明電舎やソニー等の大手製造業が拠点を置き、工場を中心に街が形成された大崎は、都内有数の工業地帯として発展してきたが、1970年代半ばから工場の転出が始まり、跡地における一体的な再開発計画が始動した。1982年、東京都の都市多核化構想により7大副都心のひとつに指定され、また駅東口において先行した大規模再開発事業が完了すると、大企業がオフィスを構えるビジネス拠点としても認識されるようになった。そして2002年には、大崎駅を中心とした約60haの地域が都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域に指定され、「研究開発型産業の集積を活かして発展する街」を将来イメージに据えて、現在さまざまな再開発プロジェクトが進行中である。今号は、ビジネス街としては後発ながらも、その開発スケールの規模に注目が集まる街・大崎を特集する。
西新宿、超高層ビル開発計画の経緯
右のグラフは、「大崎・北品川」ゾーンにおいて、㈱生駒データサービスシステムの調査対象となっているオフィスビルのうち、延床面積が判明している77棟について、竣工年を5年毎に区切り、その合計が全体に占める割合をそれぞれ示したものである。2006年以降については期間が2年間となるが、2007年内に竣工予定のビルも含まれている。
グラフを一見すると、ボリュームの大きな部分が間欠的に現れていることが分かるが、20%以上の割合を示す時期は、それぞれが大規模再開発の完成時に相当している。左のビル規模別マップでも明らかなように、同ゾーンではオフィスビルの絶対数が少なく、大型再開発ビルと、延床面積2,000坪以下の中小規模ビルで構成されているマーケットであるため、再開発のインパクトを際立たせる結果となったものと考えられる。また、開発に連続性が見られない要因としては、大崎の再開発事業は、デベロッパー主導型よりも、複数地権者からなる市街地再開発組合が実施するケースが多いため、着手から完成までに時間がかかることが挙げられるだろう。
最初の大量供給ボリュームを示す1986~90年には、駅周辺再開発の先陣を切った大崎ニューシティが開業、3棟の業務棟の延床面積合計は約28,000坪となる。また、御殿山トラストタワー(約21,000坪)、ONビル(約10,000坪)も同時期に竣工。この5年間はバブル経済期に該当しており、中小規模ビルの建設も盛んに行われ、大崎に現在あるオフィスビルの棟数の40%強が竣工している。
次に来るピークは、1996~2000年。竣工ビルはわずか7棟を数えるのみだが、総延床面積約88,000坪のツインタワー、ゲートシティ大崎が竣工した。東口第1地区再開発の大崎ニューシティ、第2地区のゲートシティ大崎が完成し、駅東口側は副都心構想にふさわしい都市景観を整えることとなった。
そして、3番目のボリュームゾーンである2006~07年には、アートヴィレッジ大崎セントラルタワーとThinkPark Towerの2棟で全体の約23%をも占める供給が行われる。ThinkPark Towerは、大崎駅西側で最初に竣工する超高層ビルとなり、近隣に控える大規模再開発プロジェクトを先導する存在となるため、その重要性は極めて高いと言えるだろう。
資料提供:㈱生駒データサービスシステム
参考:「しながわのまちづくり」品川区まちづくり事業部(2005.3発行)
大崎駅東口で完了した主な市街地再開発
大崎ニューシティ(大崎駅東口第1地区第一種市街地再開発事業) | ||
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所在地 | 品川区大崎一丁目6 | |
地区面積 | 約3.0ha | |
総延床面積 | 138,149㎡(41,790坪) | |
主要用途 | 事務所(1・3・4号館) ホテル(2号館) 店 舗(5号館) 駐車場 |
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竣工 | 1987年 |
ゲートシティ大崎(大崎駅東口第2地区第一種市街地再開発事業) | ||
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所在地 | 品川区大崎一丁目11 | |
地区面積 | 約5.9ha | |
総延床面積 | 319,818㎡(96,745坪) | |
主要用途 | 事務所・店舗(2棟) 住 宅 駐車場 |
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竣工 | 1999年 |
アートヴィレッジ大崎(大崎駅東口第3地区第一種市街地再開発事業) | ||
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所在地 | 品川区大崎一丁目1~3 | |
地区面積 | 約2.5ha | |
総延床面積 | 148,149㎡(44,815坪) | |
主要用途 | 事務所(1棟) 住宅(賃貸棟、分譲棟) |
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竣工 | 2007年 (事務所棟は2006年12月) |