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オールバーズ 原宿店|店舗出店ケーススタディ

ケーススタディ

2020年10月6日

オールバーズ原宿店

海外通販などで日本でも知る人ぞ知るサンフランシスコ発のシューズブランド「Allbirds (オールバーズ)」が、今年1月、原宿に国内1号店をオープンした。自社ECサイト等を通じて消費者に直接販売するD2C(Direct to Consumer)企業が、若者の街、原宿に実店舗を構える狙いは何なのか。人員の限られたスタートアップ企業が、国をまたいだチームワークで日本初出店を果たしたプロジェクトの舞台裏を取材した。

唯一無二のブランド世界観を伝えるため
ファッションの発信地、原宿に国内1号店。
創業4年でグローバルに展開するD2C企業の出店戦略。

オールバーズ 原宿店

サステナブルなものづくりが話題 サンフランシスコ発祥のD2C企業

「Allbirds(オールバーズ)」というシューズブランドをご存知だろうか。2016年創業のスタートアップ企業が立ち上げたサンフランシスコ発祥のブランドで、「世界一快適」と米タイム誌に評された履き心地と、シンプルなデザイン、自然由来の素材を使ったサステナブルなものづくりが話題となり、シリコンバレーで人気に火がついた。地球環境に貢献する企業にしか投資しないことで知られる、俳優のレオナルド・ディカプリオ氏が投資家に名を連ねていることからも、ブランドのユニークさをうかがい知ることができる。日本では、今年1月10日に第1号店となる原宿店がオープン。Allbirdsがついに日本上陸を果たした。現在、世界10ヶ国以上でEコマースを展開、アメリカ、ニュージーランド、イギリス、ドイツ、中国、オランダなど7ヶ国20の実店舗を運営している。

ブランド立ち上げからわずか4年で世界市場を股にかける勢いは、主に自社ECサイトを通じて消費者に直接販売するD2C (Direct to Consumer)のビジネスモデルに起因している。Allbirds日本法人代表の竹鼻圭一氏は、D2C企業ならではの出店計画を次のように明かす。「我々のようなD2C企業は、Eコマースへのアクセス状況を見れば、どこから注文があるのか、どこに商機があるのかがわかります。昔のように人口の多い都市に出店していくのではなく、あくまで日々のデータをもとに出店準備を進めるのが我々のやり方です。これまでもその枠組みの中で出店地を決めてきました。D2Cならではの科学的なアプローチだと思います」。

満を持しての日本進出 起業家マインドが宿る原宿に1号店

オールバーズ 原宿店

市場規模の大きな日本へは、2年ほど前から進出の可能性が模索されていたようだ。竹鼻氏によると、創業者であるティム・ブラウン氏とジョーイ・ズウィリンジャー氏の両氏は、先進的なファッションを生み出してきた日本文化に興味があり、かねてより日本進出を希望していたという。「ロゴや装飾物のないシンプルなAllbirdsのデザインが、日本人に刺さるはずと彼らは考えていたようです。ただ、日本の消費者の目は厳しいですから、どのタイミングで、どの場所で始めるかは慎重に検討してきました。商品のデザイン改良を重ね、商品のクオリティに自信が持てたこのタイミングで、進出を決めたという経緯です」。

日本では、1月に1号店がオープンし、4月からはEコマースがスタートした。店舗が先行するのは、実は日本が初めてのケースだ。通常は、Eコマースが先行して店舗が後を追うか、同時スタート、あるいはEコマースだけで展開する国もヨーロッパには多いという。日本は、オンラインでシューズを購入する割合がまだまだ少ないという特殊な市場である。「まず実店舗で体験していただいて、お客様の声を聞きながらEコマースを立ち上げることにしました。実際、そのやり方でよかったと思っています」と竹鼻氏は話す。

1号店の場所に原宿を選んだのは、ブランドの世界観にマッチした街であることが大きな理由だという。「実は、『なぜ原宿なの?』と驚かれる方もいらっしゃいます。原宿を選んだ理由は二つあって、一つは、歴史的に見ていろんなアパレルブランドが巣立っていった、起業家精神にあふれた場所であること。もう一つは、『裏原宿』に代表されるように、若い人たちが全国から集まってファッションを通じて自己表現する場であったことで、現在でも様々なムーブメントの発信地であると考えたからです。設立4年のスタートアップ企業である我々にふさわしい場所は、原宿以外には考えられませんでした。それだけでなく、国内からのお客様とインバウンドのお客様の両方がバランスよく訪れる場所であること、カジュアルで若者の街というイメージも、判断の好材料になりました」。

表参道でもキャットストリートでもなく、原宿駅前にしたのは、「日本での知名度がまだまだ低いブランドなので、気軽に立ち寄れる駅前の利便性を重視した」からだ。また、隣接地に新たな複合施設「WITH HARAJYUKU」が6月上旬にオープンしたことで、今後、原宿駅前のイメージがさらにおしゃれなものに変わるだろうと竹鼻氏は期待する。「この施設には、イケアさんやユニクロさんが入居し、シンプルなデザインが人気という点で、我々と親和性があると感じています。我々のような小さな店が言うのはおこがましいですが、皆さんと一緒に、原宿駅前をいろんな方に来ていただけるショッピングストリートに変えていけるんじゃないかと思っています」。

D2Cにおける店舗の役割はブランドの世界観を体験してもらうこと

オールバーズ 原宿店

D2CのAllbirdsの売上は、世界ではEコマースが8割を占める。Eコマースの売上が実店舗をはるかに上回るブランドが、実店舗を出す狙いは何なのだろうか。それは、「ブランドの世界観を体験してもらうことに尽きます」と竹鼻氏。店舗にすべての商品がそろっている必要はなく、ブランドの世界観や素材の感触、履き心地が体験できる場所であることを重視しているという。言い換えれば、ブランドの世界観を正しく伝えられるのは、卸を介さないD2C企業の実店舗の強みである。

店に足を踏み入れると、右側に「WOOL (ウール)」、左側に「TREE(ツリー)」のディスプレイがある。これらはブランドを代表する二つの自然素材だ。ブランドの歴史をひもとくと、最初のスニーカーは、創業者の一人、ブラウン氏の母国であるニュージーランド産のメリノウールを使って作られた。これが「ウール」だ。そして「ツリー」は、ユーカリの木の繊維で作られた風通しのよい素材である。木から素材が作られる様子も表現されていて、商品のストーリーを理解することができる。商品を手に取って、感触を確かめることもできる。見て、触れて、わかりやすい。これらを店舗設計では重視している。

以上は世界共通だが、店舗ごとにローカルな味つけにもこだわっている。原宿店のレジカウンターは、取り壊しの決まった原宿の駅舎の木がモチーフになっている。「いかにも、という感じではなく、さり気なくローカルなものをグローバルなものに混ぜています。大事にしているのは、出店地へ敬意を払った店づくりです」と竹鼻氏は話す。

そして、ブランドの世界観を伝えるうえで重要な役割を果たすのが、店舗スタッフである。Allbirdsでは店舗スタッフを「ブランドアンバサダー」と呼び、人材に対して積極的に投資している。心がけているのは、「友達のような接客」だ。「お客様だからといって、へりくだるのは止めなさいとスタッフには言っています。あくまで人間同士、敬意を持って対等に接するのが大事だと考えています。友達感覚を面白がってくださるお客様もいて、『(上からでも下からでもない)横から目線が新鮮だった』というコメントをいただきました」。

多国籍チームが一丸となって開設準備 世界で“15店舗目”の実績が強み

オールバーズ 原宿店

原宿店開設の準備を振り返って、「いかにもグローバルなスタートアップ企業ならではの進め方だった」と竹鼻氏は話す。日本に店舗責任者が配属されたのが、オープン約1ヶ月前の12月初旬。それまでは竹鼻氏が中心となり、中国やアメリカのリテールチームとコミュニケーションを取りながら進めていった。「スタートアップの限られた人員で、一人が二役も三役もカバーしてやっていくという考え方です。原宿店に関しては、店舗デザインやIT関連はアメリカのスタッフ、造作や施工業者との交渉は中国のスタッフが担当しました。スケジュールがタイトなうえに、お正月を挟んだために中国からの資材が止められてしまい、本当に苦労しましたが、チーム一丸となって乗り切りました」と竹鼻氏。

国がバラバラな多国籍チームでもプロジェクトを遂行できたのは、「日本が初めてではない」からだ。「原宿店は世界で15店舗目です。すでに何店舗も経験のあるアメリカや中国のスタッフにしてみれば、段取りはしっかりわかっています。もっと短い期間で立ち上げたこともあるから大丈夫、Don’t worry!といつも言っていました」。

もちろん国による法律の違いや、税関手続きなど、初めての経験には苦労も多かった。その後、日本に店舗責任者が配属され、原宿店を開設にこぎつけたことで日本側にもノウハウができた。2号店以降は、資材の国内調達も視野に入れながら、より適切な方法で店舗開設準備を進めていけそうだと竹鼻氏は話す。

原宿店の開店が、日本におけるブランドのローンチとなるため、PR戦略には頭を悩ませたという。当初、トレンドに偏ったインスタグラムのインフルエンサーを起用したプロモーションも考えたが、「それはブランドとして違うのではないか」と思い直し、特別なことをするのは止めた。地に足のついたやり方がAllbirdsらしいと考えたからだ。「店頭でブランドの世界観をしっかり伝えることで、お客様を増やし、お客様がさらに多くの人にブランドの良さを伝えていただけるようにしたい。お客様と一緒に伸びていくスタンスでいたいと思っています」と竹鼻氏は話す。

オープン後は予想以上に好調 国内2号店、3号店も検討予定

そして、いよいよ開店の日を迎えた。

「日本では知る人ぞ知るブランドであり、一般的には認知度がなかったので、オープン前はお客様が来てくださるのか非常に不安でした」と竹鼻氏。ところが、ふたを開けてみれば、大盛況だった。「オープン日の売上は、これまではニューヨーク店が一番でしたが、それをわずかに超えました。また、週末の1日の売上と平日の売上でも、ニューヨーク店を抜いて更新しました。成績優秀なニューヨーク店に迫る勢いのパフォーマンスを見せていて、予想以上に好調が続いています」。

国内では今後、2店舗目、3店舗目の出店を検討していくという。

Allbirdsは、元サッカーニュージーランド代表のブラウン氏が、派手な色や目立つロゴ、化学素材を使った従来のシューズに疑問を持ち、「もっとシンプルで、色々な場面に合わせやすく、持続可能な素材で作られたシューズ」を求めて、自らの手で作ったことから誕生した。今はシューズブランドとして認知されているが、Allbirdsが目指すのは、シューズの領域にとどまらない「ライフスタイルブランド」である。シューズ以外では、メリノウールとユーカリの木で作られた「Trino(トリノ)」素材のソックスをすでに展開している。「我々は自然界にある素材をプラットフォームにして、様々な商品を展開していきたいと考えています」と竹鼻氏。唯一無二の世界観を持つAllbirdsが、これから日本でどのように支持され、広がっていくのか。原宿店やそれに続く店舗展開が鍵を握りそうだ。

オールバーズ 原宿
オールバーズ 原宿

プロジェクト概要

企業名 Allbirds合同会社
施設 Allbirds(オールバーズ) 原宿店
所在地 東京都渋谷区神宮前1-14-34 原宿神宮の森ビル1階
オープン 2020年1月10日
CBRE業務 施設賃貸借仲介業務

この記事に関するCBREのニュースリリースを下記よりご覧いただけます。

上記の記事の内容は BZ空間誌 2020年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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