綿密なマーケット調査に加えて、現場の視点や有識者の意見も交えて市場の新機軸を探っていく。
コロナ禍、ニューノーマルな時代を経て、人々の働き方や経済活動、法規制、金融環境、そして世界情勢までもが大きく変貌を遂げつつある。あらゆるビジネスやそのマーケットにおいて不確実性は増すばかりで、今年8月、史上最高値圏だった日経平均株価が大暴落を記したのも記憶に新しいところだ。もちろんビジネス不動産においても新たなトレンドが絶え間なく生まれており、市場関係者は変化への対応が求められている。そんな時代の大変革を踏まえ、本稿では、まず過去の東京オフィス賃料相場の推移を経済年表とともに紐解き、続いて全国不動産市況の現状と展望を分析。さらに、様々なアセットについて5人の有識者にご登場いただき、今後のビジネス不動産マーケットにおける新機軸、将来像について語っていただいた。
マーケットの未来予想、将来予測といっても、その要素は、新築ビルの竣工予定やテナントニーズのボリュームや変化、景況判断と多様なファクターが挙げられる。ただ、ビルを開発・運営・運用する不動産デベロッパーや投資家から最も注目され、かつ移転や新設を考える企業にとって切実なのは、なんといっても賃料相場の動向であるに違いない。「このあたりは、坪どれぐらいが相場なのか?」「今後、賃料水準は上がっていくのか?」といった問いは、オフィスや店舗といったアセットタイプを問わず、日々、不動産仲介の現場で耳にするセリフだろう。そしてそれは、マーケットにおける需給バランスと密接に関係しているのはもちろんだ。
そんな賃料相場と需給バランスとの関係を、端的に示していると編集部が考えるのが上記のグラフ。弊誌AREA PAGE掲載の「賃貸不動産市場その動向と相場」、市況により最も大きく変動する東京主要3区大規模ビル賃料相場の推移と、東京23区の空室率推移である。賃料相場は、エリアの指定も大規模ビルの規定もなく、言うなれば時代時代の当社ビル仲介営業の感覚に基づくもの。さらには、毎号ごと記述する担当者は異なっている。推移のグラフ化はやや強引ではあるが、それでも掲載の度に、リアルなマーケットの変遷を如実に表していると評価いただいている。逆に東京23区空室率推移は、CBREリサーチが四半期毎に発表する、オールグレードのビルを対象とした極めて精度の高い需給バランスを示すデータ。2024年Q3以降は、当社が予測するForecastである。
賃料相場レンジは、その数値設定の背景として前回同様とするベクトルが極めて強く働く。また、その根拠となっているのは、ビル営業担当自身が「その賃料水準を相場だと語り、果たして契約まで至れるのか」だ。注目すべきは市況が軟化しそこから回復する時の動向で、グラフでは、アメリカ9.11同時多発テロにより外資系企業ニーズが急激に失速した2001年から国内ネット企業・ファンド企業の需要が高まる2004年、リーマンショックの2008年から東日本大震災後に新築ハイグレードビルが好感されるようになった2012年、そして世界的パンデミックに襲われた2020年から現在に至る流れであろう。
最新の東京主要3区大規模ビルの賃料相場は27,000~40,000円/坪。レンジの幅は、過去と比較して狭く、二極化の様相は示していない。そして今後は旺盛な新規供給下ながら、空室率は一定水準を保つと当社では予想している。このような状況下、賃料相場は一体どうなるのか? 次章では、CBREリサーチの精緻なデータを基に、全国のオフィスマーケットを展望する。
有識者へのインタビューは順次WEBに公開いたします