスクが高いことは言うまでもありません。また、ドローンによる物流やライドシェアなどの交通インフラの整備は、地方でこそ重要なテーマです。このようなデジタルの恩恵を、将来的に日本全国津々浦々まで行き渡らせるためにも、また我が国が国際的なデータ・ハブとなることをめざすうえでも、DCの地方分散、および国際海底ケーブルの多ルート化は、避けては通れない課題と言えるでしょう。

これらを早期に実現するためには、5Gなどの技術、ネットワーク通信網、DCといったハードやソフト、さらにはルールの標準化や整備が重要です。そしてそのためには、経済合理性だけでなく、長期的な視点が必要でしょう。そこで経済産業省は、他の省庁とも連携して、政府としての計画を策定し、官民が協力して集中的に大規模な投資を行い、社会課題解決を推進していこうとしているのです。

国内のデータセンターの分布・立地状況とデジタルインフラ整備

有識者会合により動き出した、インフラのグランドデザイン整備

そしてそのために2021年に立ち上げたのが「デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合」です。これはここまでに述べたとおり、高まり続けるデジタルインフラの重要性を鑑み、有識者による今後の政策の方向性について情報共有、意見交換を行うもので、慶應義塾大学教授の村井純氏を座長に、大学や産業界から10名の関係者に集まっていただき、2021年10月にスタートしました。その後、これまでに6回の会合が開催され、議論を経て、2023年5月に「中間とりまとめ2.0」を公表しています。

ここでは、まずはDCなど、デジタルインフラを取り巻く状況や環境変化を踏まえること。具体的には繰り返しになりますが、1.DCおよび国際海底ケーブルの集中、2.AIおよび量子コンピュータの活用による爆発的なデータ処理量の増大、 3.我が国のアジアにおけるDC適地としての相対的な位置づけ、4.電力多消費施設であるDCにおける脱炭素化やGX推進の必要性、5.国内全域のデジタルインフラ整備の必要性、などが挙げられています。そしてもう一つ、今後のデジタルインフラ整備の考え方や方向性などを再整理することが目的となっています。つまり、これらを解決するために国全体としてのグランドデザインを描き、官民が共有し、それぞれの役割分担を踏まえて相互に連携していくことを基本的な考え方として、提言することが目的なのです。

この取りまとめの中では、デジタルインフラ整備の方向性として、二つの具体的な施策が示されました。一つは東京圏・大阪圏を補完・代替する第三・第四の中核拠点の整備で、具体的には北海道や九州エリアでの整備の促進です。仮に東京や大阪が大規模な自然災害に見舞われても、遠く離れている北海道や九州はレジリエンスの強化につながります。また、さらに大きなポイントとなるのが電力源です。DCは電力多消費施設であり、今後、さらに多くの電力が必要になると予想されています。一方、一般企業からはカーボンニュートラルの観点から、再生可能エネルギー(以下:再エネ)などの脱炭素電力で賄うことが、グローバルに求められる時代になっています。つまり、カーボンニュートラルや温室効果ガス削減のために取り組むGX(グリーン・トランスフォーメーション)の推進が重要なのです。

その点、北海道であれば冷涼な気候によって、冷却コストが低減できるだけでなく、太陽光や風力などの再エネ発電も盛んですし、九州でも豊富な日照量による太陽光発電や地熱による発電も期待できます。言い換えれば、電力インフラとデジタルインフラはセットで、脱炭素電力が供給されない限り、DCも建てられない。逆にDCの需要がなければ投資もできないので、それを両立させるためにも、国としてのグランドデザインが必要になると考えているのです。

また、北米や欧州、アジア太平洋地域をつなぐ我が国の地理的な優位性を活かした、国際的なデータ流通のハブとしての機能を強化するといった観点からも、北海道や韓国・中国に近い九州に、我が国のデジタル社会を支えるバックボーンとして、国際海底ケーブルの多ルート化などの機能強化を促進する中核拠点を整備することは理にかなっていると考えます。

そして方向性として示されたもう一つの提言が、地域における分散型のDCといった計算資源の整備です。中核拠点といった大規模な開発とは別に、データが発生する場所の近くにMEC (Multi-access Edge Computing)を配置し、ここで処理されるデータを統合して、情報処理を行うDCを地域レベルで設けることで、2030年頃に実用化が見込まれるオール光ネットワーク技術の活用も視野に入れつつ、データやエネルギーの「地産地消」の事業モデルを実現しようというものです。

幸いにも、今後のデータ需要を後押しするであろうAIは、通信距離による制約が緩和されるので、地方のデジタル需要に応えるために、それぞれの地域に情報処理の拠点を設けることが可能なのです。

民間事業者の活力をサポートする、様々な支援策を実施

こうした施策を実現するためには、民間事業者の方々に活躍していただく必要があるのは当然ですが、政府もグランドデザインを描いて政策的に誘導していくことが重要でしょう。そこで政府では、「中間とりまとめ2.0」の考え方に基づき、東京圏・大阪圏を補完・代替するDCの中核拠点を地方に設けるための、土地造成、電力・通信インフラ、建屋および設備の整備を支援するための「データセンター地方拠点整備事業費補助金」を設けました。対象地域は東京圏の全域を除いた地域で、上限を300億円として事業者を公募した結果、今回は北海道苫小牧市において補助事業を実施するソフトバンクに決定しました。事業費総額650億円であり、補助額は約半分の300億円となっています。2026年度に受電容量50MWのDCを竣工し、将来的には300MW超まで拡張を予定しています。高いデータ処理能力を有する大規模な計算基盤環境を構築して生成AIの開発等に活用するほか、大学や研究機関、企業などに幅広く提供する計画で、一企業が一ヶ所に所有するDCとしては、日本最大級の規模を誇るものです。北海道庁も苫小牧から石狩にかけてデータインフラを整備していこうとしていたので、自治体としても熱心に取り組んでいただけました。国・地方自治体・民間事業者が三位一体で集まった事業として、記念すべき第一歩を踏み出したと言えるでしょう。今後、さらなる開発計画が実行されることを期待しています。

支援については、DCの整備だけにとどまりません。将来、全国各地に分散したDCがその地域だけで活用されるのではなく、仮想的な一つのシステム(超分散コンピューティング環境)の構築も進めています。具体的には、時間制約、地理的条件、動的な処理負荷を踏まえて、最適にデータ処理を行う技術や、超分散コンピューティング環境で、プライバシーと機密性を保護するデータ流通技術の開発が含まれます。また、超分散コンピューティングを実現するためのポスト5G情報通信システム基盤の研究開発について、2023年1月に国立研究開発法人産業技術総合研究所とソフトバンクによる共同提案を採択し、研究開発が進行中。さらに昨年成立した経済安全保障推進法に、安定供給確保を図るべき重要物資として「クラウドプログラム」を指定するとともに、その取り組み方針を定めたほか、高度な電子計算機の利用環境整備に取り組む事業者の支援を決めました。対象経費の最大1/2を補助するとともに、利用環境の整備を通じた、人材育成やスタートアップ等の利用拡大を積極的に後押ししていくもので、令和4年度補正予算を活用し、さくらインターネット社等に支援が決定。加えて、さらなる拡充に向け、令和5年度補正予算案で1166億円を計上するに至っています。

これまで我が国は、他の先進国と比較してデジタルの利活用が遅れていると言われてきたのは事実です。その最たる例が、行政だと言えるでしょう。その反省からデジタル庁が創設され、国も自治体もデジタル技術を活用していこうと本腰を入れ始めた結果が今回の施策なのです。今後、官民一体によるデジタルインフラの普及による、先進的な生活が実現されることを期待していただければ幸いです。

経済産業省 データセンター地方拠点整備事業費補助金

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上記内容は BZ空間誌 2024年春季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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