産業基盤の整備が進み、東京にも隣接
企業誘致に向けて体制を整え受け皿となる用地の確保をめざす
東京湾を望み、日本最大のエネルギー・素材産業の集積地である京葉臨海コンビナートを擁するなど、かねてより産業都市として強固な基盤を築いてきた千葉県。千葉港をはじめ、成田国際空港や首都圏一帯の交通ネットワークにもとづく至便な環境は、現在もさまざまな整備プロジェクトが進められており、県内の各エリアに企業からの進出ニーズが集まっている。高まるニーズに対し、行政はどのような施策を推進しているのか、千葉県商工労働部企業立地課に話をうかがった。
鉄鋼・エネルギーから先進領域まで、 多様な産業を支える千葉県の地域特性
首都圏の東側に位置し、東京と隣接する千葉県。東京湾の湾奥部には、22年連続で全国第2位の貨物取扱量を誇る千葉港が位置し、県北東部には空の玄関口である成田国際空港も。臨海部には古くから鉄鋼や石油化学など、素材やエネルギー関連の産業が根づき、大消費地である東京に近い北部には、食品工場や物流倉庫も多い。千葉県の産業の構造を紐解くとき、その優位性はこの地の利にあるといえる。
つくばエクスプレスが通る柏の葉エリアは、東京大学と千葉大学のキャンパスや研究機関がある学術研究都市として、近年はライフサイエンス分野の企業が進出し、公・民・学の連携も目立つ。2025年(令和7年)には、世界トップシェアを誇る空気圧機器メーカーのSMCが、このエリアに新たな研究開発施設を開設する予定だ。また、東京湾に面する幕張新都心エリアには、2024年(令和6年)3月、メルセデス・ベンツ日本が本社を移転。千葉市のカーボンニュートラルへの取り組みも移転の決め手になったという。
これらの他にも、成田国際空港と東京外かく環状道路(外環道)を最短で結ぶ北千葉道路や、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)も全線開通に向けて整備が進められている。圏央道は東京湾アクアラインともつながり、その着岸地である木更津かずさエリアには、コストコホールセールジャパンが2022年(令和4年)に本社を移転。東京都心へ車で1時間以内、羽田空港へ約30分という「かずさアカデミアパーク」には、さまざまな分野の研究機関やマザー工場が集まっている。
柔軟かつ手厚い援助金制度を設け、 企業の千葉県進出をサポート
以上を背景に、行政である千葉県も企業の誘致活動に積極的だ。中でも産業用地への工場誘致に力を入れている。2024年(令和6年)8月には、熊谷俊人知事の直轄部門が地域と産業に関する調査報告を発表。特に成長が見込まれる分野を「デジタル」「エネルギー・環境」「バイオ」「マテリアル」の4領域に整理し、今後はそれらの分野を中心として、県内各エリアで企業誘致を進めていくという。〔図1〕
知事自らが千葉県のセールスマンとして登壇する企業誘致セミナーも開催し、県を代表する企業数社によるトークセッションで、千葉県に拠点を置く魅力やメリットを紹介。東京のほか、過去には大阪や名古屋、海外では台湾で開催するなど、千葉県に本社や工場を設ける優位性を広くPRしている。
一方、こうした取り組みを経て、実際に千葉県へ進出することになった企業には、融資や税、補助金などの優遇制度で支援を実施。中でも立地企業補助金制度は、本社や研究所、工場を建設する場合、建物の不動産取得税相当額および償却資産の固定資産税相当額について最大10億円を補助。投資額が極めて大きく、知事が認めたものに関しては、全国トップクラスとなる最大70億円を補助することとしている。
さらに2024年度(令和6年度)からは、製造業の立地促進に向け、新たに工場を建てる場合の補助対象を拡大。従来は工業団地内の立地に限られていたが、それ以外の土地に工場を開設するケースでも補助を受けられるように制度を改正した。
高まるニーズと期待に応えられるよう、 産業用地の確保を進めていく
企業から注目を集める一方、課題になっているのが産業用地の不足だ。そこで、千葉県は2019年(令和元年)より、市町村が産業用地を整備する際の補助金制度を創設。県と市町村、民間の開発事業者が連携して、産業用地を確保していく体制を整えた。まず、土地の地権者調整や企業のニーズ、事業採算性の確認など、その土地が産業用地に適するかどうか事前の可能性調査に対し、300万円を上限に補助。実際に産業用地を整備した際には、公共インフラ整備に関して、市町村に対して最大5億円を限度として補助するという。制度の運用には県庁のさまざまな課が関わるため、相談や連絡がスムーズに行えるよう、ワンストップ窓口も開設。その結果、農地からの転用など、県内各エリアで産業用地の整備が進んでいるという。「現在はまだニーズが上回っていますが、産業用地も徐々に整備が進んでいます。また、廃校を制服工場にしたり、給食センターを食品工場にした例もあります。幅広いニーズに応えられるよう、今後も企業と自治体のマッチングなどの支援を行っていきたいです」(渡邉氏)
今後、千葉県では、成田国際空港で3本目の滑走路の開設が計画されている。2029年(令和11年)に運用開始予定だが、年間発着容量は現在の30万回から50万回に拡大するという。貨物の取扱量は200万tから300万tへ、旅客数は4,000万人から7,000万人へ。空港の従業員も4.3万人から7万人になると見込まれている。この計画に伴い、千葉県では2023年(令和5年)3月、地域未来投資促進法を活用し、土地利用規制の弾力化を実現。開発事業者が空港機能との一体的利用が必要な物流施設などを整備する場合、農地を含む土地を例外的に事業用地として選定することが可能になった。また、道路網においては、圏央道の未開通区間であった大栄ジャンクションから松尾横芝インターチェンジ間が、2026年度(令和8年度)に開通予定。空港周辺と外環道を最短で結ぶ北千葉道路も整備が進められており、これらが開通することで、空港をはじめ、県内各エリアと首都圏各都市のアクセスがより便利になる。その結果、県内の広い範囲で拠点性が高まり、企業の誘致と進出に拍車がかかることだろう。
「今後も経済情勢やニーズの把握に努め、産業用地の確保や補助金制度などの拡充を進めていきます。また、働く場や暮らしの場としての千葉県の魅力もお伝えし、企業からの立地ニーズに応えていきたいと考えています」(高瀬氏)






